見出し画像

異世界ミートリア 【第5話】⑥それぞれの声




【前回のあらすじ】

肉神モツによって創られた国、異世界ミートリア。魔王ムダニクスによって王国中の肉が封印され、人々の笑顔は失われてしまった。肉と笑顔を取り戻すため立ち上がったのは、救国パーティー《タカーズ》。
肉神モツは告げた。これまで十七回、世界を終わらせてきた。そして今が、十八回目の世界だと。肉のある世界を選ぶのか、静かな世界を選ぶのか——その選択を、タカーズと王国の人々に委ねた。
たかっち社長の言葉に応えるように、フクロウが仲間たちを呼んだ。

肉神モツに突きつけられた二つの道を前に、
ミートリア王国の人々は、誰もすぐには声を出せませんでした。

これまでのお話はこちらから
noteマガジンにまとめてます!


第5話

⑥それぞれの声



商店通りに、静かな風が吹いています。


肉を封印するのか。
それとも、解放するのか。


肉神モツに突きつけられた二つの道を前に、
ミートリア王国の人々は、誰もすぐには声を出せませんでした。


たかっち社長は、
集まった顔を一人ひとり見渡し、静かに言いました。


「封印を望む人も、解放を望む人も、
どうか声を聞かせてください」

商店通りは、しんと静まり返りました。


最初に口を開いたのは、
店先で震えていた王国の人でした。


「……私は、怖いです」

その声は、小さく震えていました。


「肉が戻ったら、
また誰かが奪い、また怒鳴り声が聞こえるかもしれない。」


うめこさんが、
その人の背中にそっと手を添えました。

「そう思うのも、無理はありません」

女性の声を聞いた別の人が、うつむいたまま言いました。

「静かな世界なら、もう争わなくてすむのかもしれないな」


その言葉に、何人かが小さくうなずきました。

商店通りに、
封印を願う声が、ぽつり、ぽつりと落ちていきます。



けれど、そのとき。

小さな子どもが、もちちゃんに言いました。

「でも……お肉がないと、
みんな、笑わなくなっちゃった」

その声に、
商店通りの空気が少しだけ揺れました。


「前は、ごはんの時間になると、もっと楽しそうだったよ。
おいしいねって、言ってた」


もちちゃんは、子どもの頭をそっとなでました。

「そうだね。
お肉がなくなってから、少し静かになったね」


別の人も、顔を上げうなずきます。




ヒロパンダは、腕を組んだまま、黙って聞いていました。

いつもなら、
肉の話となればすぐに語り出すところです。

けれど今は、
誰かの声をさえぎることはしませんでした。

みーちゃんPは、
双眼鏡を胸に抱いたまま、人々を見つめています。

「封印を願う声にも、解放を願う声にも、
ちゃんと理由があるんだよね……」

まきマネは、小さくうなずきました。




もんやーみは、封印を願う人たちと、解放を願う人たちを交互に見ました。


「二択だから、分け合えないよね……
でも、どちらが正しいとか、決められないよ」

ダチョウが、
こくこくとうなずくように首を動かします。

ときどきさんも、静かにうなずきました。

「わたしも、すぐには決められません。
怖いから、封印してほしい気持ちもわかります。
でも、もう一度笑いたいから、解放してほしい気持ちもわかります」


ときどきさんは、胸に手をあてました。

「だから、どちらかを間違いにして、
急いで答えを出してはいけないんだと思います」


その言葉に、商店通りの人々は黙り込みました。


間違っていない。

だからこそ、簡単には選べませんでした。




そのとき、しんりん商店の店先で、
猫店主のしんりんさんが静かに口を開きました。


「店の棚には、いろんな想いが並んでる」

しんりんさんは、店の奥にある棚をちらりと見ました。


「今日選びたいものと、明日選びたいものが、違うこともある。
今はこわくても、明日は笑いたくなるかもしれない。
今は笑いたくても、明日は少し休みたくなるかもしれない」


ヒトちゃんが、ぽつりといいました。

「……想いは変わる」

右近さんは、
ヒトちゃんを見て、やさしくうなずきます。

「変わっても、いいんです。変わるからこそ、言葉にし直すことができる」

肉神モツは、
何も言わずにその場を見つめていました。
その光は、責めるようでも、急かすようでもありません。


たかっち社長は、
人々の声を聞きながら、ゆっくり息を吸いました。


「封印を望む人は、
もう傷つきたくないと願っている」

そして、別の人々のほうを見ます。

「解放を望む人は、
もう一度、笑い合いたいと願っている」


たかっち社長は、
パンツの妖精をそっと見つめました。

「変わるかもしれないけど、やはり、どちらも大切な想いですね」

パンツの妖精は、小さく光りました。

まきマネは、ノートを胸に抱きました。

「やっぱり、どちらかを選ぶって、無理なのかな……」


そのつぶやきに、
たかっち社長は静かに首を横に振りました。

「いいえ。選びます」




商店通りに集まった人々が、たかっち社長を見つめます。

たかっち社長は、肉神モツへ向き直りました。


「肉神モツ様。
私たちは、肉を解放する道を選びます」


その言葉に、商店通りがしんと静まり返りました。


封印を願っていた人たちの顔が、少しだけこわばります。

けれど、たかっち社長は、
その人たちから目をそらしませんでした。


たかっち社長は、静かに続けます。

「でも、それは、封印を望んだ想いを消すのではありません。
静けさに救われた時間も、なかったことにはしません」



しんりんさんが、そっと目を細めました。

たかっち社長の言葉を聞いたまきマネは、
ノートを胸に抱いたまま、こくりとうなずきました。


まだ少し震えた手でノートを開きます。

『想いをなかったことにはしない。
それでも世界を終わらせないために選ぶ』

そう書き留めたとき、
たかっち社長は、通りに集まった人々を見渡しました。


「肉を取り戻します。
でも、同じことをくり返さないように、みんなで考え続けます」


そして、もう一度、
肉神モツをまっすぐ見つめました。

「それが、私たちの答えです」

肉神モツは、何も言いませんでした。

黄金色の光の奥で、
何かが小さく揺れたように見えました。


ヒトちゃんの耳が、ぴくりと動きます。

「……まだ、想いがある」


右近さんは、静かに懐へ手を入れました。
その指先が、一本の筆に触れます。


「ええ。
まだ、言えてない言葉がありますね」


タカーズとミートリア王国の人々は、
肉を解放する道を選びました。


けれどその答えの奥で、
肉神モツの声にならない想いが、静かに揺れていました。


✨第5話⑦へつづく✨



📋️まきマネの覚書 

5話⑥:2243字 
現在の物語:53,755字

創作大賞 エンタメ原作部門
📝〆切は7月8日⏰️


#創作大賞2026
#エンタメ原作部門


#異世界ミートリア
#ミートリア王国
#タカーズ事務所

#異世界ファンタジー
#連載小説
#創作

いいなと思ったら応援しよう!

まき@こどもと日々成長中 チップは最上級の応援のカタチ🫶✨️ いただいた応援のキモチ、飛び跳ねるほど嬉しいです😆✨️その喜びは原動力になりnoteを続ける理由の1つです☺️仲間を笑顔にしたい✨️チップで応援よろしくね😊👍