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【東京美術旅③】世界を旅した日 ─ 高木由利子「Threads of Beauty 1995‐2025 ─ 時をまとい、風をまとう。」 ─ Bunkamura ザ・ミュージアム

ワタリウム美術館で「ジャッド|マーファ 展」を観たあと外に出ると、すでに街は夜に包まれていた。

渋谷に向かう。
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されている高木由利子さんの写真展 「Threads of Beauty 1995‐2025 ― 時をまとい、風をまとう。」をどうしても観たいのだ。

街のきらめきに誘惑されそうになる

夜の街を歩いていく。
iPhoneに聞くと30分ぐらいで着くらしい。
街の空気を感じながら歩きたい。

高架下の落書き

途中、高架下のストリートアートに目を引かれた。

こういう絵は誰が描いているのだろう。
なんだか好きだ。
まわりの空気に溶け込んでいる。
この絵がもし美術館に展示してあったら、また見え方も変わるのだろう。
でも今は、彼らの絵の居場所はここなのだ。
彼らにとっての「マーファ」はきっとここなのだろう。
そんなことを考えながら足早に歩を進める。

渋谷の喧騒を抜けて、Bunkamuraに到着した。

建物に直接施された写真展のタイトルがかっこいい
ミュージアム入口

ファッションとは何か―。
その壮大な問いの本質を追い求め、世界各地の伝統的な衣服をまとい生きる人々の日常を、写真家・高木由利子さんが30年間にわたり撮り歩いた〈Threads of Beauty〉シリーズの写真展だ。

会場デザインは、建築家の田根剛さん

展示室に足を踏み入れた瞬間、別世界が広がった。
どこかの地域の民族衣装をまとった人々の写真が目に入る。
作品を照らす照明だけの展示室は、少し高ぶっていた私の気持ちを自然に落ち着かせてくれた。

仕切りがなく大きなひとつの場所となっている展示室。
写真と写真の間を自由に抜けていける。
まるで写真という森の中に入り込んだようだ。

「大きな道が文明を均質化していく」という高木さんの話を聞いた田根さんが、会場内にあえてわかりやすい道をつくらなかったという。

展示には特に順番がない。
気の向くまま写真を観てまわる。
その自由さが心地いい。
みんな思い思いに歩き、写真を楽しんでいる。

その土地で受け継がれてきた民族衣装をまとう人たち。
その姿はあまりにも自然だった。
布や衣、装身具のひとつひとつは同じものがなく、それぞれが独自の輝きを放っている。

手の込んだ装飾具。すごくチャーミングだ
顔を覆うマスクだっておしゃれ
まるでファッション雑誌の1ページのよう
景色と人が溶け合っている
印象に残る一枚
柄もの、かっこいい
帽子もおしゃれだな
日本の着物の写真もあった

どの写真からもその土地の空気や人々の息遣いまで伝わってくるようだ。
でもなぜだろう。とてもクールに感じる。

写真を縫い付けてある布の色を見てふと思った。
これは大地を象徴した色だろうか。
蘇芳(すおう)という、赤と茶のあいだにある深い色が思い浮かんだ。

KONBUと名付けられた布に竹和紙にプリントされた作品がひとつひとつ縫い付けられている

会場のどこかから音が聞こえると思っていたら、映像作品もあった。

映像作品《同時多発的装飾》 2026年

高木さんが、2000年代始め頃に撮影した渋谷のスクランブル交差点の映像と、「Threads of Beauty」シリーズの写真が同時に映し出される。

切り取られた一瞬が次々と流れていく。

渋谷とどこか遠い土地の人たちが同じ地平に並んでいる。
世界は広いのか狭いのか。

高木さんが世界各地で集めてきた装飾品も展示されていた。

こちらは旅のノート

展示室の壁に貼られた田根さんの言葉。
「由利子さんはかつて「大きな道ができると、少数民族はいなくなる」と言った。」

私はふと、以前、仕事でマレーシアを巡ったときにオラン・アスリという先住民族の集落を訪れたことを思い出した。
そこでは住居こそ原始的だったが、子どもたちは日本のアニメのTシャツを着ていた。
私はそこにその土地に根ざした衣服を想像していたので、少し戸惑いを覚えた。
大きな道ができると流れが変わり、外から新しい文化が入り込む。
やがて、そこにあった装いは姿を消していく。
長い時間をかけて培われた伝統や文化が、便利さや快適さにあっという間に飲み込まれてしまうのだ。

高木さんが出会ってきた人たちの暮らしがこの先も変わらず続いてほしい。
そんなことを願うのは、あまりにも身勝手なのだろうか。

高木さんの写真は、ただかっこよかった。
そこには、世界各地のその土地に根付いた衣服をまとう人たちが写っていると同時に、高木さん自身の生き方が写し出されているように感じた。

私はファッションが好きだし、今日はどんな格好をしようかと考えることも楽しい。
「衣服をまとう」ということは、生きることそのものだ、とあらためて思った。

美術館を出て駅に向かった。
渋谷の喧騒に紛れて歩く。

今日は3つの美術館を巡った。
本当は、1日にいくつもの展示を観るのはあまり得意じゃない。
ひとつひとつをゆっくり味わいたいから、どこかで少しずつ感覚が薄れてしまう気がしていた。
でも今日は違った。
それぞれがばらばらにならず、静かにつながっているように感じた。
90年代のロンドン、テキサスのマーファ、そして世界のさまざまな土地。
東京に来ていたのに世界を歩いてきたような気がした。

渋谷駅の工事中の囲いに絵が描かれているのに気づいた。

色鮮やかでかわいい絵
TOKYO CITY CANVAS プロジェクトの一環
知的障がいを持つアーティストの作品

掲げられていた「多様性の輝き」という言葉に、少しざわついた。

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