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**端にいられなくなった** ── 水無月ハルカの記録・春 ── 『それでも、春に』裏面 全六章 **第六章 並んでいた**

四月の最初の週、私から送った。

**「井の頭、行かない?」**

桜の満開予報を見て、すぐ打った。
迷わなかった。
迷わなかったことに、自分で少し驚いた。

公園に入ると、人が多かった。
花びらが風に舞っていた。
彼が隣を歩いた。
今日の私は、半歩後ろじゃなかった。
並んでいた。
気づいたら、そうなっていた。

池のほとりで私は言った。

「怖いのは、まだ少しある」

「うん」
と彼は言った。

「でも、逃げなくていいって言ってくれたこと、考えてた」

「私、見ることばかりしてきた」
言いながら、これは本当のことだと思った。
ずっと端にいて、全部見てきた。
カメラを持って、映像を撮って、人の顔を記録してきた。
でもそれは、見られないための盾でもあったかもしれない。

「それ、俺に言えてるじゃない」
と彼が言った。 少し笑えた。
そうだね、と思った。
言えている。
今、言えている。

「わかった」と私は言った。

「わからないまま一緒にいたい」という彼の言葉への、答えだった。
完璧な答えではなかった。
でも、正直な答えだった。

花びらが一枚、私の肩に落ちた。
彼が払おうとした。
「いい」と私は言った。
彼は手を止めた。

しばらく、並んで歩いた。
桜は、何も言わなかった。
ただ、咲いていた。
端にいなくても、消えなかった。
見られても、そこにいられた。
それだけのことが、今日の私には十分だった。

© 端にいられなくなった / 水無月ハルカの記録・春

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