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いつもの香りに心を、耳を澄ませて。

ペパーミントの壁紙が、今日も部屋を優しく照らす。

窓を開ければ、ラムネ色の空が音楽を奏でる。
しゅわしゅわ~のリズムに誘われて、蝉がこの地に舞い降りる。

レモンティーに、牛乳をそっと垂らす……。
甘酸っぱい香りにミルクが溶け込み、心を描く。

レモンの皮と心の軌跡を見つめ、あの頃の想いを重ねる……。

びーびび。びーびび。

蝉の声をかき消すようにして、ツバメが私の心を運ぶ。

夏虫色の草原を何も考えず、ただ、一心に駆け抜ける。
後ろは振り向かない。ただ、1点を見つめて。

緑のグラデーションを越えて、瑠璃色の海を目指す。

入道雲を旋回し、羽をしっかり伸ばして。
赤レンガの屋根を見つめる。
赤にレモンの香りが合わさって、カスティリアン・レッドに輝く。

「ごめんなさい」と伝えたくて……。
しかし、あなたはここにはいない。

いつしかツバメは、漆黒の空と純白のすすきに変化する。

白檀(びゃくだん)の甘い香りを携えて。
中秋の金色に、私は手を伸ばす。
月並みの幸せを噛みしめて。

「ありがとう」と伝えたくて……。
しかし、あなたはここにはいない。

月並みの筆で心を綴る。届かないと知りつつも。
純白に墨の香りを乗せて、ゆらゆらと。
あなたが教えてくれた言の葉を声に出して、ゆらゆらと。

しかし、言の葉は白無垢の季節に覆われる。
心の雫も凍りつき、声も香りも届かない。

季節は前と後ろを繰り返す……。
白無垢の砂粒は、やがてリリー・ホワイトの霧となって。

それでも大地は諦めない。
あなたを望む新緑は、ふわふわと新たな芽を覗かせる。

桜餅を頬張りながら、私はあなたの香りを探す。
失った年月の香りを織り交ぜて、ふわふわを噛みしめる。

見上げた空は暁に。暁の空は東雲に。

すーぅー。ふーぅー。
すーぅー。ふーぅー。

香りを届ける呼吸に、あなたを感じて。


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