第32記|春のことは、まだ疑っている
またしてもやられた。
暦の上ではマーチ。
3月も後半に差し掛かっている。
私は、そろそろ春を信じたい。
なんなら仲良くしたいし、
1番好きな季節は? と聞かれたら、
満面の笑みで答えたい。
だけどやっぱり、ムズかしい。
「寒すぎる。」
そんじょそこらの寒いとは、
訳が違う。
太陽がにっこにこで顔を出し、
完全に油断していたところを、
ありえない寒波が襲う。
この無慈悲な寒暖差に、
何回、してやられたか。
小学生になる頃には、
春がいかに不安定で、
気分屋なのかを理解していたので、
どれだけ天気予報と母親に、
今日は暖かいと言われようとも、
マフラーをそっとランドセルに忍ばせていた。
いま思えば春のおかげで、
疑い深い性格になったのかもしれない。
この性格は後の人生で功を奏し、
今では感謝している。
私は決して油断しない。
お花見のときは、
どんなに笑われてもダウンを着ていく。
会の前半は、
大袈裟だの、ビビりだの言われる。
でも、そこはじっと耐える。
すると、後半。
身震いをし出す友人を横目に、
私の時間が始まる。
皆が温かいコーヒーを買ったりするなか、
氷がパンパンに入ったグラスを、
キュッといっちゃったりなんかして。
もう独壇場だ。
そして、用意してあった、
ホッカイロを配る。
そのときの私は、
見る人によっては後光が差しているだろう。
私は、決して油断しない。
28年目の春も、
やっぱり信用できなかった。
それでも、今の私があるのは、
紛れもなく「春」のおかげだ。
ありがとう、春よ。
信用はしていないけれど。
2026.3.12、18:33
ある男。
