ビール売り子の性商品化について、各企業に尋ねてみました(キリンビール様編)

株主、投資家、消費者、その他ステークホルダーの皆様の参考になりましたら幸いです。
主要野球場における「売り子」の性商品化是正依頼書
1. 問題提起:球場における売り子の性商品化の深刻な現状

1-1.成人男性のみを過剰に性接待する不平等な環境
現在、多くの野球場において、ビールなどの飲料販売は主に若い女性が担当する「売り子(販売スタッフ)」によって行われています。インターネット上で公開されている『売り子名鑑(神宮球場グルメHP)』や『スタジアム売子紹介(楽天イーグルスHP)』を見ると、紹介されている売り子のほとんどが20代を中心とした若年女性に偏っていることがわかります。

参考URL:
神宮球場グルメ「ズキューン!売り子名鑑」
一例として、神宮球場で就労する売り子は「ズキューン!売り子名鑑」と題するWEBページに掲載されていますが、その内容には以下のような重大な問題点が見られます。
外見重視の表現(17件、30.0%)
最も深刻な問題として、売り子の外見や身体的特徴を商品価値として強調する表現が全体の30%を占めています。
【具体例】
◆ サッポロビール: 「サラサラヘアー」「童顔美人」「オーラ〇」「笑顔◎」
◆ キリンビール: 「小顔、ビックスマイル〇」「甘い顔、スタイル〇」「スーパースマイル〇」
◆ コカ・コーラ: 「輝く笑顔」「神宮イチの笑顔」「喜色満面」「はじける笑顔」「笑顔最強GIRL」
◆ アサヒビール:「輝く笑顔」「神宮イチの笑顔」
性別ステレオタイプの表現(6件、12.0%)
期待される性役割を強調する表現
【具体例】
◆ キリンビール: 「愛嬌モンスター」「おもてなし精神」「天真爛漫」「イケメン」
◆ サッポロビール: 「人懐っこさ〇」
◆ サワー: 「脳筋ギャル」
性的表現(2件、4.0%)
直接的な性的表出を含む表現
【具体例】
◆ コカ・コーラ: 「笑顔最強GIRL」
◆ サワー: 「高速ウインク」
また独特のポージング画像を含めると、性的表現の割合は格段に高まることを付記します。
これらはまるで「在庫リスト」のように売り子を名簿化し、愛称と不適切な評価軸を掲載して消費者に対象を物色させる性接待の一形態を成しています。

このような業態および広告は、まさに球場という公共の場にキャバクラや性産業や「喜び組」を導入したかのような異様な光景であり、若い女性の容姿や接客を売り物とする前時代的な慣行そのものです。球場に性産業のような接待文化を持ち込むことは、健全なスポーツ観戦環境を著しく損なう行為です。
若年女性中心の売り子体制は、単に販売スタッフの一形態を超え、「女性の性を商品価値とする体系的な性商品化」であると断言せざるを得ません。実際に「女性と接する機会を積極的に提供し、それを販売戦略の一環として利用する」というサービス構造は、国際的なジェンダー平等基準に照らしても性差別的かつ時代錯誤なものです。

球場という多様な人々が集う公共空間において、成人男性のみを過剰に優遇し、売り子(若い女性)による接待サービスで酒をもてなすという形態は、性的消費であり、明白な男尊女卑の現れです。これでは女性や子供たちが顧客として平等に扱われず、疎外感を抱く差別的な環境が作り出されています。球場は本来、性別や年齢を問わず誰もが楽しめるエンターテイメント空間であるべきにも関わらず、現状は一部の成人男性のみを特別扱いする不平等な構造となっています。
1-2.女性の自己肯定感を損なう現状の売り子業態
また、女性の「性」を商品化する売り子業態を常態化することは、女性全体の性的自己肯定感を深刻に損なうリスクがあります。容姿や若さを「スペック」として評価・消費される社会環境では、女性は自らの価値を「男性に依拠する外見や性的魅力」に限定して捉えざるを得ず、自己肯定感が著しく低下します。その結果、女性が仕事や社会で自立的に役割を果たす意欲を削ぎ、日本全体に蔓延するジェンダー不平等を一層助長することになります。売り子業態がもたらすこの構造的な弊害は、単なる雇用・広告の問題にとどまらず、すべての女性の人生や社会的地位、ひいては若年層への健全な男女平等イメージに深刻な影響を及ぼす重大な人権課題であると言わざるを得ません。


2. 法的根拠:国内法および国際基準による性差別禁止の明確な規定
2-1. 男女共同参画社会基本法の遵守義務
男女共同参画社会基本法第3条には、「男女の個人としての尊厳が尊重され、性別による差別的取扱いが行われてはならない」旨が明記されており、性別による差別的な雇用慣行を明確に禁止しています。現在、主として若い女性を中心に「売り子」を雇用する慣行はこの規定に明らかに反するものであり、法令遵守の観点からも是正が急務です。
2-2. 男女雇用機会均等法に基づく差別禁止
男女雇用機会均等法では、採用募集、選考、配置、待遇のいかなる段階においても性別による差別的扱いを禁じています。しかしながら、野球場におけるビール販売サービスにおいては売り子の大多数を若い女性にするという慣行が存在し、性差別的な雇用慣行として法律違反に該当することが明白であると思料します。
2-3. 風俗営業法との関係における問題
2023年、北海道日本ハムファイターズは「売り子BAR」というイベントを企画しました。公式SNSからは「超売り子のNo.1決定戦上位の人気売り子たちが試合終了後、Coca-Colaゲートに集結。普段会話できない彼女たちとゆっくりおしゃべりを楽しんでみてはいかがでしょう」(日本ハムファイターズ公式ツイッター2023年7月24日0時01分)との投稿がありましたが、この投稿に対しては「彼女たち」という売り子=若い女性を想起させる言い回しと共に、売り子業態は性商品化を助長するものであると指摘されています。
加えて、このイベントが風俗営業法の規制対象となる可能性が指摘されたため、名称を「ドリンクステーション」と変更しました。しかし、「売り子BAR」という名称やイベント自体が、売り子業態の女性中心の性商品化問題の一端を示していることは明白です。このようなプロモーションは、売り子を単なる飲料販売スタッフとしてではなく、性的魅力を持つ若い女性として顧客に売り込む構造を助長し、ジェンダー平等の観点からも問題視されます。

3. 国際基準と広告基準に照らした問題点
国連女性機関(UN Women)が提唱する「アンステレオタイプアライアンス(Unstereotype Alliance)」に基づく広告審査基準では、性別や年齢に関わるステレオタイプや性の商品化を厳格に排除するため以下の「3つのP」という審査基準をもうけており、その審査基準に照らすと「売り子」という販売形態の問題点が浮き彫りになります。
● Presence(存在・多様性の表現):採用される売り子は、ほぼ若い女性に偏っており、多様な性別や年齢、背景を持つ人々の存在が反映されていません。企業の広告や採用形態において、こうした偏りは多様性尊重の観点から問題視されます。多様で包括的な人々の存在感が欠如していることは、ジェンダー平等の促進に逆行します。
● Perspective(視点・女性の表現や立場):売り子の姿は、女性を性的魅力や若さを強調した商品として扱う視点に基づいています。このように女性を性的な対象やステレオタイプに固定する視点は、性の商品化に該当し、国連女性機関が批判するアンステレオタイプの原則に反します。
● Personality(個性・個人の多様性の尊重):売り子は特定のユニフォームや役割により、個々の個性や能力が軽視されています。外見や性別に基づく役割の固定化は、個々の多様な個性や能力の尊重を欠き、個人の人間性を商品の一部として扱う、ステレオタイプの強化につながります。
以上の点から、売り子という業態はUN Womenの「3つのP」の審査基準において、多様性の欠如、性的ステレオタイプの強化、個性の抑圧という複数の重要な課題を孕んでおり、国際的なジェンダー平等推進の視点から大きな問題があると断言できます。

また球場(球団)公式HPで、売り子を紹介して来場を促すプロモーションは、英国広告基準協議会(ASA)が禁止している「ジェンダーに基づく有害なステレオタイプ広告」にも抵触しており、先進国としての倫理規範を逸脱していますし、日本の国際的なジェンダー平等指標にも悪影響を及ぼしています。
国連女性機関の広告審査基準は「TOOLKIT TO PROMOTE GENDER EQUALITY IN MARKETING & ADVERTISING」に掲載されていますが、その内容から球場という販売現場(タッチポイント)で就労する販売員(売り子)の存在と活動については、ビールのブランド体験を提供するブランド・アクティベーションの一形態、あるいは一種の店舗内広告という概念で解釈できます。
4. 球場等の「売り子」求人広告と職場環境における問題点
4-1. 自己選択バイアス(シグナリング効果)
売り子の求人ページ(WEBページ)では、若い女性がバックパック型タンクを背負いミニスカート姿でビールを売り歩く画像が多用されています。このビジュアルは「理想の候補者像」を強く示すシグナルとなり、男性応募者は無意識に「この仕事は女性向けで自分は歓迎されない」と感じ、応募を控える傾向があります。この結果、男女雇用機会均等法の趣旨に反し、性別による応募機会の偏在が助長されています。

4-2. 人権侵害リスク
売り子業務は客席を巡回しながらの接客を伴うため、売り子が若い女性の場合、成人男性観客から過度な接待要求や性的言動、好意的接触を受けるリスクが高まります。このような職場環境は、従業員の安全と尊厳を脅かすものであり、人権侵害の重大な問題と言わざるを得ません。
実際に、産経新聞が2025年5月23日に「プロ野球西武、球場の「売り子」撮影禁止の背景に「カスハラ」対策 過去に盗撮被害も」と題した記事を配信し、桜美林大学の小林至教授が以下のように指摘しています。
「お客さんの中には、特定の売り子から何杯もビールをおかわりするようなケースを聞いたことがある」「何か問題が発生した時には、企業としてのリスク管理が必ず問われる。(禁止事項などを)明文化し、周囲にアナウンスすることで、コンプライアンスについてこれだけのことをやっているというアピールになり、企業を守ることにもつながる」
上記のような提言もあり、2025年8月からは、東京ドームでも売り子の撮影を全面禁止にしていますが、売り子を性商品化することで生じる人権侵害リスクは現在進行形の問題です。

5. キリングループの企業理念との整合性の欠如
キリングループが掲げる人権方針では、「あらゆる差別の排除と女性をはじめとする社会的少数派の尊重」を掲げています。さらに、多様性推進プランにおいては「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包含)」を核心理念と明記していますが、売り子業態の女性偏重と性商品化はこれらの方針と真っ向から対立しています。
ESG経営の「Social(社会)」面でも「人権尊重」は企業の社会的責任の柱となっていますが、現実の運用では人権侵害的状況を放置しており、企業としての社会的信頼とブランド価値の著しい毀損を招いています。

6. 「売り子」性商品化問題の是正に関する質問
キリングループが「売り子」という業態に直接関与せず、雇用していないことは認識しております。しかしながら、キリングループで生産・販売されるビール製品が、性商品化と性差別が常態化した「売り子」を経由して提供されている現実は、企業の社会的責任及び持続可能なビジネスを目指す上で放置できない問題と考えます。
つきましては、以下について明確なご回答をいただきたく存じます。
【質問事項】
1. 今後、売り子の性商品化問題を是正する予定はありますか?
2. 是正する場合、具体的な時期はいつ頃を想定していますか?
3. どのような形で是正措置を講じる予定ですか?
4. 球場での飲食提供において、女性や子供を成人男性と平等に扱う意思はありますか?
5. 関係事業者に対して、ジェンダー平等な雇用・広告を求める方針を示す予定はありますか?
6. 今後、求人広告のビジュアル表現を多様な性別・年齢層が応募しやすい内容に改定する予定はありますか?
7. 従業員の安全確保のために、客席巡回時のハラスメント防止策(監視カメラ設置やコールセンター設置等)を導入しているのでしょうか?
【具体的改善要求】
◆ 協力企業・委託先へのジェンダー平等・ハラスメント防止に関する方針明確化と遵守徹底の要求
◆ 「売り子」という業態における多様な人材の採用推進や性商品化表現の排除を含む広告ガイドライン策定支援
◆ これらの改善活動に関する進捗状況の定期的な公表および第三者機関による評価の導入
ご多忙のところ恐れ入りますが、上記の要求を確認のうえ、2025年10月24日(金)までにご回答賜りますようお願い申し上げます。
なお、キリングループのご対応内容は「公益財団法人21世紀職業財団」と共有し、社会全体のジェンダー平等推進での重要な事例として活用させていただく予定です。
先進国企業として、また多様性を重視する企業として、この重大な人権問題に対する明確かつ積極的なご回答を心よりお待ちしております。
ステークホルダー 消費者A
◆キリンビール様からのご返答
JaCER(ビジネスと人権対話救済機構)経由での通報としました。
JaCERはキリングループが2023年2月から正会員として参加している第三者窓口です。匿名での通報も可能です。
------------------------------------------------------------------
お世話になっております。
キリンホールディングス株式会社ビジネスと人権担当です。
このたびは、JaCERの通報フォームより主要野球場における「売り子」について、ご意見をいただき、誠にありがとうございます。
お時間をいただきましたが、頂戴しましたご意見に関しまして、以下の内容にて回答させていただきます。
今回いただいたご指摘について、当社の事業におけるバリューチェーン内における事案として、重要な示唆であると受け止めています。
当社はご認識の通り、「人権の尊重」を全ての事業活動の土台に位置付け、グループ人権方針を掲げ、ハラスメントや差別等を容認していません。
また、バリューチェーン全般にわたり、脆弱な立場にいるグループが人権への負の影響を受ける可能性が高いことも認識し、脆弱性の高い人たち、女性、子ども、障害者、少数民族、先住民族、言語的少数者等の社会的少数派(マイノリティ)の人権には、特に配慮していると明記しております。
この人権方針に則り、各ステークホルダーとの対話・協議等も含めて、当社にて実行でき得る取組を検討・推進してまいります。
各ステークホルダーとの対話・協議を通じ、ご指摘の人権上のリスクが高いと判断できる場合は、各ステークホルダーと連携し、改善に向けた取り組みを検討・実施してまいります。
当社は、今後もあらゆるステークホルダーの人権を尊重し、ビジネスパートナーと共に安心・安全な労働環境を築けるよう取り組みを推進していきます。
今後とも何卒ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:
キリンホールディングス株式会社 ビジネスと人権担当
〒164-0001 東京都中野区中野四丁目10番2号
中野セントラルパークサウス
:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:
ですって。
私の通報に対して、キリンビール様からの初期回答が形式的、抽象的であり実質的に対応を欠いていると判断しましたので、サイトで言及されている異議申し立て(再審査)を検討していると伝え、その具体的な提出方法や提出期限、追加支援等、その他もろもろをJaCERにお尋ねしたのですが…
◆JaCERからの異議申し立についてのご返答
一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)からのご返答①
ご連絡いただき、ありがとうございます。
返信が遅くなりまして、申し訳ありません。
貴殿よりご連絡いただいたことを、キリンホールディングスへ申し伝えます。
先般ご案内させていただいておりますが、当機構では会員企業と申立者側が直接対話をしていただく形になっておりますので、同社の回答内容についてご異議等ある場合、直接同社にご連絡いただければ幸いです。
何卒ご理解のほど、どうぞよろしくお願い致します。
一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-1-3 大手センタービル
一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)からの、異議申し立についてのご返答②
お世話になっております。
こちら、キリンホールディングスは貴殿からのご連絡内容を伝えさせていただきました。
返信さしあげるのが遅くなりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
さて、異議申立て手続きについてお尋ねいただいていますが、現状、当機構の仕組みとして、異議申立てに該当する手続がありません。(ステータスがクローズとなった事案について、クローズ後の事情変更などにより新規事案として受け付けるというような場合はあります。)
原則として、通報者と会員企業の両者間で対話等を実施していただくことになっておりますので、キリンホールディングス側の回答や対応についてご意見等がある場合は、直接同社へご連絡いただく必要があります。
通報を受けた会員企業からは概ね1か月、3か月の間隔でレポートを受領して進捗を確認し、当機構としてクローズするか否か判断する仕組みとなっていますところ、本件ではまだキリンホールディングスから初回の報告も受けていない段階ですので、まだ継続中というステータスです。
JaCERとしても必要に応じて会員企業に対応の要請や助言はいたしますが、対話救済を促すという仕組み上、最終的にどのような対応をするかについては会員企業の判断になります。
ご了承いただきますようお願いいたします。
一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-1-3 大手センタービル
https://jacer-bhr.org/
------------------------------------------------------------------
とのことです。
JaCER経由で人権救済をお求めの方の参考になりましたら幸いです。
キリンホールディングス様の積極的かつ能動的な是正を期待しております。
長々とお読みいただきありがとうございました。
(文責:有馬珠子)
Arima Tamako's Page ▶HOME
🌸電車の車内吊りセクハラ広告に意見を言い続けると、広告は変わるのか?
