凱旋門より、ねずみ🐀🍳にテンションが持ってかれた日。16日間のヨーロッパ旅行記 Day 12
朝はSquare Julia Bartetで開かれている蚤の市へ向かった。

この旅行中、蚤の市にはほかにも何度か足を運んでいたが、ここの価格は群を抜いて高かった。
中古品にこの値段を出すのかという気持ちは正直あった。
ただ、よく見て回ると話は変わってくる。
ブランド品がさりげなく紛れていて、目を凝らして探す楽しさがあった。
今日もお昼はスーパーで調達することにした。
蚤の市を見終えて近くのスーパーへ向かっていると、途中にお肉屋さんがあった。せっかくだからと立ち寄って買ってみたのだが、これが異常においしかった。
店を出るときに「ジャパニーズ?」と聞かれ、そうだと答えた。なんだか嬉しかった。
その後スーパーに入ると、さっきのお肉屋さんで見かけた店員さんにばったり会った。「食事を楽しんでね」と声をかけてくれた。
ちょっとした一言だが、旅先でこういう温かさに触れるとほっとする。

スーパーではトマトのコーナーに釘付けになった。
トマトが大好きなので、種類の豊富さに思わずテンションが上がった。
買ったものを広げてご飯を食べていると、さっきのお肉屋さんの店員さんが戻ってきた。

手にはピスタチオの焼き菓子。差し入れてくれた。
しかも、お肉を食べた後に手を拭けるようにと紙ナプキンまで持ってきてくれた。
言葉はほとんど通じないのに、こういう気遣いがさらっとできる。なんだかじんとした。
そういえばフランスに来てから、日本人だとわかると特別に優しくしてもらえる場面が何度かあった気がしていた。
気になって調べてみると、「ジャポニスム」と呼ばれる日本文化ブームがあり、ヨーロッパの中でフランスが最も日本のことを好きな国らしい。
なるほど、と腑に落ちた。

この日は素晴らしいほどの晴天だった。気持ちのいい空気にエネルギーをチャージしてもらいながら、凱旋門へ向かって歩いた。
シャンゼリゼ通りを歩きながら、小さく「オー・シャンゼリゼ」と口ずさんでいた。我ながら恥ずかしいくらいはまっていたと思うが、あの記憶はずっと残るだろう。

シャンゼリゼ通りは、本当に驚くほど高級店しかない。
有名ブランドの路面店がこれでもかと並んでいて、歩くだけで圧倒される。
通りを歩いていると、ルイ・ヴィトンの巨大な箱のようなオブジェを発見して思わず二度見してしまった。
さすがパリという光景だった。
凱旋門に着いて初めて知ったのだが、てっぺんまで登ることができるらしい。
ただ有料で、間近で見られれば十分だと思っていたので登るのはパス。地下道をくぐって、凱旋門の真下の中心エリアへと向かった。

凱旋門はナポレオンが1806年に建設を命じたもので、アウステルリッツの戦いでの勝利を記念して、フランスのために戦った兵士たちを讃えるために造られた。
完成したのは1836年と、実に30年もかかっている。ナポレオン本人は完成を見ることなく世を去った。
アーチの下には第一次世界大戦の無名戦士の墓が置かれており、今も献花が絶えない。
高さ50メートル、幅45メートル。


目の前に立つと、その大きさに改めて圧倒された。教科書で見ていたあの凱旋門が、今自分の目の前にある。
また改めて、フランスに来たんだなあと実感した。

近くにはオランダで見たような運河が広がっていた。川のある街が好きな自分にとって、水辺のある風景はそれだけで気持ちが落ち着く。
パリにもこういう顔があるのかと、少し意外で嬉しかった。

その後、ノートルダム大聖堂へ向かった。
入口には大行列ができていたが、列の進みが早くて待ち時間は15分ほど。長さの割に全然苦にならなかった。しかも入場は無料だ。
外観を見上げると、建物全体がパイプオルガンのような形をしている。縦に伸びる無数の柱や尖塔が整然と並んでいて、音が鳴り出しそうなほど均整が取れている。

ノートルダムはゴシック建築の代表例で、その特徴がいたるところに現れている。
壁の外側に張り出した「フライング・バットレス」と呼ばれる控え壁が、建物を外から支えている。
あの構造のおかげで壁を薄くでき、大きなステンドグラスの窓を設けることが可能になった。内側から光を取り込むための、計算された仕組みだ。
尖頭アーチも随所に使われていて、縦への視線の抜けが気持ちいい。

さらに近づいて見ると、建物の表面に無数の像が装飾として取り付けられている。聖人、天使、怪物——ひとつひとつが細かく彫り込まれていて、これを1体ずつ作ったと思うと気が遠くなる。

いったい何人の職人が、何年かけて仕上げたのか。
そう考えながら眺めると、石の一面一面がまるで違って見えてくる。こういう発見が自然と目に入ってくる。
ただ、正直に言う。「すごい」とは思った。思ったのだが——「まあ、こんなものか」とも思っている自分がいた。
ルーブル、エッフェル塔、ボンマルシェ、凱旋門。
これだけのものを立て続けに見てきた目には、感動の基準値がすっかりおかしくなっている。
本来なら圧倒されるはずの場所で、どこか冷静な自分がいる。
旅も終盤に差し掛かって、感動する感覚がすっかり麻痺してしまったなと思った。
いろいろ見て疲れたので、大聖堂を出て目の前の植栽のあたりに腰を下ろして休憩していた。
するとねずみちゃんがひょっこり顔を出してきた。
思わず笑ってしまった。「レミーのおいしいレストラン」の世界観が、そのままここにある。
テンションが上がった。
衛生環境的にはよくないのはわかっているけれど、そんなことより嬉しかった。パリでねずみちゃんに会えるなんて、これも旅の醍醐味だと思った。
この日の夜は夜行バスでオランダへ戻る。
バスの時間までにスーパーへ寄って食料を調達した。

面白かったのが、出口のシステム。
何かを購入しないとゲートが開かない仕組みになっていて、手ぶらでは出られない。日本のスーパーでは当たり前のように自由に出入りできるので、最初は戸惑ったが、万引き対策としてよくできていると思った。
そこで目に留まったのが、鯖のオイル漬けの缶詰。
せっかくだからとお土産に買って帰ったのだが、後で食べてみたら結構おいしかった。
パンに挟んで食べると特によくて、シンプルなのにちゃんとうまい。スーパーで買った缶詰がお土産として正解だったとは。

夜行バスに乗り込むと、2階建てで天井がガラス張りになっていた。横になりながら夜空が見える。
パリの街を抜けて、どこかの暗い夜道を走りながら、頭上にぼんやりと星が見えた。
おやすみなさい、パリ。
翌日、ついに現地民のような1日を過ごすことになる。(Day 13へ続く)
