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【小説】お前、なに入れたんだ?(2031字)

 突如、鉄の棒が体の内側から突き抜けるような痛みに襲われた。いや、それが胃なのかどうかも分からない。ぶわっと一気に体中が汗ばんだ。真由子の腰へと回しかけた手を引っ込めて、みぞおちを押さえ込む。

「大丈夫!?」
 俺の様子に気づいた真由子が、悲鳴を上げた。名前を呼んで肩をつかむが、その振動さえ体に響く。あまりの痛さに、胃の奥から吐き気までがせり上がってきた。瞳が、前にある白ワインの入ったグラスがを捕らえる。真由子はアルコールが飲めない。まさか、と思う。
 
「真由子には、もっといい男がいると思うんだ」
 電話でそう切り出した。それでもう、終わりにしたかった。
 付き合い始めて一年ほど。最近は会いたいと、夜も仕事中もLINEが届いた。返さないとそれは電話になる。
 何やってんだよ、そういう付き合いじゃないだろう。全てを理解して、それでもいいと言ったのは真由子じゃないか。
「別れるっていうなら、奥さんに全部話すからっ」
 それなのにヒステリックに叫ぶから、慌ててこの家に飛んで来た。 
「晴樹さんと別れるなら、死ぬ!」
 こんなに物分かりの悪い女だったのか?
 全てを話されても困る。死なれたって困る。なんとかしなければと、必死になだめた。
「だって別れるなんて言うから」
「俺たちの関係がバレたら、それこそ終わりだろ? なあ分かってくれよ」
 肩を抱き、抵抗しないことを確認して、泣きじゃくる真由子を抱きしめる。そう、別れる必要もない。真由子がわきまえて、面倒なことさえ言い出ださなければ。

 そしてシャワーを浴び、真由子の用意したワインを口にしたところだった。
 経験のないほどの痛みが、体中を駆け巡る。息をするのも苦しい。一体なんだこれは。真由子、お前何したんだ!?
 再び痛みが腹を鋭く差し込む。うめき声を上げ、うずくまった。大きな音とともに、肩に鈍い痛みが走る。ああ、ソファから落ちたのか。
「晴樹さんっ! 晴樹さんっ!」
 真由子の叫び声が遠くで聞こえる。
 
  
「晴樹、最近仕事忙しいよね。あんまり無理しないでね」
 家に帰る時間が遅くなり、休みの日に家を空けることが多くなった。仕事が、付き合いが、得意先のゴルフが。そんな言葉を、美月は全く疑わなかった。
「そんなに仕事して大丈夫? 晴樹の体が心配よ」
 それどころか寧ろ、以前よりも俺のことを気遣ってくれるようになった。
 
 今朝は目玉焼きにソーセージ、ほうれん草のサラダとバナナ。それにコーヒー。生のほうれん草はえぐみが強く、慣れるまで正直苦手だった。
「でもねこのえぐみが、血糖値を下げるの。疲れも取れるんですって」
 笑顔でそう言われたら、食べてしまう。血糖値の高い、ダサいオヤジにはなりたくない。食後のバナナは、未熟なものというのが美月のこだわりだ。
「糖分控えめで、体に良いのに太らないの」
 これも毎日出る。
 そして美月はお弁当を作ってくれるようになった。傷まないようにと、濃いめの味つけにしてくれている。今日は大好きな牛丼だった。美月の牛丼に慣れると、吉野家のは味が薄すぎて食べられなくなった。
 夕飯も、手の込んだものを出してくれる。
 昨日は、鮭のハラス焼きにほうれん草のピーナッツ和え、たけのこのレアステーキ。夜にもほうれん草はいつも出る。美月はポパイはたくさん食べて元気になるでしょと、笑って言う。風呂上がりには、毎晩ビールだ。
「ねえ晴樹、最近顔色が良くなったわよ」
 美月はそう言って、微笑んだ。
 

 ぐうっと食いしばった歯の奥から、うめき声が漏れた。背中にも激痛が走る。床の上で体を曲げ、必死に堪える。ちくしょう、真由子。お前なにしやがった。最初から遊びだって言ってただろ。本気になったお前が悪いんだろ。それがなんで、こんな──
 

「分かりますか? ご気分はいかがですか?」
 目が覚めると、俺は病院にいた。点滴がつながれ、真っ白なベッドに横たわっている。
「救急車で運ばれたんですよ」
 真由子が呼んでくれたのか。ということは、あの痛みは? 真由子ではないのか。
 
「尿管結石です」
 医者の言葉に、俺は大きく目を見開いた。
「痛くて死ぬかと思ったんですけど」
「死ぬほどの痛みが、尿管結石の特徴でしてね。今は点滴で痛みを抑えてますが、石が出るまで暫く激痛が続くと思います」
「出るまで?」
「尿と一緒に排出されるまで待つしかないんですよ。長いとニ週間ほどですかね」
 医者の言葉に俺は絶句した。あの痛みがニ週間だと!?
 俺に構わず、医者は尿管結石について書かれた冊子を渡した。
「血圧も異常に高いので食生活を改めて、一度精密検査を受けてください」

 食生活は美月のおかげで、万全のはずだが。首を傾げながら、冊子に目を落とした。
『尿管結石の原因:シュウ酸・脂身・塩分・水分不足
 シュウ酸を多く含む食べ物:ほうれん草・たけのこ(共に特に生)・未熟なバナナなど』
 早く美月に電話しなければ。心配して、また何か作ってくれるだろう。

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#今2000字で書けって言われたらどこからの発想で書き始めますか

初めまして状態なのですが、面白そうな企画を見つけて、参加させていただきました。
どうぞよろしくおねがいします!

きっかけは、背中の痛みを感じて・・・前に結石をやって苦しんだことがあるので、慌てて水を飲んでました。文字は2031文字。あれ、noteに貼ったら増えたような・・・(いいわけ)
 
しかし2000字の可能性よー
とっても楽しかったです。こんな企画をありがとうございます!

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