紙の魚(1815文字)
紙の魚――、
だなんてちょっといい感じのしないでもないタイトルなんだけど、
虫の話です。
虫の話が悪いわけじゃないんだけど――素敵な虫の話は大歓迎――、
今回こちらで記させていただきますのは、
ちょい見た目が気持ち悪い種類の虫の話なのであります💦
なので、ご飯前だったりしたら無視してくださいね、虫だけに(ウヒャー)。
――今朝、バスルームの扉を開けましたところ、
床に、埃クズみたいなものが見えまして、
ティッシュで摘まみ取ったのであります。
素手で――、
じゃなくてティッシュを介在させました我が英断に、心より感謝いたしましたのは、
摘まんだそれをマジマジと確認させていただいたときでありました!
体長1センチ弱。
淡い銀色。
長い触覚。
たくさんの細い足。
海老みたいなシマシマ。
オバQの毛みたいな3本の尻尾――。

「うぎゃあ!」
『どした!?』と妻が飛んできましたね。
「Gのアカチャンっ!」
と、妻に、
ティッシュの中身を見せました。
――と、
ムズ、ムズズ……。
う、動くじゃあありませんかぁヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ!
い、生きてたのかあああヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ!
ティッシュを丸めて、
さらにそれを別のティッシュでくるみ、
床に落として、
スリッパの底で何度も何度も強く踏みつけましたヽ(;゚;Д;゚;; )ジョウブツセエヤ!
で、妻がビニールに入れて、口をキュッとしっかり閉じてゴミ箱に――。
ふぃー。
僕らはGが超苦手なのであります。
言うと驚かれるのですが、妻は綺麗好きで、この家にGが出たことはただの1度もありません。
なのに……、
出たか、ついに出たか……( ;∀;)ソノヒガキタカ
僕らは、恐怖と絶望の底に叩き落とされたのでありました💦
――それにしても、
なぜ浴室なんかにGが……?
少し落ち着いてから、
ググってみたのでありました。
怖かったけれど、
G-babyについて。
――と!
『じ、Gのアカチャン……ではない……のかな?』
画面を覗き込みながら妻が言いました。
確かに……。
G-babyのおしりは、
牛の角みたいな、2本の硬そうな尻尾を携えておるようなのでありました。
「オバQの毛ではないな……」と僕も頷きました。「ってことは誰がオバQなんだ?」
謎は深まるばかりでありました。
そのあと僕は、トイレで、
モーニングルーティーンに勤しんでいたのでございますが――、
『トントン!』
と口頭ノックを響かせながら妻が、扉を開け、
タブレットを突き出しました。
『いたよオバQ!』
――見ると、
おお!
これだ!
岩場のフナムシを小さくしたみたいなこの子こそがオバQで間違いない!
【紙魚】。
と、そのような名前が付けられているようでありました。
「紙魚、と書いて、しみ、と読むのか――」
『しみ』と妻。
「しみ」と僕。
しみは、Gではなく、紙を食べて生きる虫で、毒はなく、刺したりも噛んだりもしないようでありました。
『湿気を好む、ってあるね』
「だから風呂場に出たのか」
『あたし、昨日、扉の枠のとこ、掃除したんだ。水で洗い流して……』
「そのとき、住み処から流れ出ちゃったのかな?」
『だから死にかけてたんじゃない?』
弱い虫――、と書いてありました。湿気を好むくせに、わずかな水にもたやすく溺れて死んでしまうと。
「し、しみちゃん……」
本や、掛け軸などの紙を食べて、ひっそり過ごすのだそうです。
『悪い虫じゃなかったんだね。ただ見た目が気持ち悪いからってそれだけで嫌われてきた虫なんだね……』
「思えば、透明に近い銀色で、魚の雰囲気を醸していなくもなかったな……。見ようによってはかわいくだって見えなくもないこともないこともないかも……」
『フナムシみたいに素早く逃げるって書いてあるけど……、あひろのティッシュに摘ままれちゃうだなんて、めちゃくちゃ弱ってたんだね……』
ああ。G-babyだとばかり思って、あんなに何度も何度も踏みつけてしまった……。
ごめんよ、しみちゃん。
――でもさ、我が家が海辺の岩場みたいに、フナムシルックのしみちゃんにわさわさとされちゃったら……、
『そ、それはちょっと――、あれだね……』
「ん。成仏してくれ、な、しみちゃん」
てな感じで我々は、しみじみとした朝を過ごしたのでありました。
みなさんのお家に、オバQが現れましたら、それは、紙魚(しみ)ちゃんですからね、G-babyじゃないですからね。
慌てず、騒がず、何度も踏みつけず、淡々と、慈しみをもって駆除してさしあげてくださいませ。
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