傷つくことより、心が凍ることのほうが怖かった
傷つくことなんて、怖くなかった。
当たって砕けることも、拒絶されることも、失うことも、
たぶん私はどこかで覚悟していたのだと思う。
でも、実際に苦しかったのはそこではなかった。
動かない壁の前で、凍りついた鉄壁の要塞の前で、
ただひとり、ボロボロになって血を流していくこと。
その孤独が、こんなにも心を冷たくしてくなんて、
私は知らなかった。
最初は、ただ痛かっただけだった。
悲しかったし、寂しかったし、
どうしてこんなことになるのだろうと思った。
でも痛みが続くと、人はただ傷つくだけでは終わらないのだと思う。
少しずつ、少しずつ、自分の内側のやわらかいところが凍っていく。
もう感じないほうが楽だと、どこかで思いはじめる。
これ以上傷つかないために、
何も感じなくなれたらどんなにいいだろうと思ってしまう。
でも私はそこで、はっとした。
私が本当に怖いのは、
失うことでも、拒絶されることでもなかった。
私が本当に怖いのは、
自分の心が凍ることだった。
愛せなくなること。
人を嫌いになること。
憎しみを持ち続けること。
それによって、
自分の心そのものが冷たく固まってしまうこと。
それがいちばん怖かった。
凍ってしまえば、きっと楽にはなれる。
痛みは鈍くなるかもしれない。
期待もしなくなるかもしれない。
でもその代わりに、私は私の大切なものを失ってしまう気がする。
誰かを想うこと。
関心を持つこと。
それでも愛したいと願うこと。
そういう、自分の中のあたたかいものまで、
全部閉じてしまう気がする。
だから私は、人を嫌いになりたくない。
憎しみを持ち続けたくない。
それがどれだけ自分の心を冷やすか、
私はもう知っているから。
傷ついたことはたしかだった。
孤独だったのもほんとうだった。
でもその中で私は、痛みそのものよりも、
痛みによって自分の心が変わってしまうことを恐れていたのだと思う。
傷つくことより、心が凍ることのほうが怖かった。
たぶん今の私は、その凍っていく過程を、
ただ苦しい苦しいと言いながら通っているのではなく、
ちゃんと見つめているのだと思う。
凍ってしまえば楽になれるのかもしれない。
でも、戻れなくなる。
それが怖い。
だから私は、自分の心が冷えていくのを感じながらも、
完全には凍らせたくないと願っている。
それは弱さではなく、私がまだ、
自分の中の愛を失いたくないと思っているからなのだと思う。
Aru.
