【第27話】『TACHI・最強女番長ショーコの軌跡』第3部:カロリーの地政学(ジオポリティクス) ~聖なる暴食の福音(ヱヴァンゲリヲン)と、虚無の三代王朝(ホワイト・パージ)最悪の東西冷戦編~
第27話「白(ホワイト)王朝三代記 ~素うどんのプリンスと、灰色の福音~」
『Aパート:虚無の聖域と、創世の神話』

そこは、世界で最も「静かで」「色がなく」「何もない」場所。大陸調和連邦の首都、平淡(ピンタン)。
巨大なコンクリートの塊のような「調和宮」の最上階。大陸調和連邦三代目最高指導者、白 素(バイ・スー)は、窓の外に広がる完璧な「灰色」の世界を眺め、深く、満足げな溜息を吐いた。
「……おお、見よ。この静寂。
この均一ぶぁい!
これこそが、ぽっくんのおじいたま、偉大なる空に輝く白頭山の星にして将軍様・白 淡(バイ・ダン)同志が夢見た、人類到達の最終地点なのでしゅ。へぽーん。」
白素は、部屋の中央に鎮座する、巨大な黄金の肖像画に向かって恭しく一礼した。
描かれているのは、厳しい表情で「白湯(さゆ)」の入ったお椀を掲げる一人の老人――白王朝の創始者「白 淡(バイ・ダン)」である。
「かつて、世界は地獄であったぶぁい。
人々は『辛い』『甘い』『美味い』という下劣な刺激に惑わされ、隣人の皿にある肉を奪い合うために剣を取ったのでしゅ。いいなけつ!
だが、始祖・おじいたま白淡同志は、カール・マルクスのパパが遺した真実の聖典『資本論(味覚篇)』を独自に発見し、解読されたのでしゅ。ぜっこうもん!
聖典にはこう記されていた……『すべての余剰価値は、余剰な調味料から生まれる。塩分濃度に差がある限り、階級闘争は終わらない』とぶぁい!」
(互昌美のメタツッコミ)
「……ちょっと待て、スタートから情報量が致死量超えとんねん! カール・マルクスのパパ!? 何回出てくんねんその親父! ほんで『資本論』に味覚篇なんてあらへんわ! マルクスもそこまで『食』に特化した理論展開しとらんわボケェ!!ていうかお前!お○っちゃまくんやんけ!よしりん先生に怒られるで!!」
「ふむ、ノイズが聞こえるぶぁい。どぼちて?
……まあよい……始祖・おじいたま白淡同志は、この真理を胸に、伝説の『白湯の長征(サユ・マーチ)』を指揮されたのでしゅ。
大陸中の料理店を焼き払い、コックを再教育収容所(精進料理寺院)へ送り、国民に『味覚の放棄』を誓わせたぶぁい。おっ…おはヨーグルト!
その過程で、かつての悪しき食文化に固執した数千万の反動分子たちが『餓死』したと西側諸国は喧伝しているが、それは全くのデマゴーグぶぁい。そんなバナナ!
彼らは死んだのではないぶぁい。味のない世界に適応できず、自らの舌が絶望して『味覚死』したに過ぎないのだよ。ともだちんこ!」
『Bパート:鋼鉄の漂白剤、二代目の洗練』

白素は、次に二代目最高指導者、父である白 清(バイ・チン)の胸像を撫でた。
「始祖が土台を築き、我がおとうたま、白清同志がそれを『鋼鉄の規律』へと昇華させたぶぁい。ぱーぺき!
おとうたまは断行されたんでしゅ……人類史上最も美しい粛清、『文化大漂白(ホワイト・パージ)』をぶぁい!
『派手な色は精神を腐らせる』
おとうたまのその一言で、この国の色彩はすべてグレーに統一されたぶぁい。こんにチワワ!
さらにおとうたまは、音楽からもメロディを追放されたぶぁい。音の高低差は不平等の象徴だからでしゅ。
そしておとうたまは我が祖国独自の『グレー・ムービー(灰色の芸術映画)』を創造されたのでしゅ。
国民は今、一定の周波数のホワイトノイズのみを聴き、完全グレーの砂嵐映像を見詰め、完璧な精神の安寧(というか無関心と無表情)を得ているぶぁい。これぞ人類最高の至福ではないかぶぁい! むん!な気持ち!
昌美……お前の父親『成現(ソンヒョン)』も、この鋼鉄の楽園から逃げ出した『裏切り者の舌』を持つ男だったぶぁい。すいま千円!」
(互昌美のメタツッコミ)
「……親父の名前出すなグリグリほっぺ!あんなグレーのジャージ着せられて、お経みたいなノイズ聴かされ続けたら、誰だって逃げ出すわ! 『文化大漂白』って、ただの色彩虐殺やろがい! 国民の目ぇから光が消えとるやないけ! これのどこが楽園や、ただの巨大なコインランドリーやんけ!!」
「黙るぶぁい! 絶交門!
おとうたま白清同志は、半島ゾーン(連邦東部)を実験場とし、住民をロボットのように均質化させることに成功したぶぁい。
そこでは、朝5時に全員が同じ角度で起き、同じ味のないブロックを食し、同じ歩幅で職場へ向かうぶぁい。これこそが『大調和躍進運動』の完成形なのでしゅ。へけっ!
国民は今、何も考えず、何も望まず、ただ『素(そ)』として生きているぶぁい。
これ以上の幸福がどこにあるというのでしゅか? うんにゃのっと!」
『Cパート:三代目の正統性と、デジタル・ディストピア』

白素は、自らの肉厚な胸を張った。
「そして今、ぽっくん、三代目・白素の時代が来たぶぁい。こんばんワイン!
ぽっくんは、おじいたまの哲学とおとうたまの規律を、現代のテクノロジーで完璧に融合させたぶぁい。
それが、『スマート・ハーモニー計画』なのでしゅ。ぱーぷりん!
もはや暴力で抑えつける時代は終わったぶぁい。今や、国民のスマートフォン、家庭のスマート炊飯器……それらすべてに我が連邦の『調和アプリ』をプリインストールし、脳波を直接コントロールしているのでしゅ。へけっ!
ぽっくんが留学したスイス(のような中立国)で学んだのは、自由ではないぶぁい。
あそこで食べたチーズフォンデュの熱さが、ぽっくんの舌を焼き、味覚を奪おうとしたぶぁい! 頭に北半球!
あの時、ぽっくんは確信したぶぁい。西側の食文化は、牙を剥く獣であると! ちが宇っ宙(うっちゅう)に!
以来、ぽっくんはあらゆる熱い料理と、味の濃い刺激を憎悪し、世界を『素うどん』のような静寂へと導く決意を固めたのでしゅ。さいならっきょ!」
(互昌美のメタツッコミ)
「チーズフォンデュで火傷したのがトラウマって、動機がショボすぎるわ!! 逆恨みもええ加減にせえ!! ほんで『素うどんのプリンス』とか呼ばれとるらしいけど、お前の食っとるもん、絶対それちゃうやろ!!」
『Dパート:USAへの攻撃と、大阪への執着』
「……ふむ。モニターを見るぶぁい。おはヨーグルト!
海の向こうの汚物、USA(ユナイテッド・ステーキ・オブ・アメリカ)。
ドナルド・タロットなどという、金髪のカロリーモンスターが率いるあの国は、自由という名の『脂の暴力』で世界を汚染しているぶぁい。
奴らの掲げる『食の自由』は、ただの精神的肥満ぶぁい! いいなけつ!
奴らはケチャップを聖水とし、マヨネーズを福音(ヱヴァンゲリヲン)と呼ぶぶぁい。ああ、吐き気がするぶぁい。すぺぺっ!
特に、その影響を最も強く受け、今やインバウンドという名の『味覚の売春』に明け暮れているあの街……大阪ぶぁい。
あそこには、我が連邦が最も忌み嫌う『出汁』と『ソース』の悪魔が棲みついているのでしゅ。ぜっこうもん!」
白素の瞳が、爬虫類のように冷たく光る。頬っぺたが赤くなる。
「だが、心配はいらんとでしゅぶぁい。大阪は内側から崩壊するぶぁい。ぱーぺき!
日本の巨大企業……TACHIホールディングスの舘 峰(蝮のお峰)とは、秘密の最終合意に達したぶぁい。ともだちんこ!
彼女は、大阪の地下に眠る『モノリス(感情抑制装置)』を再起動させ、我が連邦のナノマシンを全家庭の調味料に混入させる手助けをしてくれるぶぁい。
近々、大阪の醤油はただの黒い水になり、味噌はただの茶色い泥になるぶぁい。
ショーコ……あの、非対称な食欲を持つ少女。
彼女が『味のしないたこ焼き』を口にした時、その絶望の顔をわしは特等席で眺めたいのでしゅ。うんにゃのっと!」
『Eパート:デブのパラドックス ~聖なる脂肪の論理~』
白素は、部屋の鏡に映る自分の姿を見つめた。
国民が完全栄養ブロック(土と紙の味)によってガリガリに痩せ細り、骨が浮き出ているのに対し、彼は、はち切れんばかりの脂肪を蓄え、三重顎を揺らしている。
「……ふむ。ここで、ぽっくんの連邦の最も深い『正統性』について説明しておかねばなるまいぶぁい。
国民の諸君、そして下劣なツッコミを繰り返す昌美よ。
お前たちは、『なぜ指導者が太っているのか』という、あまりにも浅はかな疑問を抱いているのでしゅか? どぼちて?」
白素は、厳かに、そしてエクストリームな論理を、陶酔したように語り始めた。
「いいか、これは『特権』ではないぶぁい。『自己犠牲』なのでしゅ! なんて骨体!
この世界には、悪魔が作り出した『カロリー』という名の猛毒が溢れとるぶぁい。
カロリーは人を凶暴にし、個性を生み、調和を乱すぶぁい。
国民がその毒に侵されないよう、ぽっくんは『自らの肉体を巨大な浄化フィルターとし、この大陸に流入するすべての邪悪なカロリーを、一人で受け止めている』のでしゅ!! みん!な感じ!」
白素は、自分の突き出た腹を愛おしそうに撫でた。
「この脂肪の一片一片には、国民が受けるはずだった『美味いという名の誘惑』が封じ込められているぶぁい。
ぽっくんは、国民の魂を清らかに(ガリガリに)保つため、毎晩、涙を流しながら高級ステーキや密輸されたチーズフォンデュを食しているのだぶぁい。
『ああ、こんなに美味いなんて、なんて恐ろしい毒なのでしゅ……! 国民には絶対に食べさせてはならないぶぁい!けけけけ!』
そう叫びながら、ぽっくんは一人、暗闇でフォークを動かすぶぁい。
この三重顎は、ぽっくんが背負っている『人類の原罪』そのものぶぁい! ぽっくんが太れば太るほど、国民は飢えと味覚の呪縛から解放され、完璧な無味へと近づくのでしゅ! ぐぴぴっ!
これこそが、白王朝に伝わる『大食漢(ビッグ・イーター)の救済』理論なのでしゅ!! いいなけつ!」
(互昌美のメタツッコミ)
「……。……。(※あまりのクズ理論の完成度に、昌美が天を仰ぐ)……もうええわ!! 勝手に太れ!! ほんで心臓脂肪で詰まって爆発しろ!! 『大食漢の救済』!? ただの食い逃げ独裁者の言い訳やんけ!! 泣きながらステーキ食うな! どの口が言うとんねん! その口、ショーコちゃんが正拳突きで『永久無味』にしたるからな!! 覚悟しとけよ!!」
『Fパート:最終兵器「幸福(ハピネス)」』
「ふふふ……喚くがいいぶぁい。ぜっこーもん!
見るのでしゅ、格納庫で眠るぽっくんの連邦の最高傑作をぶぁい。」
白素がレバーを引くと、地下のハッチが開き、三基の巨大な大陸間弾道ミサイルが姿を現した。
それぞれの弾頭には、白素の満面の笑みと共に、以下の名前が刻まれている。
・『調和(ハーモニー)』:広範囲に「味覚喪失ナノマシン」を散布し、あらゆる調味料を無効化するぶぁい。
・『平等(エクオリティ)』:人々の網膜に働きかけ、世界を白黒のモノトーンとして認識させる特殊電波を放つぶぁい。
・『幸福(ハピネス)』:脳内のドーパミン報酬系を破壊し、「無機質な作業」をすることにのみ喜びを感じさせる精神崩壊爆弾ぶぁい。
「近日中、これらの『灰色の福音』を大阪の空で炸裂させるぶぁい。
その時、大阪は世界で最も『正しく、静かな』街へと生まれ変わるのでしゅ。
大杉龍一……。あのような『笑い』という名のノイズを撒き散らす不純物は、ぽっくんの連邦の再教育プログラムによって、既に完璧な『灰色のエージェント』へと作り変えたぶぁい。頭に北半球!
ショーコ。お前のその『突出した食欲』は、ぽっくんの国の平等という名の刃の前に、どれほど耐えられるかなぶぁい? さいならっきょ!!」
白素は、ストローで最後の栄養ゼリー(土の味)を啜り、モニターに映るショーコの姿を指差して、高笑いを上げた。
大陸調和連邦、侵攻開始ぶぁい!
世界から「味わい」が消え去るカウントダウンが、今、始まったのでしゅ!
(第27話 完) → 第28話に続く
【次回予告】

皆さん、こんにちは。元イヌ・エイチ・ケー(INK)のアナウンサー、池下彰です。
いやぁ、第27話……白素総統の言葉遣い、なんだか非常に不愉快というか、聞いていて「頭に北半球」になりそうな内容でしたね。
さて、次回の第28話ですが……。
行方不明になっていた、あの大杉龍一さんが帰ってきます。
実は彼、大陸調和連邦で「完璧な漂白」を受けてエージェントになったんですね。
「えっ、大杉さんが茶魔語に洗脳されたの?」
はい、いい質問ですねぇ。
舞台は大阪・ミナミの「NGK(なんば・ごっつおもろい・かげつ)」。
そこで大杉さんが見せる、笑いを消し去る恐怖の漫才。
絶体絶命のミナミに、我らがショーコさんの正拳突きが炸裂するのでしょうか?
次回、TACHI・最強女番長ショーコの軌跡
第28話「帰ってきた大杉くん ~笑いと味覚の強制終了(シャットダウン)~」
皆さん、画面の隅々まで、せいぜい、よく観察しておいてくださいね。
それでは、また次回お会いしましょう。さいならっきょ!


