二人で見上げた夜空に、祈りを込めて。
ポンポロぽー。ポンポロぽー。
勿忘草(わすれなぐさ)の空に、積乱雲が広がっていく。
河川敷の若葉は、夏の日差しに誘われて。
白緑(びゃくろく)と緑青(ろくしょう)の縞模様を描き出す。
一口飲んだラムネを空に重ねて、後悔も重ねる。
地平線に君の手紙を携えて、私は若葉に腰掛ける。
「最後の一文が分かりません。」
私は地平線を見つめながら、あなたに呼び掛ける。
後悔をしたためた言の葉と、これまで過ごした年月と。
汗の匂いと白ユリの香りの狭間で、心臓がゆらゆらと音を奏でる。
「あなたはいつも自分のことばかり。」
「あなたが好きなものを、私も好きになりたいの。」
君と出会った夏色と、君を奪った夏色に。
好きと嫌いを織り交ぜて、昔の言葉も織り交ぜて。
ポンポロぽー。ポンポロぽー。
「苦手だったトマトも、ちょっとは好きになりました。だから……。」
「もう遅いの。終わったの。」
「君を大切にしますから。もう一度……。」
「違うの。私の問題だから。」
地平線を見つめる瞳は、漆黒から茜色へと変化する。
夏の日差しに照らされて、レモンの雫が頬を伝う。
ふたつの心は溶け合って、空を黄昏時へと染めていく。
「あの時、なぜ私を救ったのですか。」
「あなたに生きてほしいから。」
「君に酷いことをしました。」
「大丈夫。あなたは悪くない。」
「今すぐ、君の側に行きたいです。」
「ダメ。それが、あなたの罪だから。」
「私には生きる資格はありません。」
「大丈夫。生きる資格はいらないよ。」
黄昏の空を、白檀(びゃくだん)の香りが包み込む。
一枚の平面は、鮮やかな球を帯びていく。
しわくちゃの手紙を折り込んでいく。
しわの軌跡を信じて、山と谷をかき分けて。
君が教えてくれた鶴を、丁寧に……丁寧に……。
君の呼吸を織り込んで。
君の香りを織り込んで。
君の指先に、私の指先を重ねて折っていく……。
涅色(くりいろ)の空に折り鶴が姿を現す。
白檀の香りも天へと昇る。
「さようならは、言わないよ。」
どこかで聞いた泣き声と共に、白檀の香りが弾け飛ぶ。
砂金の粒が放物線の軌跡を描き、ゆっくりと滴る……。
朝露のような瑞々しい光に照らされて、ゆっくりと心に染み渡る……。
奇跡を信じた指先に。
祈りを込めた掌に。
しわを折った年月が、私のしわに刻まれる。
ふたつの手を合わせ、目を閉じる……。
ポンポロぽー。ポンポロぽー。
フェニックスの灯火に、心の雫を捧げる。
