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【単著感想】この夏の星を見る:辻村深月【人生百冊】|好きを諦めない人のそばに漂う読後感。

「好き」を手放さず、大人になっていく──
そんなまっすぐで、まぶしくて、少し切ない物語。

辻村深月『この夏の星を見る』は、
コロナ禍の高校生活を背景に、分断と再会、迷いと希望が交差する青春群像です。

映画も公開中の今、この物語がまた違った響きをもって届く気がしています。

🌌 書籍紹介

タイトル:

この夏の星を見る

著者:

辻村深月

カテゴリ:

青春小説

出版社:

KADOKAWA

出版時期:

2023.6.30

読了日:

2023.10.26(Kindle)
2025.7.8(紙での再読)

読書形態:

Kindleと紙の本両方

書影:



あらすじ(ネタバレなし):

  • コロナ真っ只中、いろんな活動が制限される中、茨城県、東京都、そして五島列島の学生がそれぞれの天文部の指導者と繋がり、その活動を通じて交流を深めていく青春小説。

  • たくさん本を読んできた中で、とりわけ好きな本というのがあって、私にとってこの本は間違いなくそう。「人生百冊」と自分で名づけた、死ぬ時に棺桶に入れて一緒に焼いて欲しいくらいの本です。仮に十冊に絞ったとしてもランクインすると思います。

  • どのくらい好きかというと、今の家って本棚がないので全部本はKindleなんですけど、この夏の星を見ると凍りのくじらは紙で買いました。そのくらい好きです。

  • 書くまでもないけど、映画もロードショー中です。

7.10休みなんで観に行ってきます。

感想/メモ

  • 1パート目の茨城県の天文部の子たちはコロナで活動できていない現状をすごく悔いている。でもパートが変わって東京都渋谷区の男子中学生:真宙は、進学先の学年に男子が自分しかいない、という不本意な環境で通学しており、学校なんか無いままでいいと思って境遇を呪っている。そういう子達もいるよね。コロナ禍という特殊な環境を悔いてる子ばかりではないよなと。一時期よく聞いた話だけど、ステイホームが叫ばれた時期はたとえば被虐児みたいに自宅に居場所がない子どもや若者たちにとってすごくキツい時期だったみたいな話も聞いたけど、でも学校という居場所がつらかった子達にとってはよかったりしたと思うし。

  • ちょっともう書きたいことが多すぎるので、本文の引用を少し含めながらの主人公たち3人についてのコメントは下に人物ごとにまとめます。

  • トータルしてのコメントで言うと、そもそも辻村深月は凄く好きな作家の1人で、間違いなく自分の中でも5本の指に入ると思う。世相を反映している分、10年後20年後に再読すると今一つ入り込めないところもあるかもしれない。でも、今読むと抜群の面白さ。彼女お得意の叙述トリックもあるけど、それだけじゃない。青春小説の真骨頂という感じがする。これまで辻村作品は凍りのくじらが1番、と思っていたけど、超えてきた。とにかく最高。

各登場人物ごとの所感

  • 真宙;同級生の天音に誘われて理科部の、というか天体観測に関心を持ち参加するようになる。学校で(というかクラスで、なのかな)感じる居場所の希薄さと、かつて憧れた先輩だった柳が、怪我や才能のなさで辞めたのではなく「楽しくて入った」という「理科」の世界に関心を寄せていく過程。まだ周りに流されながらではあるけど、茨城の亜沙たちの学校に行きがかり上メールで問い合わせをすることになる。その流れでしたzoomで、スターキャッチコンテストに誘われるシーンが、もうとにかく凄くいい。2人の、というか2箇所の鬱屈とした、どこに向けていいかわからなかった衝動を向ける先ができた瞬間というか、そんなにどろどろしてないんだろうけど、その思いの強さを感じた。そして始動したスターキャッチコンテストを迎える、真宙のモノローグ。これも抱えていた不全感と、一転して今の充実っぷりが感じられてとても良い。初めて完成した望遠鏡で月を見るシーンで、最初は茨城チームの塗装にムッとする天音を眺めていてヤレヤレ系な雰囲気を出していたのに、同じページ内では月を先に捉えた茨城チームに今度は真宙がムッとする。どっちも本気だっていうことが伝わる。そして望遠鏡を使った後のモノローグに「今までは夜の空という括りでしか見てなかったけど、夜も雲が出ているんだ、その濃淡があるんだ」ということを認識する。スターキャッチコンテストは制限時間内に規定の天体をたくさんキャッチする(望遠鏡の中に捉える)ことを目的とした競技だから、天候って結構大きく影響されそうだな。しかも東京だし。みたいなことを真宙たちが今考えてるかはわからないけど少し考えてしまった。スターキャッチコンテスト当日、会場に向かう真宙を送り出す家族。この場面でぼやかして、というか特に触れずに行ってらっしゃい頑張れよ大会、で終えても良かったと思うけど、敢えて想いを伝えるお父さんの誠実さ。それに反発しないで受け止められるようになっているのは、余裕が出たから、と取るか、成長したから、と取るか。いずれにしても、もう今の真宙なら「空が落ちてくればいいのに」なんて思わないだろう。

  • 亜沙:彼女が「もうちょっと大きくなったらわかるよ」みたいにいわれて反発するような気持ちを、自分はもう徐々に無くしてしまっている。でも、本の対象年齢については未だにクソ喰らえと思っていて、幼稚園の頃読み聞かせられる「エルマーのぼうけん」が面白すぎて、読み聞かせより早く知りたいと思って読んだのが自分の読書の原体験。だから欲しい、触れたい、という気持ちに年齢を理由にブレーキをかけるようにはなりたくないな、とは今も思っている。そんな風に感じるのはきっと亜沙にも共通していて、だからこそ自分の好きだ、語りたいという思いで動く綿引先生に強く惹かれてこの学校を志望したのだろう。大学とかならわかるけど高校でこのモチベーションって凄いよなと思う。あ、でもこれもよくない見方かな。言ったら怒られそうだ。子供たちの中でのキーマンが誰かは意見が分かれる所だと思うけど、大人チームの中でのキーマンは間違いなく綿引先生で、だからこそ大人の話をしているとスポットが当たる。彼女たちが去年宇宙飛行士の講演会に行き、質問コーナーで綿引が彼女から引き出した学生へのエールがこれ。(以下、引用を含むので有料エリアにさせてもらいます。亜沙があと半分くらい、円華、綿引先生が続きます)

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