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ブダペスト再訪と日本の落日

35年前に訪れたブダペストに来ている。いや、それにしても大きく変わった。ブダペスト自体が変わったと言うより、日本人である私たちが感じるブダペストが大きく変わったと言うべきかも知れない。1991年にここを訪れた際は、東欧改革からようやく1年半、まだソビエト連邦が崩壊したのはこの年の暮れ、米ソ冷戦が終結しようとしていた時期だった。

その頃町を歩いていた東洋人は、社会主義圏からの出稼ぎベトナム人くらい。町を歩いていて東アジアの顔をした人にはまったく出会わなかった。英語よりもドイツ語の単語を並べた方が伝わる場面もあり、コミュニケーションに難渋した覚えがある。ハンガリー人のルーツは中央アジアの騎馬民族だと言うが、アジア系の顔つきはほぼ見当たらない。スラヴとゲルマンとラテンが混じってさまざまな顔つきになっている。

ドナウ川沿いのトラム

前回と異なるのは、公共交通を頻繁に使うことだ。あの頃はトラムやバスの路線がさっぱり分からず、しかもタクシーも安かったのであちこちへタクシーに乗った。郊外へのガイド付き個人ツアーも、メルセデスのチャーター車に乗って、やたら句読点がない日本語を話す女性ガイドが、ハンガリーがいかに歴史的に優秀で今まで鬱屈した暮らしをしてきたかを長々と話していた。

トラムに乗っても地下鉄に乗っても、検札係にたびたび呼び止められる。改札がないために、不正をする者がたくさんいるのだろう。私たちが気持ちよく公共交通に乗れるのは、昨年からシニアは無料になっているからだ。検札には「65歳以上だ」と伝えるが、ブダペストの係員はそれだけでは許してくれない。IDを示す必要がある。本物のパスポートは人前で出したくないので、コピーを百均で買ったものでパウチして持って来た。

中央市場

悩ましいのは物価高と円安だ。もちろん35年前の感覚で来たわけではない。あの頃は何しろリスト音楽院でのコンサートが、150円だった。どこかで食事をしても3000円あれば2人でビールも飲めた。中央市場に行くと、ここはもう観光化されていて土産物屋でいっぱいだ。中央市場にある言わば場末的なレストランのグラーシュスープが、2,000円。ビールは1杯1,000円あまり。

中央市場の小さなグラーシュ

他の国よりは少し安いとは言え、夕食をふつうに食べると1万円近くになる。もちろんアルコールを飲むからだというのは否定しない。中央市場の地下にあったスーパーマーケットで、パプリカなどの香辛料は日本より安そうだったので、買ってみた。30袋くらい買ってしまう。そう言えば、一昨日到着したときに西駅の美しいマクドナルドでも、ビックマックは1,000円くらいだった気がする。

物価もそうなのだが、日本の国力低下を感じるのは、東アジア系の人々の中で圧倒的に日本人が少ないということだ。もちろん、ゴールデンウィークでも夏休みでもない時期だが、それは他の東アジアの人々も同じことだと思う。5月に長期休暇が可能な国が東アジアにあっただろうか。

ライトアップの瞬間のくさり橋

ドナウ川の遊覧船をVELTRAで予約した。この季節、夜景を観るとすると20時30分以降でないとライトアップがない。桟橋を20時20分に出る船を予約しておいた。案内によるとオーディオガイドがあり、それをアプリでダウンロードするという。実際に出発直前に試してみる。10数か国の言語でのオーディオガイド、日本語を聴きながらというのは便利だろうとアプリをスマートフォンに入れる。そこで愕然とした。

日本語がない。中国語と韓国語のオーディオガイドはあるが、日本語のオーディオガイドはない。私の印象としては、21世紀になってからハンガリー、特にブダペストを訪れる日本人は結構多いと思っていた。しかし、中国語よりも韓国語よりも優先されない言語なのだ、というがこと分かった。為替や一人あたりGDPを見れば一目瞭然だが、こうやって現実を突きつけられると、日本の国際的地位の低下を実感する。

ハンガリー国会議事堂、政権交代直後
ブダの王宮、くさり橋

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