名取佐和子(2025)『図書室のはこぶね』実業之日本社

野亜高校の体育祭には伝統がある。
それは、自由がなかった時代に生徒がつかみとった演目「土ダン」。
「Saturday Night」に合わせて各クラスがおもいおもいの世界観でダンスをする。

体育祭の準備期間は、どのクラスもこのダンスを仕上げるために委員会や部活動よりクラス活動が優先される。
だれもが参加することが前提だが、だれもが参加できるわけでもないこの演目を前に、やるせないおもいをもった生徒たちがいた。

3年生の花音は、クラスメイトに図書委員代理を頼まれて図書室にいた。
そのクラスメイトは図書委員をかわってもらい、土ダンの練習にいそしんでいた。花音はというと、足を負傷してバレー部の練習にも出られず、土ダンの練習にも出られないのだった。

たいくつな1週間を送るはめになった花音の前に、ふしぎな本が現れる。
その本の謎を解こうと張り切る花音。
そうこうしている間にも、図書室にはさまざまなひとがやってくる。

みんなが張り切る体育祭だが、そこになじめない生徒は当然いる。
運動部の花音は、負傷するまで気がついていなかったが、元々車いすで生活しているような生徒は最初から土ダンには参加できない。
クラスのコンセプトを受け入れられず、練習に参加できずにいる生徒もいる。

全員参加で全員が最優先事項として体育祭にとりくむことが当たり前のこととして捉えている体育祭実行委員会と、生徒ひとりひとりがたのしむことができる場をつくりたい生徒会。

伝統を守ることの意味、じぶんたちの場所をじぶんたちの手でつかみにいくという青春を味わうことができる物語。


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