第2回:【原因編】なぜ「終活」は進まないのか? 子どものいない人がエンディングノートを書けない理由
前回の記事では、文京区社会福祉協議会様との協働事業での調査を通じて見えてきた「制度の隙間にいる孤立予備軍」の実態についてお伝えしました。
今回は、調査結果から明らかになった「9割の人が直面している壁」と、その背景にある複雑な心理について深掘りします。
1. どんな人たちが回答したのか
まず、今回の調査にご協力いただいた方々の属性を共有します。このデータは、単なる数値ではなく、まさに今、将来への備えに揺れている方々のリアルな声です。
年齢・居住地: 50代〜60代を中心に、文京区をはじめとする都市部の居住者が中心です。まさに老後が現実味を帯びる世代です。
世帯状況: 「子どもはいないがパートナーはいる」方が約6割、「独居」の方が約3割。働き盛りの現役世代から、単身生活者まで幅広い層が参加しています。
就業状況: 多くの方が就業しており、忙しい日々の中で「将来の備え」を考える時間を捻出することの難しさを抱えています。
2. 認知度9割、実行率1割という「巨大なギャップ」
この調査の核心は、終活に対する「意識」と「行動」の乖離です。エンディングノートの認知度は9割を超えますが、実際に完成させているのはわずか約10%。残りの約9割は「未着手または途中」です。 「大切だと分かっている、けれどできない」。この高いハードルは、単なる怠慢ではなく、もっと根深いところにありました。
3. 「子どものいない人」と括られることへの戸惑いと警戒心
会場での対話会で印象的だったのは、「参加を直前まで迷った」という声です。「子どものいない人」という共通点で集まることに、どこか抵抗感やスティグマ(負の刻印)を感じる。マイノリティとしてカテゴリー化されることへの戸惑いは、当事者が長年抱えてきた「社会の標準モデル(家族モデル)」との距離感の表れかもしれません。
「子どものいない」後半生を考えるということは、自分の属性を直視することでもあります。その心理的ハードルが、無意識に筆を止めさせている側面があるのではないでしょうか。
また、特にシングルの方からは、こうしたイベントに対する強い警戒心も語られました。「宗教勧誘や詐欺に巻き込まれるのではないか」という不安です。
しかし、今回は「文京区社会福祉協議会との協業」という公的な看板があったことで、その警戒心の壁を越え、安心して参加できたという声が複数ありました。この「公的な安心感」が、一歩踏み出すための不可欠な要素だったのです。
4. エンディングノートの先に「頼める相手」がいないという不安
自由回答からは、エンディングノートを書こうとするほど突きつけられる、深刻な「3つの不安」が浮き彫りになりました。
身元保証の壁: 入院や施設入居時の「身元保証人」がいない不安 。
死後事務の壁: 葬儀や片付けを「誰に頼めばいいのか」という悩み 。
判断能力の壁: 認知症になった際、自分に代わって意思決定をする存在がいない恐怖 。
「包括支援センターに行っても家族がいる前提で話をされるのが辛い」という声もあります 。一人でノートに向き合うことは、こうした「頼り先のなさ」を再確認する作業になり、孤独感を強めてしまうのです。
「どこに相談すればいいのか分からない」「家族がいる前提で話されるのが辛い」という声は、既存の相談窓口が私たちの現実に追い付いていないことを示しています。
結びに:一人で向き合わないための「場」
エンディングノートを書くことは、単なる死の準備ではありません。
「いざという時に頼れる関係」を地域の中にどう作っていくか。行政への期待として挙げられた「同じ境遇の人と緩やかに繋がれる場」や「家族に頼らない老後に特化した専門相談」。こうしたビジョンが見えて初めて、私たちは安心してペンを執ることができるのではないでしょうか。
次回予告:行政への提言、そして私たちが作る「新しいつながり」
調査から得られた「生の声」を、どう具体的な施策へと繋げていくべきか。文京区への提言内容を詳しくお伝えします。
いいなと思ったら応援しよう!
読んでくださってありがとうございます!
もし「いいな」と思っていただけたら、下のボタンからチップを贈っていただけるとこれからの発信や活動の励みになります。