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朋有リ 遠方ヨリ来タル

 ようやく梅雨が明けた。立秋の3日前、滑り込みギリギリセーフってところだ。尤も、微妙に梅雨前線が残ってヤマセも吹くという条件付きだけど。実家の裏庭に2本ずつ植えたミニトマトと中玉のトマトが収穫を迎えている。伸び方を甘くみていて、植える間隔が全く狭すぎた。四方に伸びる枝は互いに重なりそれを乗り越えジャングル状態、ナスは完全に飲み込まれて、枝先はシシトウに迫っている。きちんと支柱も立てなかった枝は地面を這って、そこに根を張りながら更に伸びる。地に着いた実はやがて腐ってしまうのだが、それは収穫する人間の都合で、トマトは本来そういう植物なのかもしれない。とりあえず、今年は毎朝ツイスターゲームのように(通じる?)足を踏ん張り、身を屈めて腕を伸ばしながら地面すれすれの実を収穫している。来年はもう少し何か考えよう。
 そんな夏の夕方、古い友人が、こちらでのキャンプ企画に参加した帰りにうちに廻ってくれた。キャンプにも誘ってくれたのだが、丁度上京するタイミングと重なってそれは叶わなかった。元々、退職後にこちらから遊びに行こうと思っていたのが、逆に先に来てもらう形になってしまった。その友人は、知人に管理を任された?人里離れた小屋に籠っていたかと思えば、閉店した?商店街の店舗を借りて飲食イベントをしたり、日頃から定期的に自然と触れ合うワークショップを開いたりしている。元々は浪人時代の寮で知り合って、大学は別だったけれど、結局同じ会社に入った(私が面接のタイミングを教えてもらったのだ)。私は6年でその会社を辞めてしまったけれど、友人の方は同じグループ内で会社勤めを全うした。今回改めて話を聞いてみたら、入社以降一貫して新規の開発案件を担当してきたらしい。そういうことの出来る人は限られるし、人事部の目は節穴ではなかったということだ。
 既に1週間近くテント暮らしをしてきた友人は、大きなリュックを部屋に降ろすと、早速お土産の数々を取り出し始めた。地酒が2本、海沿いで買い求めた立派なホッキ貝、新鮮な水ナス、地飼いの鶏の卵、キャンプで譲り受けた鹿肉の燻製、手製の藍染の手拭い、等々。最近は料理教室にも通っているという友人は、そのまま台所に立つと、水ナスを手で千切り、塩で揉んで塩昆布を少々、あっという間に一品を仕上げた。勿論私が用意した酒と肴もあって、それからゆっくり器を変えながら地酒の飲み比べ。話は時を遡ったりこれから先に伸びたりして尽きることはなかったが、それぞれやりたい事ややり方は違うけれど、残された有限の時間を大事に使おうというところに行きついた。翌朝、友人は再び台所に立つと、キャンプ用のナイフでホッキ貝を開き、料亭の板さんのような手捌きでそれを潮汁と味噌と薬味のたたきに変えた。豪華な朝食の後、私が手入れしている実家の庭や地元の公園で少しのんびりしてから(トマトも収穫してもらった)、友人はその日の目的地である山奥の温泉に向けて出発した。翌日アップされた友人のLINEには、その朝釣り上げた型のいいイワナが写っていた。


 


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