【開催レポート】奈良で「なりわい」を創る。職人、アパレル、建築家が語る、これからの地域ビジネス
「なら・橿原」での新しい暮らし。
期待を胸に移住してきた方々が集まり、住まいや食、地域への想いを語り合う「移住者交流会」が開催されました。その中で、「暮らし」「なりわい(地域での仕事)」をテーマにした2つの座談会が2026年2月23日に行われました。
多彩な顔ぶれが集まった自己紹介
座談会は、まず運営4名、そして、個性豊かな参加者の自己紹介からスタートしました。
鳥居さん(旅行代理店代表): 橿原市で観光ガイドの育成や、海外向けにLGBTQツアーなどを企画されています。
吉田さん(コーチ・講師): 神奈川から移住。
太村さん(アパレル業): 明日香村出身。「地元にファッションを楽しめる場所を」と、セレクトショップの開業を目指されています。
藤本さん(設計事務所代表): 桜井市出身。今井町の空き家を改修して移住されました。
馬場さん(会社員): 奥様の実家が今井町にあり、200年続く歴史に惹かれて移住を決めたそうです。
北林さん(二拠点生活): 京都出身。
遊佐(ゆさ)氏:今井町の古民家の利活用のためのNPO活動をしている。
木村(きむら)氏:東京に20年住んだ後、2年前から橿原市へ移住。現在は橿原市の地域振興課からの呼びかけを受け、先輩移住者として移住希望者の相談に乗るなどの活動をしている。今年はデスクワーク仕事の合間に藤原宮跡の近く(醍醐町周辺)で、無農薬栽培による「八釣山特別栽培米」のお米作りにも挑戦。
北林(きたばやし)氏:橿原市の出身で、小学校から高校までこの地域で育った地元出身者である。大学から大阪・京都で過ごし、10年ほど京都で仕事をしていたが、親の高齢化などをきっかけに現在は京都と奈良の2拠点で活動している。地場産業や地域の風土、知恵を国内外の人に伝える研修やツアーを企画しており、京都や大阪から人を連れて橿原を案内することもある。
加藤(かとう)氏:3年前に大阪から橿原市へ移住し、妻と娘2人の4人で暮らしている。今井町内にインテリアショップを構え、自身で制作したセラミック作品の販売やインテリアの提案を行っている。「DAO(自律分散型組織)」という考え方を元に、メンバーそれぞれのやりたいことを通じて地域交流やイベントを盛り上げたいと考えている。
ここでは、今井町の古民家2階、歴史を感じる梁の下で、熱い議論が交わされた「なりわい(地域での仕事)」について当日の内容をお届けします。
ただの「商売」ではなく、この土地の文脈をどう読み解き、新しい価値を積み上げていくのか。プロフェッショナルたちが語り合った対話をどうぞ。
1. 伝統を「今」の価値に。今井町での挑戦
まず話題になったのは、今井町の歴史と新しい事業の融合です。
今井町のサバ寿司復活プロジェクト(鳥居さん)
「実は今井町には昔、サバ寿司の文化があったんです。それを復活させたくてラグビーW杯の時に動いたんですが、パテント料の問題とかで一度立ち消えに……でも、世界遺産登録を見据えた今、再挑戦したい。この町の『食』の文脈をもう一度掘り起こしたいんです」
ファッションで街を彩る(太村さん)
「今井町というこの美しい町に、あえてアパレルを。奈良市まで行かなくても、ここで『おしゃれ』を楽しめる。そんな場所を作りたい。自分が育った場所だからこそ、今の感性で恩返しがしたいんです」
2. 「自らの手で」作る、暮らす、直す
建築やデザインに関わるメンバーからは、これからの「住まい」と「仕事」のあり方について深い意見が出されました。
セルフビルドの可能性(藤本さんほか)
「これからは、全部プロに任せるんじゃなくて『自分の手で直す(セルフビルド)』ことが当たり前になる。そのための材料や知識をシェアする場所が、今井町にも必要ですよね。廃材を再利用して新しい家具を作るような循環ができたら面白い」
「僕も3ヶ月自分でやってみて、もう電ノコとかサンダーとか怖くないです(笑)。不便さや古さを、自分の手で愛着に変えていく。それがこの町に住む醍醐味かもしれません」
3. 「なりわい」は「生き様」そのもの
座談会の後半、議論は「なぜこの場所で働くのか」という本質的な問いへ。
「なりわいっていうのは、単なるビジネスじゃなくて『生き様』だと思うんです。この飛鳥・藤原という特別な場所で、どう生きていくか。その姿勢そのものが、訪れる人を惹きつけるコンテンツになる」
「橿原は大阪や京都に近い。だからこそ『ベッドタウン』になりがちだけど、そうじゃなくて、ここで昼間から面白いことが起きている、職人が汗を流している、そんな『体温のある町』に戻していきたい。僕ら移住者が、その第一歩になれたら嬉しいですよね」
4. 最後に:今井町を「世界に誇る」場所に
座談会の締めくくりには、具体的な連携案も飛び出しました。
「駅前の観光案内や市民交流の拠点を、もっと地域の人やクリエイターが自由に使える場所にしたい。そこで皆さんとマルシェをやったり、ワークショップをやったり……ここから新しい『かしはらブランド』を発信していきましょう!」
【編集後記】
2階会場は、まさに「これから何かが始まる」という熱気に包まれていました。
伝統を守ることは、ただ形を残すことではない。今の時代に合わせた「なりわい」を自分たちの手で作り続けることなのだと、参加者の皆さんの言葉から強く感じました。
今回の座談会で出た「サバ寿司復活」や「セルフビルド体験」、実現に向けて動き出すのが楽しみです!
