もりばぁという名の妖怪|家族エッセイ #41
実家での出来事。
長男がまだ二歳半ごろのことだった。
ある日、突然、長男が
「もりばぁがね……」
「もりばぁがくるよ」
と話し出した。
え?もりばぁ?
なにそれ?と、私は一瞬フリーズ。
気になって母(長男にとってのばぁば)に聞いてみると、
どうやら犯人は父(長男にとってのじいじ)だった。
じいじは、
「悪いことをすると約束を守れないと、もりばぁが来るぞ」
と言って、
たぶん日本画っぽい妖怪の絵か、少し怖めの絵を見せながら、
「これがもりばぁだ」
と、完全オリジナルの妖怪を誕生させていたらしい。
うちの実家は、少し田舎で、家のすぐ隣が山。
きっとその環境もあって、
「森」+「何か怖そうな存在」=もりばぁ
になったんだと思う。
当時は一過性のものだろうと思っていた。
でも――
それから一年以上たった今も、
もりばぁは我が家と実家で現役バリバリだ。
最近の長男は、妖怪やおばけの動画が大好き。
見えないものは怖いけど、なぜか惹かれる。
そんな年頃。
もりばぁも、怖い存在ではあるけれど、
どこか身近で、
どこか愛されキャラのような立ち位置になっている。
困ったときは、
「もりばぁが来るぞ〜」
と、うちのクセつよパパもすぐ使う。
実家に帰って、いとこが集まると、
「もりばぁから逃げろー!」
と、みんなで大騒ぎしながら走り回る。
怖いはずなのに、
なぜか楽しそうで、
なぜか笑いが起きる。
子どもたちにとってもりばぁは、
怖いけど、
身近で、
ちょっと素敵な妖怪になっているみたいだ。
これを生み出したじいじ、
なかなかすごい。
ト書き|もりばぁは教育的にどうなの?
この「もりばぁ」、
大人から見ると少し気になる存在でもある。
正直に言うと、
妖怪やおばけを使ったしつけは
使い方次第でプラスにもマイナスにもなる。
2〜3歳ごろは、
現実と空想の境目がまだあいまいな時期。
怖いけど気になる存在に惹かれるのは、発達として自然なことだ。
今のところ、
もりばぁは
怖がらせるだけの存在ではなく、
ごっこ遊びや逃げる遊びに変わり、
家族やいとこと共有される「物語」になっている。
その点では、
想像力や感情の整理という意味で
悪い影響ばかりではないと感じている。
ただし、
「言うことを聞かせるための脅し」として
使いすぎると、
怖いから従う、という形が強くなってしまう。
これからは、
もりばぁは遊びの中の存在として大切にしつつ、
約束や生活のルールは、
少しずつ言葉と理由で伝えていけたらいいなと思っている。
今はまだ試行錯誤の途中。
この家庭なりの付き合い方を、
これからも探していきたい。
