身についてしまったスローガン
音楽業界に身を置かせてもらった時代。
そこには、いくつものスローガンがありました。
「 業界の常識はavexの非常識 」
今振り返れば、この言葉たちが背中を押し、怒涛の時代を猛進できたのだと思います。
しかし同時に、元を正せば「業界を知らなすぎた」ということでもありました。
当時、音楽関係者が身近に誰もいない環境の中、唯一の「業界人」はTK。
そのため、TKの言うことは“絶対”であり、しかもそれは「業界の常識内」だと信じ込んでいました。
けれど実際には、TKが言っていたのは「業界の非常識」だったのです。
この原体験が起点にあるのだと思う。
あの時代、音楽関係者がいれば、TKの言うことに「待った」をかけていたかも知れない。
「それは、ちょっと難しいです。なぜならばこんな規制・契約・通例があるので」みたいに!
しかし、そんな基本的なことなど知らない私たちにとっては
TKのいうことは「絶対」、TKのいうことは「業界の常識内」と思っていたので疑う余地というか?そんな気にもならない。だって知らないから!
そのことを強烈に突きつけられたエピソードがあります。
TKが最初にプロデュースを手掛けたのがTRF。私はその初代マネージャーの1人でした。レコーディングも順調に進み、雑誌のインタビュー撮影ではTKもメンバーと並び、ヨコハマでのデビューイベントも着々と準備が進んでいました。
そんな時に、誰かが口にしたのです。
「TKのレコード会社や事務所に確認した?」
正直、何を言っているのか分かりませんでした。
だってTKの指示で動いているのだから問題はないはずとそう思い込んでいたのです。
ところが調べてみると、TKはソニー・ミュージック内のエピックレコードと契約をしていたのですが、それが「専属契約」というものです。
それは、特定の相手としか契約できず、他の事業者とは同様の契約を結べないというもの。つまり、進めていたことはすべて契約違反。
笑えるでしょう?
このままでは大問題になる。けれど、常識を知らない私たちに回避策など浮かぶはずもない。
結局、TKの個人事務所の社長に相談することにしました。
「サウナ行きません?」
サウナで現場の状況を報告すると、社長は呆れながらも打開策を提案してくれました。
「えっ、お前たち、そんなこともしてなかったのか?」
「すみません……」
結果的に、この出来事を機に「音楽プロデューサー」というポジションが生まれることになります。
当時、海外ではすでに存在していた役割ですが、日本ではまだ確立されていなかった。
「それを使おう」
そうして道が開けたのです。
一時は全てがダメになるのでは、という不安と失望が一気に解決した瞬間でした。
これは多くの荒波の中の一つのエピソードにすぎません。
でも、こうした経験を通じて「非常識を常識に変える」という感覚が身についてしまったのだと思います。
音楽活動には「これは正解」「これは不正解」といったものはありません。
何かを叶えるには、そのための手段を見つけること。
常識にとらわれず、一歩越えてみれば、それが新しい常識になる。
そして夢は現実になるのです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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今後も、感じたことや考えを少しずつ呟いていきたいと思います。
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