見出し画像

「私はまたひとりになる」という孤独感の根っこ

何かがうまくいかなくなるたびに、私の中にはいつも同じ感覚が浮かんでくる。
「私はまたひとりになる」という感覚だ。

誰かとの関係が揺らいだとき。
思うように心が通わなかったとき。
大事にされていないように感じたとき。
私は目の前のその出来事そのもの以上に、もっと深いところで傷ついてしまうことがある。

ただ悲しいだけではない。
ただ寂しいだけではない。
そのたびに、胸の奥にしまってあった古い感覚が目を覚ます。
やっぱり私はひとりなんだ。
結局、誰も最後まではそばにいてくれないんだ。
そんなふうに、今の出来事を超えたところで心が崩れそうになる。

昔は、それがなぜなのかよくわからなかった。
私はただ、傷つきやすいのだと思っていた。
人より寂しがりなのだと思っていた。
でも少しずつ、自分の心を見つめるようになって気づいた。
今の痛みは、今だけのものではないのかもしれないと。

「またひとりになる」という感覚は、もしかしたら今ここで初めて生まれたものではない。
もっとずっと前から、自分の中に住みついていたものなのかもしれない。

幼い頃、本当はわかったほしかった。
安心させてほしかった。
そのままの気持ちを受けとめてほしかった。
でも、うまく受けとめてもらえなかった記憶。
わかってもらえないまま、ひとりで飲み込んできた気持ち。
自分の悲しさや苦しさを、そのまま出してはいけないような空気。

そういうものが積み重なると、人は表面では大人になっても、心を深いところにひとつの前提を持つようになるのかもしれない。
それは、「どうせ私はひとりで抱えるしかない」という前提だ。

誰かがそばにいても、心のどこかでは信じきれない。
優しくされても、いつかいなくなる気がする。
うまくいってるときでさえ、どこかで終わりを恐れている。
だから少しでも温度差を感じると、ただのすれ違い以上のものとして受け取ってしまう。
それは目の前の相手だけの問題ではなく、もっと古い痛みが反応しているからなのだと思う。

「私はまたひとりになる」
その感覚は、今の相手が与えたものだけではなく、昔から心の中にあった孤独の記憶と結びついている。
だから苦しい。
だから必要以上に怖くなる。
だから、ただひとつのやりとりでさえ、自分の存在そのものが見捨てられたように感じてしまうことがある。

でも、そうやって自分の反応を見つめていくと、少しだけ救われる気もする。
私は弱いからこんなに揺れるのではない。
面倒な人間だから苦しいのでもない。
ただ、それだけ深いところに、ずっとひとりでいた感覚が残っているのだ。
そう思えたとき、自分を少し責めずにいられる。

本当は私は、ずっと誰かにいてほしかったのだと思う。
ちゃんと心を向けてほしかった。
つらいときに、ひとりで抱えなくていいと思わせてほしかった。
「大丈夫だよ」と言われたかっただけではない。
その場しのぎの慰めよりも、心がちゃんと通うことを求めていた。

そしてきっと今も、私が本当に求めているものはそこなのだと思う。
ただ寂しさを埋めるための関係ではない。
表面的に優しくしてくれるだけの繋がりでもない。
「私はまたひとりになる」という古い感覚を少しずつ溶かしていけるような、あたたかくて、安心できる関係。
しんどいときにちゃんと心が通い、ひとりで抱えなくていいと思えるような関係。

私はたぶん、そういうものを求めて生きてきたのだと思う。
でもそれが手に入らないたびに、ただ目の前の人を失っただけではなく、昔から抱えていた孤独まで一緒に痛み出していた。

だからこれからは、「またひとりになる」と感じたとき、その気持ちをただ現実だと思い込まないでいたい。
いま感じている孤独は、目の前の出来事だけだはなく、もっと昔の傷が響いているのかもしれない。
そう思えるだけでも、心の扱い方は少し変わる気がする。

私は本当に、ずっとひとりだったのだろうか。
それとも、ひとりだった記憶があまりにも深くて、そう感じやすくなっているだけなのだろうか。
そんなふうに問い直してみたい。

「私はまたひとりになる」という感覚の根っこには、きっとずっと置き去りにしてきた悲しみがある。
そしてその悲しみは、本当は誰かを責めるためではなく、自分が何を求めていたのかを知るためにあるのかもしれない。

私は、もうこれ以上その悲しみを見ないふりしたくない。
「大丈夫」と言い聞かせるだけで通り過ぎたくない。
私の中にある孤独の根っこをちゃんと見つめて、その上で、それでも人を求めたい。
それでも、心が通う関係を信じたい。

何度「またひとりになる」と感じたとしても、
その感覚だけを自分の真実にしないために。
私は自分の中の古い孤独を知りながら、少しずつ新しい愛のカタチを選び直していきたい。


Aru.

いいなと思ったら応援しよう!