発酵が紡ぐ橿原の未来。FARMENTRY・移住者交流会訪問レポート(2026年2月開催)
奈良県橿原市への移住者同士や地域との繋がりを育む交流イベント「移住者交流会」。
2026年は、単なる親睦会に留まらず、橿原に拠点を構えた方から直接その情熱やビジネスの裏側を学ぶことで、移住者がこの地で自分らしく暮らすヒントを得ることを目的としています。
今回は、2024年に醸造を開始し、早くも全国規模の大会で1位に輝くなど注目を集めるブルワリー『FARMENTRY(ファーメンタリー)』を訪問しました。代表の西崎さんと奥田さんによる、地域への想いと発酵文化への挑戦を紹介します。

2026年2月23日、橿原移住者交流会参加の一行は、橿原市の今井町の西の五井町へ。鉄骨造りの倉庫を自らの手で改装した醸造所にて、西崎さんと奥田さんの熱いお話が始まりました。
FARMENTRYタップルームにて:多様なビールの物語(奥田さん)

奥田さん:
「今日、皆さんにお出ししているのは8種類です。まず、うちの看板商品であるNo.01『スペシャルハウスラガー』。これはJAPAN BREWERS CUP 2025という全国のブルワーが集まる大会の淡色ラガー部門で、名だたる醸造所を抑えて1位をいただいたビールです。非常にクリーンで、飲み飽きない『スタンダード』を目指しました。
二番(No.02)は『DAWN(ドーン)』。静岡のビール輸入会社さんとコラボして作ったもので、酵母とホップの華やかな香りが特徴の非常に飲みやすいタイプです。
お酒があまり強くない方には、No.03『MIX JUICE SAISON(ミックスジュースセゾン)』がおすすめです。大阪のマルホ酒店さんと造ったんですが、原料の半分近くにフルーツを使っています。度数も3.5%と低く、本当にミックスジュースのようにゴクゴクいけます。
四番(No.04)が『アンバーエール』。アメリカンホップを使っているので、モルトのロースト感と柑橘系の香りのバランスがいいビールです。
五番(No.05)は『アメリカンIPA』。IPAは昔、イギリスからインドへビールを運ぶ際、腐敗を防ぐためにホップを大量に入れたのが始まりで、強い苦味と香りが特徴です。六番(No.06)は今世界中で一番人気のある濁ったタイプの『ヘイジーIPA』。苦味は抑えめで、ホップのフルーティーな香りを際立たせています。
ちょっと面白いものをという方には、No.07『GETTO(月桃)』を。イギリススタイルをベースに、沖縄の月桃、シナモン、ココナッツ、バニラを贅沢に使っています。スパイスの効いたデザートを飲んでいるような不思議な感覚になりますよ。
八番(No.08)は、普通のラガービールに少しフルーティーなホップを足して、スッキリ飲めるようにしたタイプです。」
参加者の声:
「1位のラガー、本当に雑味がなくて美味しい……!」
「クラフトビールが橿原市で飲めることがめちゃくちゃ幸せ~!」
醸造所内にて:1,000リットルのタンクと自前主義(西崎さん)
続いて、西崎さんに醸造の心臓部を案内していただきました。

西崎さん:
「ここは元々、鉄骨造りの倉庫だった場所です。僕は奈良の五條出身ですが、和歌山のメーカーで7年修業を積み、12年前からずっと自分のブルワリーを作る計画を温めてきました。
ここにあるタンクを見てください。よくある『マイクロブルワリー』だと1バッチ(1回の仕込み)150〜300リットルくらいが一般的ですが、うちは1,000リットル(1トン)のタンクがメインです。これだけの規模があるからこそ、品質を安定させ、地域全体に行き渡る量を供給できるんです。

驚かれるかもしれませんが、この醸造設備は、僕が全部自分で図面を引いて設計しました。海外のメーカーと直接やり取りしてオーダーメイドし、搬入や配管の設置、さらには床のコンクリート工事まで、自分たちで手配して手を動かしました。そうすることで大幅にコストを抑えつつ、プロとして理想の動線を実現したんです。」
副業としての「コンブチャ」の可能性
醸造所の奥にある、温度と湿度を一定に保つ「ワイルドルーム(野生酵母室)」の前で、西崎さんは新たな可能性について語りました。
西崎さん:
「あちらの木樽がある『ワイルドルーム』では、野生酵母や地域の菌を採取して、1年かけてビールを熟成させています。日本の四季に任せて作る、ワインのように複雑な味を目指しています。」
また、2026年1月には飛鳥・藤原DAOのイベントに、コンブチャのゲストを迎え、その美味しさや魅力を知っている私たちにとってさらに魅力的な話がありました。
『発酵』そのものをこの街の文化にしたいという思いを持たれており、例えば、橿原でコンブチャ(発酵茶)を副業でやりたいという人にとっても、ここは大きなチャンスがある場所とのこと。西崎さんたちの事例があるからこそ取り組みやすくなっているそうです。
コンブチャも菌の管理が重要ですが、西崎さんたちの設備や知見をもとに、個人の方がスモールスタートできる環境を作っていけことが可能とのことでした。
『いきなり店を持つのは怖いけれど、副業として自分のブランドの発酵飲料を作ってみたい』という人がいれば、ぜひ相談し、橿原にコンブチャを!
「一緒に橿原を『発酵の聖地』にしていければ面白いですよね。」

地域で消費されることへの誇り、そして「つどう、巡る」へ
最後に、地域への強い想いと4月の挑戦について。
西崎さん:
「ブルワリー名の『FARMENTRY(ファーメンタリー)』は、『FARM(農)』への『ENTRY(入り口)』を意味します。宇陀でホップを育てて9年目になりますが、地元明日香村の『イチカラミナマデ』さんのような農家さんと協力して、農業の面白さをビールを通じて伝えたいんです。
僕は、うちのビールが地域の中で循環することを一番大切にしています。看板のラガーだけはあえて県外に出さず、地元の皆さんが通う居酒屋で飲めるようにしています。地元の人に愛されて初めて、ブランドとしての価値があると思うからです。
2026年4月18日・19日には『橿原市総合プール』を貸し切って、『つどう、巡る』というイベントを開催します。50メートルプールの中にサウナを20基置き、全国から65もの飲食店やマルシェが集まります。県外からも人を呼び込み、『橿原ってこんなに面白い場所なんだ』ということを証明したい。ぜひ、皆さんも遊びに来てください!」
参加者の声:
「1,000リットルのタンクを自ら組んだというバイタリティに圧倒されました。」
「コンブチャの副業の話、すごくワクワクしました。この街なら新しいことができそうです!」
看板のラガービールが、地元でしか飲めない、地元で消費してもらうことを大切にされている姿勢がアツイ!」
今回の訪問で、FARMENTRYが単なる醸造所ではなく、移住者や挑戦者の受け皿になろうとする「街のインキュベーター(孵化器)」のような存在であることを実感しました。
橿原での暮らしを豊かにする「発酵」の物語を、ぜひタップルームで直接味わってみてください。
【FARMENTRY インフォメーション】
住所: 奈良県橿原市五井町197-5
タップルーム営業: 土日祝 11:00~18:00
公式サイト:www.farmentry.net
移住者交流会 詳細:Go! Go! かしはら
