【単著感想】か「」く「」し「」ご「」と「:住野よる|心の動きが見えたって、人はすれ違う。それでも、分かり合いたいと思ってしまう。
📘 書籍紹介
タイトル:
か「」く「」し「」ご「」と「
著者:
住野よる
カテゴリ:
青春、恋愛
出版社:
新潮社
出版時期:
2020.10.28
読了日:
2025.7.18
読書形態:
Kindle Unlimited
書影:
あらすじ(ネタバレなし)
高校を舞台に、感情や思考を“視る”異能を持った4人の学生たちの物語。
それぞれが自分の力に悩み、他者との関係に揺れながら、友情や恋、進路に向き合っていく。
“能力”があっても楽になるわけではなく、逆に深読みして空回りしてしまう――そんな心の揺れを丁寧に描いた青春群像劇。
📕感想と考察
デビュー10周年を迎えた住野よる先生。
後期の住野作品に比べると、やや青臭さが目立つが、それも本作の魅力の一部。
終盤の語りにある一文が、まさに本作全体のテーマを象徴している。
「例えば全員に私みたいな能力があればそんなすれ違いはなくなるのだろうかと考えたけど、余計に深読みが効きあたふたする自分達しか思い浮かばなかった。」
“見える力”によって、他人を知ることはできても、心が楽になるとは限らない。
むしろ、見えすぎることでグルグル悩む若者たちの姿がリアルに描かれている。
🧩タイトル構造の妙
『かくしごと』というタイトルの間に挟まれた「」は、各章で異なる能力を表している。一見読みにくいが、内容とのリンクが秀逸で、意味がわかったときに納得感がある。
この仕掛け自体が、読後の満足度を高めてくれる要素のひとつ。
あとは当然「隠し事」の意味ではあるんだけど、これは単に能力だったり、例えば誰が誰を好きで、どういう行動原理で振る舞っているのかという動機だったり、あるいは最終盤で語られるけど、これはみんなそれぞれのポジションでの「各仕事」だったり、あるいは深読みしすぎかもしれないけど著者の「書く仕事」を通じて読者にそれを届ける、という「各仕事」だったりするのかもしれない。これってもしかして住野先生の「隠し事」でした?
👥印象に残ったキャラクター
パラ
同級生の1人に、いつも訳のわからないことを行っているから、「パッパラパー→パラ」とあだ名をつけられた女子。周囲の拍動が視える力を持ち、場を和ませたりコントロールするために意図的に“道化”として立ち回るが、内心では葛藤も抱えている。
「ホントの自分はもっと打算的で、これもやろうと思ってやってるだけで、だから本当の自分はみんなが思っているような自分じゃない」と語る彼女に、同じくヅカ(男子だけど、宝塚に出られそうなくらい目鼻立ちがバッチリだから、ヅカ)が返す。
「んなの、皆、そうじゃね?」
「なりたいって思った自分が、そうなら、それはパラがそう思ってるってことだろ。」
互いの弱さを肯定し合える関係に、じんわり温かさを感じた。
❤️🩹世界観とリアリティ
みんな平たくいうと「他人の心の機微をキャッチする能力が人より高い」というだけ。発言系は感情がトランプのスートとして見えたり、心拍のペースが見えたり、誰が誰を好きかが矢印で見えたり、感情の動きが線の回転として見えたり色々なんだけど、能力が違うから特別何か違うかっていうとそうじゃない。進路や友情、恋愛などの悩みが中心。
だからこそ、心情のリアリティが際立ち、感情移入しやすい。
📚他作品との比較
『告白撃』『青くて痛くて脆い』などに比べると、若干の読みにくさはある。
だがそれは、登場人物の感情が整理されていない“思春期の混沌”を反映した文体のせい。(もしかしたらデビュー4作目という発展途上の過程の作品、ということもあrかもしれないけど)
構成力というより感受性の描写に重きを置いており、それが独特の読み応えになっている。これを大人になっても保持していられる感受性、瑞々しく出力できる再現性ってヤバくない?
☀️読後に残るテーマ
「例えば全員に私みたいな能力があればそんなすれ違いはなくなるのだろうかと考えたけど、
余計に深読みが効きあたふたする自分達しか思い浮かばなかった。」
“異能”というギミックを通して、人の見えない部分を想像し、理解しようとする姿勢の大切さが浮かび上がる。
「みんな違うようで、同じようなことで悩んでいる」――このメッセージが、しっかり届いてくる。
👤共感ポイント
内向的だった学生時代の自分を、登場人物の1人の京に重ねて読んだ。
あの頃は、人と話すだけでへどもどしたり、それを隠そうとつっけんどんにしたり、いちいち反省していたな……と懐かしく思い出した。
今は少しずつ“失敗しても大丈夫”と思えるようになってきたことに、自分の変化も感じた。
💡こんな人におすすめ
中高生〜大学生など、感受性が爆発している時期にいる方
過去の自分を思い出したい大人
「思春期の心理描写」に惹かれる人
住野よる作品が好きな方
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