《魔女のハーブは、あんまり甘くない》 ユイと魔女の友だち Vol.3
「れもんちゃん、いるー?」
朝の日が、さすころ、わたしとアカリの2人は、それぞれ自転車にのり、れもんちゃんの家の窓にむかって声をだした。
すると窓があいて、れもんちゃんが、顔をだす。
「ふ、2人とも、どうして?」
れもんちゃんが、おどろいたように、わたしたちを見つめる。
「ね、見せたいものがあるから、うしろに、のって。あと、スケッチブックとペンもね」
「・・・・?」
わたしは、れもんちゃんに、ほほえむ。
「ちょ、ちょっと、待っててくださいね」
しばらくすると、れもんちゃんが、白いワンピースに白い帽子をかぶって家からでてきた。
「あ、すごい、かわいい。じゃ、のって」
わたしがいうと、れもんちゃんは、すこし照れくさそうに、わたしのうしろにのった。
「え、ええ。ほんとに、そとは、ひさしぶり..」
れもんちゃんが、帽子を手でおさえながらいう。
「よーし、じゃあ、しゅぱーつ」
アカリが声をだすと、わたしたちは、みなとのほうにむけて、自転車をはしらせた。
ーめっちゃかるい。
これなら、ラクだ。
「空と海が、ずっと青い・・・・」
わたしたちは、女神の橋をわたり、そのまま、本の牧ふとうのそばを通りすぎた。
空からの、かもめが、わたしたちのすこしうえを飛んでいく。
「わあ」
れもんちゃんが、嬉しそうに声をだす。
この街のかもめは、人なつっこくて、よく、手がとどきそうなところまで、ちかづいてくる。
「ね、気持ちいいでしょ?」
わたしは、れもんちゃんにいう。
「はい、とっても」
しばらくすると、海の自然公園が見えてきた。
「ほら、とうちゃく」
わたしたちは、自転車からおりると、公園のおくの丘のエリアまで、ならんで歩いた。
「ここにきたのは、はじめてです」
れもんちゃんが、楽しそうに公園を見る。
やがて、丘のまえまでくると、わたしとアカリは、いっしょにうなずく。
「ね、これを見て」
アカリが、れもんちゃんのまえで、手をひろげる。
「わあ・・・・!」
れもんちゃんが、おどろいた表情になる。
虹色にかがやく花園が、わたしたちのまえに、ひろがっていた。
「ね、いい景色でしょ?」
わたしが、れもんちゃんにいう。
「こ、これって、私が描いた世界。どうして?」
れもんちゃんは、しんじられないように、わたしたちを見る。
アカリは、れもんちゃんに、うなずく。
れもんちゃんは、花園のなかにすすむと、7色の花を見て、ゆびさきを花びらにつける。
「ほんとにあったんだ。すごい・・・・」
みなとからの風が、れもんちゃんの帽子をとばすと、虹色の草原に白い風船がおりた絵になった。
「アカリ、よかったね」
わたしがいうと、アカリは、ほっとした表情で、わたしを見る。
わたしは、青い空を見た。
そう、きのう、わたしたちはー
星が、またたきはじめたころ。
わたしとアカリは、この場所で、ちょっと変わった(?)ことをしていた。
「じゃ、ユイちゃん、手をひろげて、わたしにむけて」
アカリが、わたしに、大きな声をだす。
「こ、こう?」
わたしが、左右の手をひろげて、アカリのまえに立つ。
わたしは、アカリと手をあわせた。
「せーので、ゆっくり手をあげて。お星さまにむかって」
「「せーの」」
わたしは、アカリといっしょに、手を星空にむけた。
空にのびるタワーのようなかたちをしたシルエットが、芝生のうえにできた。
「ほら、星の光を、あつめるの」
星が、きらきらと、またたいた。
すると、ふわっと、足が、ほんのすこし地面からういた。
「え、ええ、足が?」
「そう、ユイちゃん。いい感じだよ」
アカリが、ほほえんだ。
星が、光った。
すーっと、夜空から光のすじがのびてくると、わたしたちをつつみこんだ。
「わたしたち、光のなか・・・・?」
夢でも、見ているのだろうか。
でも、アカリの手のぬくもりは、ちゃんと、つたわってくる・・・・。
やがて、光のすじが、そっと、きえた。
ゆっくりと、わたしたちの足が、地面についた。
「手が、光ってる・・・・?」
わたしちのあわせた手が、虹色の光につつまれていた。
「じゃ、この光を、地面につければ・・・・」
わたしとアカリは、あわせた手を、ゆっくりと地面につけた。
「ほら、ユイちゃん、見て・・・・」
小さな芽が、地面からでてくると、いちまいずつ花びらをひらかせ、7色の花になった。
「うそ・・・・」
わたしは、アカリを見る。
「ね、これなら、れもんさんも、よろこんでくれるよ」
「これって、あの本の魔法なの?」
わたしは、アカリを見る。
「そうなの。わたしも、こんなにうまくいったのは、はじめて」
アカリは手をあわせて、よろこぶと、わたしを見る。
「ユイちゃんが、いっしょにやってくれたおかげ。ありがとうね・・・・」
となりのアカリが、わたしの肩に、頭をのせる。
わたしは、思ったー
なんで、この子は、人のために、こんなひっしに魔法まで、おぼえるんだろう・・・・。
まあ、わたしも、いっしょになってしまったわけだが・・・・。
わたしは、苦笑いすると、おなかが小さく音をたてた。
「ああ、なんだか、おなかすいちゃった」
わたしが、おなかを手でおさえる。
「ユイちゃん、今日は、うちにとまっていきなよ」
アカリが、わたしを見る。
「え、ほんとに? じゃ、お言葉にあまえて」
わたしは、嬉しくて声をだす。
「たまごがいっぱいあるから、オムレツをつくろう」
「あ、あたし、手伝うよ。オムレツ得意だし」
「え、ほんと? じゃ、ユイちゃんに、作ってもらっちゃおうかな・・・」
ーまあ、こんな感じで、なんとか、まにあった というとこかな・・・・。
「すごい子だよ。キミは」
わたしは、アカリの肩にうでをまわし、だきよせた。
「ユ、ユイちゃん、いたい・・・・」
アカリが、苦笑いをしながら、声をだす。
「すごい。この景色を、描きたい」
れもんちゃんが、スケッチブックをひらいて、ペンをにぎる。
さらさらと、絵が、できあがっていく。
「世界って、こんなに、美しいんだ・・・・」
れもんちゃんが、つぶやく。
ーよかった。
この魔法は、1日しか、もたないって書いてあ ったから。
「これ、もらってください」
れもんちゃんが、絵をわたしてきた。
「わあ、すごい」
天使の花園のような、美しい絵。
れもんちゃんのアレンジが、きいていた。
「よかった。これでまた、すてきな絵が、お店にならぶね」
アカリが、絵を嬉しそうにだく。
みなとの絵と、花園の絵がならぶって、すてき。
「私、明日から、学校にいきます」
れもんちゃんが、楽しそうな声をだす。
「え、本当に?」
「はい。これから、そとの素敵な世界を、いっぱい描いてみたいんです」
れもんちゃんは、瞳を、かがやかせる。
「やった。そう、それがいいよ」
アカリが、うなずく。
「私、まだ、ここにいますね。いろいろ見てみたいし。帰り道はわかるから、大丈夫です」
れもんちゃんが、わたしたちにいう。
わたしは、ほほえんだ。
「そう。じゃ、わたしたちは、もどるね」
「2人にあえて、嬉しかったです」
れもんちゃんが、わたしたちに、にこりとほほえんだ。
そして、わたしとアカリは、れもんちゃんに手をふって、公園をあとにした。
「よかったね、れもんちゃんが、もどってくるって」
アカリが、空にむかっていう。
「ほんとに、よかった」
海からの風が、心地よかった。
「ね、ユイちゃん、ちょっと、買い物していいかな?」
アカリが、みなとを見ながらいう。
たくさんの、かわいい屋台が、ならんでいた。
「うん、もちろん。あたし、ここで待ってるから」
アカリは、屋台のならびに入っていき、わたしは、ちかくのベンチにすわった。
みなとには、ランチをとっている人たちが、ちらほらいた。
そうか、朝はやかったから、まだお昼なんだよね・・・・。
わたしは、ゆびで、まぶたをこすると、はっとした。
「え・・・・?」
小さな黒猫が、こっちを見ていた。
「・・・・?」
すこしはなれた芝生のうえに、ちょこんと座っている。
なにもいわないが、なにかをつたえようとしている気がした。
「でも、どこかで・・・・」
わたしは、思いあたった。
れもんちゃんの絵の黒猫に、にている気がした。
「まさか・・・・」
しばらくすると、黒猫は、とことこと、ホウキを持った少女のあとについていく。
すると、少女と黒猫は、みなとのそばのカフェのうらに歩いていき、見えなくなった。
たしか、あのさきは、なにもないんじゃ・・・。
「なんだろう・・・・?」
わたしは、ベンチから立って、カフェのうらにいってみると、目をひらいた。
「あれ?」
あたりを、見回したが、だれもいない。
いったい、どこへ?
わたしは、はっとして、うえを見た。
「え、空?」
空に、人のような、かげが見えた。
「・・・・?」
やがて、かげが見えなくなると、わたしは不思議に思いながら、その場をはなれた。
「ユイちゃん、どこいってたの?」
もどると、買い物袋をかかえたアカリが、ベンチにいた。
「う、ううん、なんでもないよ」
わたしは、えがおを見せた。
「魔女か。なんだか、あたしも、信じる気になってきたな・・・・」
わたしがつぶやくと、アカリが、うなずく。
「そうだよ。ぜったい、いるんだから」
アカリは、嬉しそうにつぶやく。
「ていうか、アカリが、なれば?」
「え?」
わたしがいうと、アカリが、おどろく。
「でも、わたしなんて、まだまだだよ」
「だって、あの魔法も、つかえたじゃない?」
「あれは、ユイちゃんが、手伝ってくれたからだよ・・・・」
アカリは、小さくわらう。
あ、そうだ。
カズマも、たしか、ハーブティーが好きだって言ってたよね・・・・。
「あたし、ハーブティー、おぼえたいな・・・」
わたしがいうと、アカリが、ベンチからたった。
「じゃ、わたしが、おしえてあげる」
「え、うれしい。ようし、お店までは、あたしがもつね」
わたしは、アカリの買い物袋を、自分の手にもった。
アカリが、くすっと、わらった。
わたしたちは、いっしょに、みなとを歩いた。
《魔女のハーブは、あんまり甘くない》
ユイと魔女の友だち
END
