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【公共講義録】経済編#14 国債と財政

みなさん、こんにちは。
前回は直間比率の調整や消費税増税といった『租税の種類と税制改革』を学びましたね。『税金をどうやって集めるか』というテーマでした。
今日扱う小単元は『建設国債と赤字国債 財政危機と財政再建』です。
次回は視点を歴史に戻して『経済の民主化と戦後復興』に入りますので、今日はまさに『今、私たちが生きている現代日本の財布事情』の核心部分をマスターしていきましょう!」
「授業に入る前に、みんなにひとつ問いを投げかけます。
【問い1】 『もし君の家族が、毎年の収入の倍以上の借金をし続けていたら、どう思いますか?』
『えっ、やばい…破産しちゃうじゃん』って思いますよね。 実は今、日本という国がまさにその状態にあります。

  • なぜ日本はお金を借り続けられるのか?

  • そもそも政府って、なんでそんなにお金を使う(財政活動をする)必要があるのか?

  • そして、この借金(国債)は未来を生きるみんなにどう関係してくるのか?

『自分には関係ないや』と思っていると、みんなが社会人になった時に税金や社会保険料でとんでもない負担を背負うことになります。今日はその仕組みを、裏話も交えて解き明かしていきますよ!」

1. 財政活動って何?なぜ政府がやるの?
「まずは基本からいきましょう。政府が行う経済活動のことを財政と呼びます。
そもそも市場経済(民間企業と消費者)にぜんぶ任せておけばいいじゃないか、と思うかもしれません。しかし、民間だけだとどうしても困る現象が起きます。だから政府が財政を通じて3つの役割を果たしているんです。

  1. 資源配分の適正化 公園、警察、道路、消防などを公共財と言います。これらは『お金を払わない人を排除しにくい』し『みんなが同時に使える』性質があります。民間に任せたら『儲からないから作らない!』となって社会が回りません。だから政府が税金で作るんです。

  2. 所得の再分配 自由競争をさせると、どうしてもお金持ちと貧しい人の差が開きます。そこで累進課税で金持ちから多く税を取り、社会保障(年金や生活保護など)を通じて貧しい人へお金を回します。

  3. 経済の安定化 景気の波をコントロールする働きです。ここ、共通テストでひっかけが出やすい重要ポイントですよ!

【重要!景気安定化の2つの仕組み】

  • ビルト・イン・スタビライザー(自動安定化装置): 景気が悪くなると、個人の所得が減って税収が自然に減り、同時に失業給付などの支出が自然に増えることで、特別なお手続きをしなくても景気の悪化を自動的にやわらげる制度上の仕組みのことです。

  • フィスク・ポリシー(裁量的財政政策): 政府が景気動向を見て、意識的に公共事業を増やしたり減税を行ったりして景気を刺激(または抑制)する政策のことです。

『自動的に発動する仕組み』か『政府が意図して行う政策』か、この区別をしっかり整理しておきましょう!」

2. 借金(国債)の基本ルールと「2種類の借金」
さて、政府が役割を果たすにはお金が必要です。収入(税収)で足りない時、政府は借金をします。この政府の発行する借金証書のことを国債(日本国債)と言います。
ここで大切な法律のルールがあります。財政法第4条では、歴史的に政府が無制限に借金をしてお金を乱発し、猛烈なインフレーション(物価高騰)を引き起こした反省から、『原則として赤字国債の発行による借金は禁止』と定められています。
しかし、実際には2種類の国債が存在します。
① 建設国債(財政法第4条本文の例外)
道路、橋、港湾、治水、災害復旧、公営住宅など、将来に資産として残る公共投資の資金を賄うための借金です。これらは財政法第4条の例外規定として認められています。 道路や施設は何十年も残るので、『将来の世代にも建設費用を少しずつ負担してもらう方が公平でしょ』という考え方に基づいています。
② 赤字国債(特例国債)
一方で、社会保障費、地方交付税、教育費、防衛費といった消えてしまう経常的な支出のために発行される借金です。
これは財政法第4条では認められないため、発行するにはその都度特例公債法(特例法)という特別な法律を国会で成立させる必要があります。本来は一時的な措置のはずが、毎年この法律を通して発行し続けてきたことが、日本の財政を急速に悪化させた原因です。

3. 日本の歳出と税収・国債の推移:バブル崩壊からコロナ禍まで
ここで、実際の日本のグラフのイメージを見てみましょう。
グラフを見ると、1990年代以降、日本の債務(借金)が右肩上がりに激増しているのが分かりますよね。一体何があったのでしょうか? 時代を追いかけてみましょう。
① バブル崩壊後の不況対策(1990年代〜)
1990年代初頭にバブル経済が崩壊し、日本は長い深刻な不況に入りました。 政府は景気を回復させようと、全国で膨大な公共事業(道路やダム造りなど)を行いました。税収が落ち込む中で支出を増やしたため、大量の赤字国債(特例国債)が発行されるようになったんです。
【補足:政治のバックグラウンド】 当時は、政治家・官僚・業界団体が相互に影響を及ぼし合う『政官財の鉄の三角形』が形成され、地域への利益誘導政治が行われているのではないかという批判も高まりました。
② 道路特定財源問題と「小さな政府」への模索(2000年代)
2000年代に入ると、小泉純一郎内閣などを中心に小さな政府(政府の無駄を減らし、民間に任せる)を目指す改革が進められました。 その中で大きな議論となったのが道路特定財源問題です。『ガソリン税などの税金は道路作りにしか使えない』という仕組みが不必要な道路建設を招いていると批判され、2009年に一般財源化(他の用途にも自由に使えるようにすること)されました。
③ 2020年度以降と新型コロナ(現代)
そして現代。2020年度以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や経済対策のため、政府は過去最大規模の補正予算を何度も組みました。この巨額な支出の多くも国債の発行によって賄われ、日本の財政悪化に拍車をかけることになりました。」

4. 財政危機と財政再建:目指すべき地平は?
現在の日本の状況を家庭に例えると、『年収600万円の家庭が、毎年1000万円使って、足りない400万円をカードローンで借りていて、借金の総額が1億円を超えている』というような状態です。
【注意!】 もちろん、国は家計と違って独自に税金を徴収する課税権を持ち、通貨制度との兼ね合いもあるため、単純に『家計とまったく同じ』とは言えません。しかし、『収入以上に支出を続ければ借金が積み上がる』という感覚を掴むためのイメージとして捉えてくださいね。
現在、国の歳出(支出)の中で大きな割合を占めているのが国債費です。国債費とは、国債の元本償還(返済)と利子支払いに充てる費用のことです。支出の約4分の1がこの返済費用に消えてしまうため、他の政策にお金を使いにくくなっています。
じゃあ、財政を立て直すにはどうすればいいのか?

基礎的財政収支(プライマリー・バランス)
財政再建の指標として重要なキーワードが、基礎的財政収支(プライマリー・バランス:PB)です。
【プライマリー・バランスの式】税収などの収入政策経費(国債費を除く支出)
簡単に言うと、『新たな借金に頼らずに、その年の社会保障や公共事業などの経費を、その年の税収だけで賄えているか?』を示す指標です。これがプラス(黒字)になれば、『少なくとも過去の借金の返済以外では、新たな借金を増やさずに済んでいる』ということになります。
日本政府は『PBの黒字化』を目標に掲げていますが、高齢化に伴う社会保障費の膨張により、達成時期が何度も延期されているのが現実です。

5. 【共通テスト頻出】知っておきたい国の「財布」の仕組み
ここで、共通テストで狙われやすい3つの補足知識を押さえておきましょう!

  1. 一般会計と特別会計 国の財布は1つではありません。私たちが普段『国家予算』と呼ぶのは一般会計(基本の歳入・歳出)ですが、特定の事業や資金運用を行うための特別会計(年金、国債整理基金など)も存在します。

  2. 財政投融資(第2の予算) 税金ではなく、国の信用で集めた資金(郵便貯金や公的年金の積み立てなど)を公的機関などに貸し付けてインフラ整備や中小企業支援を行う仕組みです。国債とは別の資金ルートです。

  3. 国債と地方債 国が発行するのが国債、都道府県や市町村などの地方公共団体が発行する借金が地方債です。両者を合わせた『国・地方の債務残高』で日本の財政状況を評価することもよくあります。

6. 市中消化の原則と「財政破綻論」のリアル
政府が国債を発行する時、日本銀行(中央銀行)に直接買い取らせてはいけないという市中消化の原則(日銀の直接引き受け禁止)があります。日銀にお金を無限に刷らせて国債を買わせると、通貨の価値が暴落して猛烈なインフレになるからです。そのため、まずは民間銀行や投資家(市中)に買い取らせるのがルールです。
【問い2】 『では、これだけ借金が増えた日本は、近いうちに破綻(デフォルト)してしまうのでしょうか?』
【専門家の論点と見方】 経済学者の間でも議論が続いています。

  • 慎重派の立場: 将来的に金利が上昇した場合、巨額の利払いが発生して財政が立ち行かなくなるリスクや、インフレ制御ができなくなる危険性を指摘し、増税や歳出削減による財政再建を訴えます。

  • 積極財政派(MMTなど)の立場: MMT(現代貨幣理論)は、自国通貨建て国債を発行できる政府は財政赤字そのものよりもインフレ率を重視すべきだと考える理論です。自国通貨建て国債は外貨建て国債より返済不能に陥る可能性が極めて低いと主張します。

共通テストの観点からは、『自国通貨建て国債は外貨建て国債より返済不能に陥る可能性は低いと考える見方がある一方で、過剰な国債発行はインフレや金利上昇などの問題を引き起こすリスクがある』というように、両面から中立に理解しておくことが大切です。

今日のまとめと振り返り
「今日の授業のポイントを整理しましょう!

  • 財政の役割: 資源配分、所得再分配、景気安定化(ビルト・イン・スタビライザーフィスク・ポリシーの区別!)。

  • 国債の種類:財政法第4条に基づく建設国債と、特例公債法に基づく赤字国債(特例国債)

  • 歴史の変遷: バブル崩壊後の不況対策、2009年の道路特定財源の一般財源化小さな政府の模索、2020年度以降新型コロナ対策。

  • 財政再建:国債費(元本償還と利子支払い)の負担軽減と、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の改善が課題。

ニュースで『補正予算』『国債発行』『プライマリー・バランス』『財政再建』といった言葉を見かけたら、ぜひ今日学んだ仕組みを思い出して、自分たちの将来にどう影響するか考えてみてくださいね。
次回は『経済の民主化と戦後復興』。敗戦後の日本がどうやって絶望から立ち上がったのかを追いかけていきます。
はい、今日の授業はここまで。お疲れさまでした。


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