《魔女のハーブは、あんまり甘くない》 アリスと星の翼 Vol.2
<2>
「これ、なんだろ?」
わたしは、足もとのペンダントを手にした。
はじめて見る不思議な色を、している。
「きっと、お礼じゃないかな?」
クリスが、わたしを見る。
「お礼って、あの、ふくろうの子が?」
わたしがいうと、クリスは、うなずいた。
「つけてみれば?にあうよ」
クリスが楽しそうに、わたしを見る。
「え、じゃあ・・・・」
わたしは、ペンダントをつけると、はっとした。
「光りはじめた?」
ペンダントから、2色の光が、はなたれた。
クリスが、おどろいて見ている。
わたしは、ゆっくりと、空のむこうを見た。
「セーラお姉ちゃん・・・・?」
夜空の星が、きらりと光った。
☆
「さ、今日は、鳩たちを、飛ばしますよ」
先生が、楽しそうに、声をはりあげる。
というか、この先生、いつも楽しそうだ。
さわやかな青空のした、学校の校庭には、たくさんの鳩たちが、女子生徒の肩にのって、かわいらしい鳴き声をあげている。
みなとからの風が、さわやかな海のかおりを、はこんできた。
「となりまちの子に、メッセージをつけて、かえすのよ」
先生の指さすほうに、白い屋根がならぶ街が見える。
この鳩さんたちの、ふるさとの街だ。
「この子の飼い主って、すっごいイケメンだったら、嬉しいなー」
マナちゃんは楽しそうにいいながら、メッセージを、はとの足につけている。
どんなメッセージを、書いたのかな。
わたしは、なかみがすこし、気になった。
「あたし、この色がいいー」
まわりの女子たちが、それぞれ好きな色の手紙を、鳩さんの足につけている。
青、みどり、黄色、ピンク、オレンジ、などなど。
「くっく、くっく」
鳩さんも、けっこう楽しそうだ。
「あ、あたしも、鳩さん、きめなきゃ・・・・」
学校では魔法を学習するが、ほかにも、さまざまなカリキュラムがあり、伝書バトの授業も、フィールドワークのひとつだ。
となりの街から連れてきた鳩さんたちに、メッセージをつけてかえす。
だれのメッセージが、いちばん早くとどくか。
かしこい動物の子たちを、じょうずに手なずけるのも、ひつようなスキルだ。
ふくろうは、おぼえたつもりだけどね・・・・。
「ちゃんと、送りとどけてね」
わたしは、さいごにのこった鳩の子に、手紙をつけた。
ただ、<これからも、よろしくお願いします>と書いただけだが。
「だめよ、その子は」
マナちゃんが、わたしを見る。
「?」
「その子、けがしてるみたいだし」
「え?」
たしかに、羽の付け根が、すこし、傷ついている。
あの、ふくろうの子に、にている。
「いいわ、この子で」
「え、いいの?」
わたしがいうと、マナちゃんが、おどろく。
「うん、だって・・・・」
わたしは、胸のペンダントを、鳩さんにちかづけると、小さな光がうかんだ。
「?」
マナちゃんが、目をひらく。
すると、鳩の子が、ぱたぱたと、羽をはばたかせた。
「あれ、どうして?」
声をあげるマナちゃんのとなりで、わたしは、内心、うなずいた。
「やっぱり、このペンダントって・・・」
鳩の子が、わたしのうでに、とびのった。
「じゃ、みんな、この子たちを、空にとばして」
先生が、おおきな声をひびかせると、女子たちが、いっしょに空を見て
「せーの」
と、みんなで、うでをあげる。
ーばさばさっ。
鳩さんたちが、いっせいに、青い空にまいあがっていった。
「わあ」
空のキャンバスのなかで、鳩さんたちが、きちんと、美しいフォームをつくりながらとんでいた。
ーきれい。
鳩さんたちは、ぐーんと、せん回すると、まっすぐに、となり街へと、とんでいった。
「とどくかな。あー、楽しみ」
マナちゃんが、楽しそうにいう。
きのうの夜とはちがって、いまのは1色の光だった。
ーきずを回復させる魔法。
〈魔女のきまり〉のなかに、書いてあった。
ソアラおばあちゃんが、つかっていたみたい。
でも、いまくらいのは、クリスなら治せる。
魔女をめざすのなら、もっと、人ができないようなものが、できないと・・・・。
わたしは、ペンダントを、にぎった。
「でも、鳩たちは、学校のまわりだけで、あまり遠くには行けないのよ」
先生が、みなとのほうを見ながらいう。
「え、そうなんですか?」
マナちゃんが、たずねる。
「ええ。海を、わたるのは、むずかしいの」
ーそっか、遠すぎか。
じゃあ、海のむこうのセーラお姉ちゃんたちには、鳩さんは、行けないのかな。
わたしは、とおくの海の、青い線を見た。
「じゃ、みんな、今日の授業は、これでおわりね」
先生が、ぱんぱんと、手をたたく。
わたしたちが教室にもどると、放課後をしらせるチャイムがなった。
マナちゃんは、ピアノの習いごとがあるからと、教室でわかれた。
時間ができたし、また森に行ってみようかなと思い、校門をでるとー
「あの、アリスちゃん」
うしろから声がして、わたしは、ふりむいた。
となりのクラスの、ライラちゃんが立っていた。
「あれ、ライラちゃん?」
ボブカットが、よくにあっている。
おとなしい子で、前はよく、いっしょに帰った。
たしか、クリスとおなじクラスだったはずだけど、クリスが飛び級で医学部に行ってしまったため、いまはあまり会ってないのだろう。
「これ、おしえてもらえるかな?」
ライラちゃんが、テキストを見せる。
「え、あたしに?」
「うん、アリスちゃん、いつも学年トップとかだから、よかったら・・・・」
ライラちゃんが、そっと、わたしを見る。
「いいけど、クリスとは、話さないの?」
わたしは、ライラちゃんに、たずねる。
「ええ。クリスくん、さいきん、忙しそうだし」
ライラちゃんが、左肩のバッグをもちなおした。
「・・・・?」
そのさい、ライラちゃんのバッグのなかに、チョコのはこが見えた。
「あれ?」
はこのうえに、見覚えのあるイニシャルが、見えた気が・・・・。
え、まさか、ライラちゃん・・・・。
ライラちゃんが、あわててバッグのジッパーをしめる。
「わかった。じゃ、うちに、こない?」
「え、いいの?」
わたしがいうと、ライラちゃんは、おどろいて、わたしを見る。
「もちろん。あたしんちくるのって、ひさしぶりでしょ?」
「うん、そうだね。なんか楽しみ」
ライラちゃんが、うれしそうに、手をあわせる。
「じゃ、いっしょに帰ろっか」
わたしたちは、ならんで歩いた。
でも、ライラちゃんの、本当の目的って・・・。
わたしは、となりのライラちゃんを、ちらりと見た。
「あ、それで、さっきの鳩さんの授業って、どうだったの・・・・」
わたしとライラちゃんは、しばらくフィールドワークのことを話していると、やがて、森のそばを、とおりかかった。
きのうとはちがって、今日は、小鳥さんたちが木のうえで、楽しそうにおしゃべりをしている。
「え、なんだろ?」
ライラちゃんが、足を、とめた。
「?」
道のはしで、うさぎが、小さくはねていた。
「あら、うさぎ?」
ライラちゃんが、目を、きらきらさせて、うさぎにちかよる。
「森から、きたのかしら?」
わたしが、うさぎを見ていう。
「めずらしい色を、してるね」
ライラック色のからだに、目のまわりだけが、くっきりと白い模様のうさぎだ。
「あれ、この森の子じゃないわね・・・・」
ライラちゃんが、つぶやく。
「え、わかるの?」
わたしが見ると、ライラちゃんが、うなずく。
「うん。まえに、海のむこうの、みなとの街で見たことあるの。その街の子のはずよ・・・・」
わたしは、はっとした。
ライラちゃんが、手をのばすと、ライラック色のうさぎは、森のなかに、もどっていった。
「あ、いっちゃった・・・・」
ライラちゃんが、森にむかって、つぶやく。
小さな風が、森の葉を、ゆらした。
「でも、その街って・・・・」
わたしがつぶやくと、ライラちゃんが、不思議な顔をする。
「・・・・?」
たしか、セーラお姉ちゃんが、めざしてた街..。
すると、胸のペンダントが、光った。
「え・・・・?」
わたしは、ペンダントを見た。
<Vol3に、つづく>
