小説詩集「夜明けの難破船」
「私たちって、」
兄弟みたいだな、っとか思ってた人が突然離れていって、戸惑った。
学校でどう過ごせばいいのか分からなかったし、どこへ出かければいいのかも分からなかったから。
「だけど、」
夜の不眠が、私の羅針盤になった。
「逃げる、」
みたいにこっそりとマンションを出て、夜明け前、私は北へ向かった。南の方は駅前で、そこ以外に行きたかったから。
で、北へズンズン歩いて行ったら、なんとか通りって道に出て、それは学校の裏手を通ってる道と同じだった。
「なので、」
「なので?」
「なので、」
位置関係が全く分からなくって、地球は丸いんだ的に揺さぶられる感覚を覚えたの。
「んで、」
その道を渡ったら街路樹の向こうにあかりが見えて、それはファミレスだった。
「まるでね、」
「まるで?」
「まるで、」
それは森の中のレストランみたいだったの。店内には、まばらだったけど人がいるのに驚いた。みんな眠れない人たちなんだなって驚いた。パンケーキとミルクを頼んで、ハチミツを思いっきりかけたのは、森の中にいる気分だったから。
「ども、」
ごちそうさまでした、とかいって店を出たら、あたりは白み始めてて、かすみみたいなモヤモヤをかき分けるみたいに、私はさらに北へ向かったの。
「そしたらまた、」
「また?」
「また森みたいな、こんもりした所、」
につきあたって、足を踏み入れた。そこは公園だったの。知らんかった、と思うと同時にストーリーを歩いてるみたいな気分になって不思議だった。
「公園の真ん中に、」
池があったのだけれど、その周りを町の人たちがグルグル走ってた。なので、この人たちは眠れない人たちとは違うなって思ったの。
「ねえ、君」
とか声をかけて来た人がいたんだけれど、その人はパパとおじいちゃんの間ぐらいの歳の人だった。存在すればの話だけれど。
「君はさ、」
ご両親にどれぐらい仕送りしてもらってるの?とかその人はゴミ拾いの手を休めながら聞いてくるの。で、んーとか言い淀んでいたら、結構送ってもらってるんだね、的に推測したようだった。
「どうして、そんなことを、」
聞くんだろうね。
「多分、」
自活の素晴らしさ、とか快活さ、とかをよく知ってるからだと思う。お孫さんとかそのお友達がユニークな生き方をしてるのを詳しく話してくれた。
「聞いてた?」
ちゃんと。
「うん、」
聞いてたよ。で、そのユニークって言葉がキーになって、私の眼球は、おじいさん後方の植物たちをローズアップする、みたいな自動フォーカス状態になってた。
「どうゆうことさ?」
「公園の木々がね、」
初夏の花を誇らしげに咲かせていたんだけれど、別の木はソバカスみたいな小さな花を咲かせてて、青々と繁茂しながら風に揺れてた。いっぱい実を付けるのよ私たち、的にこっちをみてた。その後どうも、とか言いながらおじいさんと別れたのだけれど、歩きながら、花の木、葉っぱの木、実のなる木、的に分類してた。
「そしたら、」
心地よい香りがただよってきて、振り返ったら、花束抱えてる人がいたの。
「それで、」
香る木、とか叫んだんだね。これは厳密には木とはいわんが、とか言いながらその人は、庭からつんだ薔薇を包んで、これからおばあちゃんにお供えするんだとか言う。
「命日だからさ」
みたく言って、肩にかけてるチェロケースを、よいしょ、とかしながら、これからゲネプロなんだ、とか言うのだった。
「午後からアトリエみたいなホールでやるんだけど、」
よかったら来ない?とかチケットを、よいしょ、とか言いながら取り出してくれるのだったけれど、それならひとっ走り家に帰って一寝入りしなくっちゃいけないな、とか焦りだして、
「眠れるかなあ、」
みたいにへへへとか笑うのだった。
おわり
❄️眠れぬ夜の明け方に、一度しか見ないみたいな道がつづいてたら、それはやっぱり夢なのでしょうか、的初夏の妄想です。人はいろいろ教えてくれるだろうけれど、私たちだって教えられるよ、みたいな植物たちの声が聞こえてくるのも、やはり寝不足のせいでしょうか、的全生命なお話です。船舶が一度も登場しないところにポイントが、、、あるはずです。また書きます。ろば
