犬の神様が地主だった
ここらへんは「犬神」という苗字が多い。
いつもとは違う帰り道を歩いたら、犬神の表札をつけた家が5軒もあった。
なんでこんなに多いのか疑問に思った僕は、母に聞いてみた。
「なんでここらへんって犬神って苗字が多いの?」
「それはね、犬の神様が大地主だからだよ」
「なにそれ?」
「昔おばあちゃんから聞いたのよ。あそこの家には犬の神様がいるらしいの」
「犬の神様ってなに?」
「簡単に言えば犬の代表よ」
「犬の代表ってなに?でっかくて強い犬のこと?」
「ううん。おばあちゃんによるとチワワらしいのよ」
「チワワ?」
「チワワって実は強いのよ」
「強いチワワ⋯⋯」
犬神という名前は強いチワワがいる家。
そして大地主である。
チワワがこの町を牛耳っていると考えたらフフッと笑みがこぼれた。
翌日。
久しぶりに晴れたので、僕は公園まで歩いて行くことにした。
住宅街を歩いていると、とある家の窓際、カーテンの向こう側から犬に吠えられていることに気付いた。
ワンワンワン
表札には犬神と書いてある。
ワンワンワン
どうやら吠えているのはチワワだ。
ワンワンワン
私は大地主に怒鳴られている。
ワンワンワン
なんだか文句を言われているみたいだ。
犬の神様のチワワ様。
この町の大地主のチワワ様。
そんなチワワ様が守ってくれているのこの町は、今日も穏やかだった。
