猫の血液型はほどんどA型、少しB型、まれにAB型。血液型を間違えると、命の危険!!
(アイキャッチ画像は特にB型の多いブリティッシュショートヘアをpixabayのフリー画像より引用)
前回はオスの三毛猫について解説しました。
猫の話を書いていて、猫の血液型が特殊で輸血が命がけだったこと思い出したので、今回は猫の血液型をテーマにします。
本記事では、猫の血液型を生物学的に正しく、かつ分かりやすく解説します。
猫を飼っていない方もちょっとした雑学として読んでいただけたら幸いです。
1.猫にも血液型がある
血液型と聞くと、皆さんは人間のA型・B型・O型・AB型を思い浮かべるかもしれません。
しかし、猫にも血液型が存在し、A型・B型・AB型の3種類に分類されます。
人間と同じように見えますが、ここで注意すべきなのは名前が同じでも全く別物だという点です。
人間のABO式血液型は赤血球表面の糖鎖(糖が鎖のようにつながったもの)により分類されます。
猫の血液型は赤血球膜の糖脂質(シアル酸)で分類されます。
これは分子レベルでも別の物質で、関与する遺伝子も働きも進化的な由来も大きく異なります。
個人的にはAやBと付けない方がよいと思うのですが……
なぜなら、猫だけが特別なのではなく、多くの哺乳類で血液型の仕組みは種ごとに異なるためです。
むしろ、人間のABO式血液型の方が一つの特殊なシステムです。
この違いを理解しないと、後述する輸血や繁殖において重大な問題が起こります。
2.猫の血液型の分布と遺伝
猫の血液型は品種によって大きく偏るのですが、全体としては次の通りほとんどA型です。
A型:圧倒的に多い(約94~99%)
B型:特定の純血種に多い(約1~5%)
AB型:非常に稀(ほぼ0~1%未満)
数字はMSD獣医学マニュアル(猫の血液型)より。
日本の雑種猫のほとんど全てはA型です。
B型の特定の純血種は次の猫種で、多いといっても半分ほどです。
ブリティッシュショートヘア
デボンレックス
コーニッシュレックス
ターキッシュバン
ターキッシュアンゴラ
スペインとポルトガルで1070匹の猫の血液型を調べたものがありました。
A型が96.5%、B型が3.5%で、AB型は1匹もいませんでした。
遺伝の仕組みと構造は次の通りです。
A型はB型に対して優性(AAまたはAb)
B型は劣性(bb)
AB型は両方が混在する中間的な表現型
ここまでは一般的な遺伝の話なのですが、次に重要な話をします。
3.人間の血液型との決定的な違い
猫の血液型が人間と決定的に違う点があります。
猫は生まれつき異なる血液型に対する自然抗体を持っているのです。
B型の猫 → A型に対する強力な抗体を持つ
A型の猫 → B型に対する弱い抗体を持つ
人間の場合、ABO式血液型の抗体は生後に環境との接触で形成されますが、猫では非常に早期から異物として認識する準備が整います。
この違いが、輸血の難しさや新生児死亡の原因になります。
ここで、人間と猫の違いを整理します。
① 血液型を間違えると、命の危険
人間の場合は大変危険とはいえ、異なる血液型を輸血しても、即死することは稀です。
しかし、猫の場合は異なる血液型を輸血すると強い急性溶血反応を起こします。
特にB型猫にA型血を入れると致命的になることがあります。
つまり、猫では血液型を間違えると、命の危険となるのです。
② 万能ドナーとなる血液型が存在しない
人間では万能ドナーとなるO型が存在します。
しかし、猫には人間のO型に相当する完全な万能ドナーと言える血液型が存在しません。
③ 万能受血者がいない
人間のAB型は抗体を持たない万能受血者です。
猫のAB型は抗体をほぼ持ちませんが、輸血は慎重に行わなければならず、完全な万能受血者とは言えません。
④ Rh因子が基本的に関係ない
人間ではRh因子(+・-)がとても重要ですが、 猫では主に問題になるのはABシステムであり、Rh因子は基本的に関係ありません。
4.新生子溶血という重大な問題
猫の血液型が問題になるのは輸血だけではありません。
特に重要なのが新生子溶血で、これは次の組み合わせで起こります。
母猫:B型
子猫:A型
母猫の初乳には強い抗A抗体が含まれており、 それを飲んだ子猫の赤血球が破壊されてしまうのです。
結果として、生後数日で急死するか、しなくても尾の壊死などが起こります。
これは繁殖現場では非常に重要な知識で、交配前に血液型を確認する理由の一つです。
5.猫の輸血はどうしているのか?
では、実際の臨床現場ではどうしているのでしょうか。
結論から言うと、猫の輸血は非常に慎重に行われます。
① 血液型検査(必須)
犬では初回輸血は比較的安全と言われることもありますが、猫ではそれは通用しません。
ですから、初回から必ず血液型判定が必要になります。
簡易キットを使い、血液型を迅速に判定します。
② クロスマッチ試験
さらに重要なのがクロスマッチ(交差適合)試験です。
これは供血猫(ドナー)の赤血球と受血猫(レシピエント)の血清を反応させて実際に凝集や溶血が起きないか確認する検査です。
血液型が同じでも安全とは限らないため、実際の反応を確認しなければいけません。
③ 供血猫(ドナー)の確保
猫の輸血で難しいのが供血猫(ドナー)の確保です。
健康であることはもちろんですが、感染症リスク回避のため、室内飼いが選ばれます。
体重が4kg以上などある程度必要ですし、採血のため穏やかな性格も条件となります。
献血登録猫という制度がありますが、多くの動物病院ではスタッフの飼い猫などがドナーに使われるようです。
④ 輸血量とスピードの管理
猫は体が小さいため、輸血量と輸血速度を厳しく管理しなければいけません。
過剰輸血は心不全や循環過負荷を引き起こす可能性があります。
6.まとめ(猫の血液型を知る意味)
猫の血液型は、人間と同じ名前でありながら本質的には全く別物です。
重要なポイントを整理します。
猫はA型・B型・AB型の3種類
生まれつき強い抗体を持つ
異なる型の輸血は非常に危険
新生子溶血という特有の問題
輸血には血液型検査とクロスマッチ試験が必須
一般の飼い主にとっても、猫の血液型を知る意味はあります。
特に重要なのは、手術リスクがある猫です。
普段は意識しない情報ですが、猫の場合は血液型を知っているかどうかで生死が分かれるかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は4月16日(木)午前10時です。
次回のテーマですが、猫の血液型を書きましたので、犬の血液型にします。
犬の血液型はとても複雑なんです。
記事のテーマの範囲を広げたいと考えています。
よろしくお願いいたします。
少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。
