右トントン、左トントン。そして「生まれてきてよかったよ」|家族エッセイ#152
雨の日の朝。
ただでさえ、濡れるし、荷物は多いし、子どもとの移動は大変です。
子どもは雨にテンションが上がるけれど、母としては、
「どうか無事に、なるべく早く目的地へ着いてください」
と願うばかり。
そんな今朝も、長男は傘を持ち、新しく買ってもらったこびとのバッグを提げて、駐車場まで歩いていました。
我が家から駐車場までは、大人なら徒歩2〜3分ほど。
子どもと一緒なら、5分ちょっとかかる道のりです。
すると突然、長男が、
「右、トントン。左、トントン。右、トントン。左、トントン」
と言いながら、左右にステップし始めました。
保育園で何かやっているのでしょうか。
理由はよく分かりません。
ただ、一つだけ確かなことがあります。
全然、前に進まない。
そう。
「前トントン」がないんです。
右斜めへ進んでは、左斜めへ。
右、トントン。
左、トントン。
こちらが、
「早く進んでー」
と言っても、長男はお構いなし。
ずっと左右にステップしています。
しかも、駐車場までの道は車通りが多く、雨の日はさらに交通量が増えます。
大人二人が横に並んで歩くのも怖いくらいの道です。
そんな中、長男は「左トントン」のタイミングで、急に車道側へ寄っていく。
「ちょっと待って!まっすぐ歩いて!」
母は、もうハラハラです。
しかし長男は、
「これじゃないと進めない」
と言います。
いや、これだと進めていないのよ。
最後には、
「押したら進める」
と言われたので、長男の背中を押してみると、
「さーっ」
と言いながら、ようやく前へ進み始めました。
「もう勘弁してください」
そう言いながらも、ちょっと面白い。
でも、やっぱり危ないから勘弁してほしい。
笑いと焦りが入り混じった、雨の日の登園でした。
さてさて。
もう一つは、昨日の夜の出来事です。
長男は、本当に寝るのが遅い。
昨日も消灯したのは、21時を少し過ぎた頃でした。
ところが、電気を消してからも長男はハイテンション。
子どもって、どうして寝る直前になると元気になるのでしょう。
真っ暗な寝室で、突然オリジナルソングを歌い始めました。
「ハッピーバースデー
生まれてきてよかったよ
ハッピーバースデー
生まれてきてよかったよ」
このフレーズを、まあまあの声量で何度も繰り返します。
でも、なんだかとてもいい歌だなと思いました。
そこで私が、
「いい歌だね。ママも、あなたが生まれてきてくれて、いてくれてよかったよ」
と伝えると、長男は、
「ママがいてくれてよかったよ」
と言ってくれました。
その言葉に、じんわり。
ああ、嬉しいな。
眠る前の暗い部屋で、心がふわっと温かくなりました。
……とはいえ、時間は刻々と過ぎていきます。
「じゃあ、次で終わりにしようね」
と声をかけても、歌とおしゃべりは終わりません。
そして最後には、
「もう喋らないよ。寝るよ!」
と、少し怒る母。
ほっこりしたと思ったら、すぐに怒っている。
朝は「右トントン、左トントン」にハラハラして、夜は「生まれてきてよかったよ」にじんわりする。
子どもとの毎日は、カオスと愛おしさの往復です。
今日もありんこ家は、笑ったり怒ったりしながら、わさわさと過ぎていくのでした。
育児と自分の人生を両立したいママの観察記録として書いています。
