世界が認める安全品質へ!JALグランドサービスが挑む国際基準「ISAGO」認証取得の全貌を解説してみた!
航空機が安全に飛び立つために欠かせない、地上での業務。それがグランドハンドリングです。機体の誘導や手荷物の積み込みなど、一見地味ながらも高度な技術と安全性が求められるこの業務において、今、大きな変化が起きています。

日本航空グループのJALグランドサービス(JGS)が、世界トップクラスの安全品質を証明する国際基準「ISAGO」の認証を取得したのです。成田、羽田、そして札幌へと広がったこの挑戦は、日本の空の安全をどう変えるのか。この記事では、16のスライド構成でその意義を詳しく解説します!
グランドハンドリングとは?
「グランドハンドリング」という言葉に馴染みのない方も多いかもしれません。これは、空港で航空機が到着してから出発するまでの間に行われる、地上支援業務の総称です。

具体的には、機体を停止位置まで誘導するマーシャリング、乗客の手荷物や貨物を機体へ積み込む・降ろす作業、航空機を滑走路へ押し出すプッシュバックなど、多岐にわたります。 航空機は地上にいる間、自力で動ける範囲が限られており、これらの作業の一つでも欠ければ運航は成り立ちません。JGSはこの重要な役割を担い、安全・安心な空の旅を足元から支えているプロ集団なのです。
ISAGO(アイサゴ)とは何か?
ISAGOの正式名称は「IATA Safety Audit for Ground Operations」です。 これは、世界の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)が2008年に設立した、グラハン会社向けの国際的な安全・品質基準です。

簡単に言えば、「この会社が行う地上業務は、世界基準で安全です」とお墨付きを与える仕組みです。業界標準である「GOSARP」に基づき、事故や人身災害の低減、作業手順の標準化を目的としています。 これまでバラバラだった世界各国の地上作業に、共通の「物差し」を持ち込んだ画期的なプログラムと言えます。
なぜ今、ISAGOが必要なのか?
近年、航空業界のグローバル化が進み、海外の航空会社が日本の空港へ乗り入れる機会が増えています。そこで重要になるのが、現地のグラハン会社の品質です。欧米を中心に、ISAGOの認証取得を業務委託の条件とする航空会社が増えており、認証の有無がビジネスの大きな判断材料となっています。

また、これまでは各航空会社が独自にグラハン会社を監査していましたが、世界共通のISAGOがあれば、その結果を共有することで監査の効率を上げることができます。

JGSの挑戦の始まり
JGSがISAGO認証取得に向けた動きを本格化させたのは2017年です。 それまでは、数十年間仕事の進め方が変わらなかったとも言われるグラハン業界において、客観的な外部監査を受けることは大きな挑戦でした。2018年8月に正式に申請を行い、そこから社内の規定やマニュアルを国際基準に合わせて徹底的に見直す作業が始まりました。

単に認証を取るだけでなく、本質的な安全管理体制の強化を目指し、本社と現場が一体となって準備を進めたのです。 この地道な努力が、のちの羽田・成田での日本初の取得へとつながっていきました。
羽田・成田での「日本初」の快挙
2020年11月、JGSは羽田空港と成田空港においてISAGO認証を取得しました。 これは、国内最大級の国際拠点空港である両空港において、グラハン会社としては日本で初めての快挙です。 監査の対象は、組織管理(ORM)を必須とし、JGSはさらに搭降載(HDL)と航空機誘導(AGM)の部門でも認証を得ました。

これにより、JGSが提供する地上サービスが世界標準に準拠していることが証明され、日本を代表するグラハン会社としての地位を確固たるものにしました。
厳しい審査の舞台裏
ISAGOの監査は非常に厳格です。IATAから派遣された担当者が来日し、すべて英語で実施されます。 JGSでは本社、成田、羽田から選抜された28名のチームがこれに対応しました。 監査内容は、単なる書類のチェックに留まりません。「どのような訓練を受けたか」という現場スタッフへのインタビューや、特定の規定を即座に提示できるかといった「抜き打ちテスト」のような形式で行われます。 言葉の壁を越え、日常的に行っている高度な安全作業を、国際的な論理に基づいて説明し、納得させることが求められる非常にタフなプロセスでした。
世界が驚いた「指差呼称」の文化
監査の中で、海外の担当者が特に驚き、賞賛したことがあります。それは、日本の鉄道や航空業界ではおなじみの「指差呼称」です。 作業対象を指で指し、声に出して確認するこの動作は、海外では珍しい文化ですが、監査員からは「素晴らしい安全の仕組みだ」と高い評価を受けました。 日本が独自に培ってきた丁寧で確実な確認文化が、国際的な基準においても「最高レベルの安全行動」として認められたのです。これは現場のスタッフにとって大きな自信となり、自分たちの培ってきた品質が世界に通用することを証明する出来事となりました。
北海道初!札幌支店(新千歳空港)での取得
羽田・成田に続き、2025年11月には札幌支店(新千歳空港)でもISAGO認証を取得しました。 これは北海道に事業所を置くグラハン会社としては初めての快挙です。 新千歳空港は、世界的に見ても降雪量が多い空港の一つであり、冬場の作業環境は極めて過酷です。

そのような特殊な環境下であっても、国際基準を満たす安全管理能力と高品質な作業を提供できていることが公式に認められました。 雪国の空港における安全運航の維持・向上という、極めて難易度の高いミッションをJGSが完遂していることが、世界に示された瞬間でした。

ISAGO取得のメリット①:安全・品質の向上
ISAGO認証を取得する最大のメリットは、社内の安全品質が底上げされることです。 監査の対象は、マニュアルの記載内容、作業方法、スタッフの教育シラバス、そしてその管理方法まで広範囲に及びます。 これらすべてを国際基準「GOSARP」に準拠させることで、作業時の安全確保はもちろん、事故やトラブル(インシデント)を未然に防ぐ力が飛躍的に高まります。

「個人のスキル」に頼るのではなく、「仕組みとしての安全性」を磨き上げることで、どの空港でも、どのスタッフでも、常に世界最高の品質を維持できる体制が整うのです。
ISAGO取得のメリット②:業務効率の劇的改善
これまで、海外の航空会社から業務を受託する際は、各社から毎年「定例監査」を受ける必要がありました。 これには膨大な時間と労力がかかっていましたが、ISAGO認証を取得すると、監査報告書が加盟航空会社間で共有されるため、同類の監査のすべて、または一部が免除されます。

これにより、監査対応に割いていた時間を、現場の品質向上やスタッフの教育、あるいは新規サービスの検討といった、より創造的で価値のある業務に充てることが可能になります。 効率化によって生まれた余裕が、さらなる安全を生むという好循環が生まれています。
ISAGO取得のメリット③:ビジネスチャンスの拡大
ISAGOのロゴを表示できることは、世界中の航空会社に対して「私たちは信頼できるパートナーです」と視覚的に訴える強力なセールスポイントになります。 特に海外の航空会社が日本の空港への新規就航を検討する際、ISAGO認証を持つグラハン会社の存在は、その空港を選ぶ大きな決め手の一つとなります。

2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人を目指す日本政府の目標達成に向け、JGSはインバウンド誘致を促進する役割を担っています。 高品質な地上サービスを提供することで、海外の航空会社を安心して日本へ呼び込める環境を作り出しているのです。

書類のデジタル化と、海外との連携
ISAGOの監査を通じて、JGSは海外のグラハン会社との違いも再認識しました。 海外では書類のデジタル化が非常に進んでおり、監査員からも「紙ベースでの管理を減らすべきだ」という示唆を受けました。 これを受け、JGSはIT化による業務改善をさらに加速させています。 また、IATAが主催する国際会議(IGHC)などにも積極的に参加し、世界各国のISAGO登録会社と意見交換を行っています。
今後に向けたさらなる展開
JGSの挑戦は、成田、羽田、札幌で終わりではありません。 次のステップとして、大阪支店(伊丹・関西空港)および福岡支店においてもISAGO認証の取得を目指しています。 日本の主要な玄関口となる空港すべてで国際基準を達成することで、日本中どこに到着しても、世界最高レベルの地上サービスを受けられる体制を築こうとしています。

この取り組みは、地方空港の国際化を支援し、日本各地へのインバウンド需要の分散・拡大にも寄与するものです。JGSは文字通り、日本の空のインフラを安全と品質でつなぐ架け橋になろうとしています。
安全は「プロフェッショナル集団」の誇り
ISAGOが求めているのは、単なる「事故が起きないこと」だけではありません。 作業を標準化し、一つ一つの動作を正確にすることで、手荷物や貨物の搭降載をよりスムーズにし、飛行機の「定時運航」を確実なものにすること。 そして、何よりお客さまに「この飛行機なら、このスタッフたちなら任せて大丈夫だ」という安心感を持っていただくことです。

まとめ
JALグランドサービスによるISAGO認証取得は、日本のグランドハンドリングが世界の舞台で高く評価された重要なマイルストーンです。 安全管理能力の向上、業務の効率化、そして国際的な競争力の強化。 認証取得によって得られたこれらの成果は、最終的に「お客さまの安全・安心な空の旅」という形で還元されます。 変化の激しい航空業界において、変わることのない「安全」への情熱。世界基準のプロフェッショナル集団へと成長を続けるJGSの挑戦は、これからも日本の空をより高く、より確かなものへと導いていくことでしょう。
