ひとつの楽曲を、7人それぞれの歌詞で歌わせてみた。
サブスクが定着してきた頃、ある作家がこんなことを言っていた。
「もう、売れると思うアーティストにしか楽曲を提供できない。」
サブスクの影響で作家の収入が激減し、音楽が“数字”で選ばれるようになった時代。その言葉を聞いて、「作る側もこんなに厳しいのか」と心のどこかで呟いた。
ちょうどその頃、私は大手レーベルが開催する女性限定の新人オーディションに関わっていた。11歳から25歳までが対象で、審査はアカペラ15秒のみ。
全国の主要都市で開催され、歌唱力よりも“声そのもの”を聴くという試みだった。
しかし、プロデューサーに尋ねると「いい子はなかなかいないですね」
「20歳以上は難しいですね」という言葉が返ってきた。
その瞬間、心の中で小さく叫んだ
「それなら最初から20歳までって書いておけばいいのに。」
その反動だったのかもしれない。
私は“20代を選ぶ”という逆張りを決めたのです。
20代を過ぎると、本人たちも「遅咲き」という意識を少なからず持っている。だからこそ、最後の挑戦としてオーディションを受けにきているのかもしれない。と勝手に思い込み、せめて、その思いを“形”にしてあげたい。と
そうして私は、6,000人を超える応募者の中から、20歳以上のシンガーを約10名選び出した。もう一度、彼女たちにスタジオへ来てもらい、歌ってもらうことにしたのだ。いわば「裏・二次審査」を行なって見たのです。
10人の歌唱を聴いたあと、最終的に7人のシンガーを選出した。
その7人も、なんとなく「ラッキーセブン」を意識して(笑)。
その後、私は7人にこの企画の趣旨を説明。
ひとつの楽曲を、7人それぞれの歌詞で歌ってもらいたい。
きっかけは、あの作家の言葉だった。
「もう、売れると思うアーティストにしか楽曲を提供できない。」
その言葉を逆手に取り、個より群で挑戦したらどうなるか?
普通、楽曲は一人のシンガーが歌うものだ。でもそれでは、楽曲の広がりも一人の力に委ねられてしまう。ならば、同じ曲を、7人がそれぞれの人生観や感情で歌ったらどうなるだろう?
共通するのはサビだけ。まるでカバー曲のようでいて、まったく新しい試み。期間は1年間。7人の声と7通りの言葉が、ひとつの楽曲の中で共鳴していく。そんなプロジェクトを始めることにしたのです。
では、歌詞はどうするか。
作詞家に頼んで7つ書いてもらうこともできたし、本人たちに書かせることもできたかもしれない。しかし、私はそれをやめた。
音楽経験の浅い子たちに歌詞を書かせても、完成度はどうしても厳しいと思ったのです。
一方で、外部の作家が書いた歌詞を、果たして彼女たちは自分ごととして歌い上げられるだろうかという不安もあり、私は別の方法を選ぶことにしたのです。
私は、単に歌詞を書いてもらうのではなく、彼女たち自身の思いを言葉にすることにしたのです。「音楽を諦めきれなかった思い」「自分にとって音楽とは何か」これまでの経験や想いを、作家さんに直接インタビューしてもらい、歌詞として形にしていったのです。
つまり、このプロジェクトの歌詞は、7人それぞれの人生や感情が反映された「本人たちの物語」なのです。
そして、楽曲のタイトルも決めていた。
「散らない桜」
桜の葉は散ってしまうけれど、根っこがあればまた同じ場所で咲き誇ることができる。そんな意味を込めて、7人のシンガーたちの思いを、このタイトルに決めたのです。
楽曲が決まり、7つの歌詞も完成し、
そして次は、PVの制作です。予算もかけられないので出来ることと考え、
PVは3本制作しました。
1、彼女たちから思い出の写真を集めて編集したもの
2、オーディションからレコーディング風景までを追ったメイキング映像
3、ハウススタジオで制作したオリジナル映像
どの映像も、7人の個性や成長を感じられるもと考えた上でのものでした。
そして、次の挑戦は路上ライヴ100本ノック。
7人全員で合計100回の路上ライヴを達成することを目標にした。
一人で行けば1回、2名で組めば2回、全員で力を合わせながら挑戦させたのです。
結果、見事に目標をクリア。そして迎えたライヴ本番。250人の観客を前に、7人は歌唱することが出来たのです。
次に挑戦したのは、楽曲も歌詞も同じままで、7人全員が歌うパターンだ。
PVは同じ素材を使い、本人は出演せずに制作した。
夏が近づく中で、曲はハッチ切れるアップテンポ。
さらに、耳に残るフレーズを繰り返すリフレイン構造にすることで、聴く人の心に自然と残るように工夫しました。
タイトルは 「熱帯チープトリック」。
サブタイトルは7人それぞれに異なるものをつけて見ました。
そして、路上ライヴ100本ノックも再開。
最終的に、開催回数の上位4名だけでライヴを開催することにしたのです。
こうして、1年間にわたるプロジェクトは幕を閉じました。
人それぞれ事情は異なるし、この1年で経験したことによって、音楽への向き合い方も変化していきます。また、今後続けていけるかどうかという実感も、この経験を通じて得られたと思います。
このプロジェクトを通して改めて思ったのは、音楽は「やらされるもの」ではなく、自分が本気でやりたいと思うことが何より大切だということです。
音楽活動は大変で、技術だけでなく、気持ちの強さも必要になります。
そして、何よりも根気よく続けることが最も大切なのです。
結果はすぐに出るわけではないのです。
しかし、継続するからこそ、チャンスは訪れるのです。
もちろん、もしあのプロジェクトが今の環境で行われていたら、
別の結果が生まれていたかもしれなませんが、
しかし、それは誰にも分からないこと。だからこそ、
目の前の活動に全力を注ぐしかないのです、
しかも、闇雲ではなく、目的に向けて計画的に目標をクリアしていくことが必要なのです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
些細なことでもコメントをいただけると嬉しいです。
今後も感じたことや考えを少しずつ呟いていきたいと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。
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