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【公共講義録】経済編#11 金融政策と金融の自由化・国際化

みなさん、こんにちは!
前回は、銀行がお金を生み出す「信用創造」の手品や、日本銀行(日銀)が国債を売り買いして世の中の金利を調整する、伝統的な「公開市場操作」について学びました。
今回は、その日銀のコントロール術が「もうこれ以上、教科書通りのやり方が通用しない!」という限界を迎えたところからスタートします。現代の日本経済、そして世界経済の最前線に迫るテーマです。
今日のタイトルは「非伝統的金融政策と金融の自由化・国際化」。
授業の始まりに、いまの日本のリアルな空気を感じる、こんな問いから考えてみましょう。
みなさんは、自分の銀行口座を持っていますか?お年玉などを預けている人も多いかもしれませんね。 では、その口座にお金を1年間ずっと預けっぱなしにしていたとしたら、いまの日本でお利息(利子)は一体いくらくらいもらえるでしょうか?』
もし「100万円」を預けていたとしたら、1年後にいくら増えているか、ちょっと想像してみてください。
「マクドナルドのセットくらいは食べられるかな?」と思ったみなさん、残念ながら大ハズレです。つい最近までの日本では、100万円を1年間預けても、もらえる利息はたったの「10円〜20円程度(税引前)」という、信じられないような超低金利の時代が長く続いていました。
「ジュース1本すら買えないじゃん!なんでそんなことになっているの?」と思いますよね。実はこれこそが、日銀が日本の大不況を救うために発動した「常識破りの作戦」の結果なのです。
今日の授業を受けると、「なぜ日本の金利はこんなに低い状態が続いたのか」「銀行の形が昔と今でなぜガラリと変わったのか」という、私たちが生きる金融社会のリアルな現在地が完璧に見えてきますよ。
さっそく、日銀の限界突破の作戦から見ていきましょう!

1. 教科書通りのやり方が効かない!?:「非伝統的」な金融政策
前回の授業で、「不景気のときは日銀が金利を下げる(買いオペを行う)」と習いましたよね。
金利が下がれば、企業がお金を借りやすくなって景気が良くなるはずです。
ところが1990年代後半、日本経済はバブルが弾けた後の深いデフレに苦しみ、日銀は金利をどんどん下げ続けました。そしてついに、金利がほぼ「0%」に達してしまったのです。これがゼロ金利政策です。
ここで日銀は、頭を抱えることになります。
金利を0%まで下げても、まだ景気が回復しないとします。 じゃあ、もっと景気を良くするために「金利をマイナス5%にしよう!」と、さらに引き下げることは簡単にできるでしょうか?』
もし金利が大幅なマイナスになったら、「銀行にお金を預けると、逆にお金が罰金のように減っていく」ということになりますよね。そんなことをしたら、みんな銀行から一斉に現金を引き出して、自宅のタンスの中に隠してしまいます(タンス預金)。つまり、金利には「0%より下には簡単には下げられない」という物理的な限界があるのです。
金利を下げるという「伝統的」な武器を使い果たした日銀が、2000年代以降に編み出したのが、世の中に流す「お金の量」そのものを爆発的に増やす非伝統的金融政策です。

日銀が繰り出した異次元の作戦たち
量的緩和政策
2001年〜
金利をターゲットにするのをやめ、日銀が世の中に供給する通貨の土台(マネタリーベース)の量を直接増やすことを目標にした政策です。銀行が持つ国債を日銀が大量に買い取り、銀行の口座にお金をこれでもかと詰め込みました。

量的・質的金融緩和 & インフレターゲット
2013年〜
黒田東彦総裁のもとで始まった、通称「異次元緩和」です。「2年で物価上昇率を2%にする」という具体的な目標(インフレターゲット政策)を掲げ、市場の買い取り対象を国債だけでなく、株の親戚(ETF)にまで広げて、お札をそれまでの2倍以上のペースで刷りまくりました。

マイナス金利政策
2016年〜
ついに禁断の領域へ踏み込みました。一般の銀行が「使い道がなくて日銀の当座預金に預けっぱなしにしているお金」の一部に対して、「マイナスの金利」を課したのです。「日銀に預けておくとお金を減らすぞ!だから意地でも民間の企業や個人に貸し出しなさい!」と、銀行の背中を強烈に押す作戦でした。
このように、金利が限界まで下がった低金利時期の長期化の背景には、日銀による必死の量的緩和の歴史があったのです。
ちなみに、経済をコントロールするには、日銀の金融政策だけでなく、政府が行う「財政政策(税金や予算の調整)」の2つを、まるで車の両輪のように組み合わせる必要があります。この組み合わせのことをポリシーミックスと呼びます。

世界の動きはどうなっている?(各国の政策金利の推移)
日本がずっと超低金利・マイナス金利を続けていた一方で、アメリカやヨーロッパ(EU)などの諸外国は、新型コロナウイルスの流行の後に発生した激しいインフレを抑え込むため、2022年以降、政策金利を急激に引き上げました(利上げ)。 日本と世界の金利の差が大きく開いたことで、「日本の円を売って、金利が高いアメリカのドルを買おう」という動きが強まり、歴史的な円安が進む一因にもなりました。そして日本もついに、2024年に長いマイナス金利政策に終止符を打ち、少しずつ金利のある世界へと戻る舵を切り始めています。

2. 銀行のルールがガラリと変わった:「金融の自由化」と「グローバル化」
さて、日銀の政策が変わる一方で、私たちが利用する銀行や証券会社の「仕組み」そのものも、ここ数十年の間に激変しました。
昔の日本の銀行は、政府(大蔵省)の手厚い保護のもと、どの銀行も横並びの金利、横並びの手数料で、絶対に潰れないように守られていました(護送船団方式と呼ばれました)。しかし、これだと競争が生まれず、サービスの質も上がりません。
そこで1980年代から90年代にかけて、国は金利や業務のルールを自由にする金融の自由化を進めました。さらに、国境を越えてお金が自由に行き来する金融のグローバル化も一気に加速します。
自由になったということは、裏を返せば「競争に負けた銀行は潰れるかもしれない」という自己責任の時代への突入を意味します。
バブル崩壊後、日本の銀行は貸したお金が返ってこなくなる不良債権の山に苦しみました。
危機感を覚えた政府は、金融業界を厳しくチェック・監督するために金融庁を設立します。
銀行たちは生き残りをかけて次々と合併を繰り返し、かつて十数行もあった大銀行は、現在のみなさんにお馴染みのメガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)などの巨大なメガバンクグループへと再編されました。
現在では、銀行が証券会社や保険会社をグループ内に傘下として収める、金融コングロマリット(複合金融企業体)と呼ばれる巨大な形に進化しています。

3. 私たちの身を守るセーフティネット:ペイオフ
「もし、自分がお金を預けている銀行が倒産しちゃったらどうなるの!?」と不安になりますよね。
金融の自由化によって銀行が潰れるリスクが生まれたため、国は私たちの預金を保護するためのセーフティネットを用意しました。それがペイオフ(預金保険制度)です。
共通テストで、このペイオフ限度額のルールが非常によく狙われます。
【重要ルール】 万が一、銀行が破綻(倒産)した場合、保護される預金の限度額は、 預金者1人あたり、その銀行ごとに「元本1000万円までとその利息」です。
それを超える分については、銀行の残った財産の状況に応じてしか戻ってきません(※ただし、利子のつかない当座預金などは全額保護されます)。
もし将来、みなさんが起業したり大出世したりして、お財布に2000万円の貯金ができたとしたら、1つの銀行に全部預けるのではなく、A銀行に1000万円、B銀行に1000万円と「口座を分ける(分散投資する)」のが、賢い大人のリスク管理ということになりますね。
また、世界中でビジネスをする銀行が勝手に無茶をして倒産し、世界経済を巻き添えにしないよう、国際的なルールも作られました。スイスのバーゼルにあるバーゼル銀行監督委員会が定めたバーゼル合意(BIS規制)です。 「海外で活動する銀行は、大損に耐えられるように、自分のポケットマネー(自己資本)を全体の8%以上持っていなければならない」といった国際基準が厳しく定められており、これが金融のグローバル化における世界共通の安全ブレーキとなっています。

今日のまとめ
かつてはお札の量を増やすだけだった金融政策は、デフレを脱出するために量的緩和マイナス金利といった「非伝統的」な次元へと進化しました。その結果として、私たちが直面している超低金利の社会があります。同時に、金融の自由化によって銀行は激しい競争に晒され、再編を繰り返して今の形になりました。
私たちは、いつ銀行が破綻してもおかしくない自由な世界に生きているからこそ、ペイオフのような仕組みを知り、賢くお金と付き合っていく知識が必要不可欠なのです。
共通テスト対策としての重要ポイント!

  1. 金利が0%に達した後に日銀がとった、お金の量そのものを増やす政策を非伝統的金融政策量的緩和マイナス金利など)という。

  2. 日銀が世の中に供給する通貨の土台の量をマネタリーベースという。

  3. 金融の自由化・グローバル化に伴い、銀行の再編が進み、巨大なメガバンクグループが誕生した。

  4. 銀行が倒産した際、預金が保護されるペイオフ限度額は「元本1000万円までとその利息」である。

  5. 国際的に活動する銀行の安全基準として、バーゼル銀行監督委員会によるバーゼル合意がある。

次回は、いよいよ政府が主役となる「財政の働きと国の予算」について学びます。私たちが納めている税金がどのように集められ、何に使われているのか、そのダイナミックなお金の流れをのぞいてみましょう。
それでは、今日の授業はここまで。お疲れ様でした!

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