《魔女のハーブは、あんまり甘くない 》 ソアラと魔女のお茶会 Episode1−1
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"A cozy fantasy story of a witch, her bitter herbs, and the gentle secrets they hold."
<1>
「素敵なハーブを育てれば、素敵な魔法を手にできる」
星の、きれいな日に、聞いた言葉だ。
この言葉を聞いた日の夜、わたしは、ベッドにはいっても、胸が高鳴って、よく眠れなかった。
ー素敵な魔法って、どんなのだろう。
「ええっと、たぶん、こんなのかな……」
それからのわたしは、いろんな想像を、よく、あたまのなかで、めぐらせた。
ーとっても、楽しい。
そしていまは、可憐な花を咲かせているハーブに、かこまれている。
わたしは、ゆっくりと、しゃがんで、かわいいハーブに、顔をちかづけた。
「ああ、いい香り……」
わたしは、谷からふいてくる風に、つぶやいた。
白い岩と、まわりの草や花が、美しい自然のオブジェのようだ。
でも、あの声、だれの声か、思い出せない。
顔も、よく覚えていない……。
えっと、たしか……。
「あー、ソアラちゃん、このハーブ、摘んでおくね」
岩のうえのメルルの、楽しそうな声が、聞こえてきた。
さわやかな笑みに、花たちも、喜んでいるようだ。
ほんとに、メルルは、かわいい。
でも、わたしだって、もっと、きれいになるんだから…。
「あ、すごく、いい香りがする。それも、摘んでおきましょう」
わたしは、カゴのなかに、ハーブをいれた。
谷の草原には、海からの風と、太陽の恵みをたっぷりとあびたハーブが、あふれている。
「風が、ながれてくるね……」
栗色の髪が、風のうえに、ながれた。
わたしの心も、はこんでいきそうだ。
「よし、これだけあれば、ハーブティーには、じゅうぶんかな」
わたしは、カゴを手に、たちあがると、メルルが、岩のうえから、おりてきた。
「あー、どんな味になるか、楽しみだねー」
わたしとメルルは、ならんで、白い道を歩いた。
メルルの胸のペンダントが、小さくゆれている。
今日は、お茶会をやろうと、約束したのだ。
「そうね、やっと、落ち着いた暮らしが、できるようになったものね。たまには、ゆっくりしないと」
「うん、ほんとうに、あれから……」
わたしの言葉に、メルルは、つぶやいた。
谷のむこうには、ながい地平線が見える。
それは、1ヶ月まえに、おこった。
とつぜん、大地が大きくわれて、わたしたちが住んでいた街が、まるで、ちがう景色になってしまった。
学校のみんなは、いそいで街をはなれ、それぞれの故郷に、もどっていった。
だけど、わたしたちは、故郷へは帰らず、この谷で暮らしていこうと、2人できめたのだ。
ここで、すてきな魔女に、なるために。
「あ、そうだ、もう1人」
あと、小さな仲間が、1人……。
「ね、あれ見て」
谷に、白い鳥が、とんでいた。
「大きな翼。すてきだね」
メルルが、つぶやく。
たまに見かけるが、海のむこうから、とんできたのか。
白い翼を、いっぱいに、ひろげ、とぶのを楽しんでいる。
谷のむこうの大地までは、見えないくらいはなれているけど、鳥は、気持ちよさそうに、大地にむかって、とんでいった。
「わたしたちも、とぶ魔法を覚えれば、ああやって、むこうの大地に行けるんだね」
メルルが、見えなくなった鳥にむかって、いう。
「そうだね。きっと、できるよ」
わたしは、こたえる。
やがて、白い道を、すすんでいくと、わたしたちの暮らす小屋が、見えてきた。
「ほら、もうすぐよ」
わたしがメルルにいうと、だれかが、うしろから、わたしの肩に手をおいた。
「え?」
わたしは、振り向くと、髪のながい女性が、ほほえんでいた。
わたしは、おどろいて、目をひらいた。
「あれ、せ、先生?」
メルルが、手を口にあてて、声をだす。
「え、先生って?」
わたしは、メルルと顔をあわせる。
ーそうだ、たしか、この人は……。
「ええ、2人とも、ひさしぶりね」
女性の声に、わたしの記憶が、よみがえった。
そう。まえに、学校にいた、魔法の先生だ。
とても、きれいな人で、まえと変わらない。
「どうして、ここに?」
わたしは、先生にいった。
たしか、いっしょにいたのは、ほんの、短いあいだだったはずだ。
だから、<髪のながい先生>と記憶している。
名前も、でてこない。
とちゅうで、海のむこうの学校に行ったと思ったけど。
「やっぱり、あなたたちね。大きくなったわね」
先生は、わたしたちを見て、ほほえむ。
わたしたちも、先生に、ほほえんだ。
「ソアラちゃんに、メルルちゃん。あなたたちは、とても魔法の才能があったわね」
わたしたちの名前を、ちゃんとおぼえている。
「しかも、こんなに、きれいになって」
ーやっぱり、いい先生だ、うん。
「先生も、お茶会、どうですか?」
わたしは、ハーブのカゴを、先生に見せる。
「え、私も、いいの?」
先生が、目を、かがやかせる。
「ええ、もちろん」
わたしがいうと、メルルも、ほほえむ。
「じゃ、この先に、わたしたちの小屋があるので、いっしょに、どうぞ」
わたしたちは、ならんで、白い道を歩いた。
風が、つよくなっている気がした。
「そのハーブは、どうしたの?」
先生が、カゴのハーブを見る。
「ええ、谷の草原で、とったんです」
わたしは、ハーブを見ながら、こたえる。
「そう、素敵なハーブは、魔法の、みなもとなのよ」
わたしは、はっとした。
え、どこかで、その言葉って……。
「たぶん、今夜は、魔女座が、空に、あらわれるわ……」
先生が、谷のうえの、空を見る。
「え、魔女座?」
わたしは、空を見た。
かすかに、星のシルエットが、見えた気がした。
「あれ……?」
メルルのペンダントが、空にむけて光っていた。
「……?」
すると、道のわきから音がしたので、わたしは見てみると、黒猫が、草のなかから、顔をのぞかせていた。
「ニャオ」
黒猫が、小さな声をだす。
「あ、ここに、いたの」
メルルが、よろこぶ。
そう、わたしたちの小屋に、いっしょに住んでいる黒猫。
ほとんど、メルルにしか、なかないけど。
メルルは、黒猫をかかえると、あたまをなでた。
「あら、かわいい黒猫ね」
先生が、嬉しそうに、つぶやく。
黒猫が、メルルのうでのなかから、先生を、じっと見ていた。
「……?」
わたしが、不思議に思っていると、うえから、音がした。
わたしは、空を見ると、黒いもようが、ひろがりはじめていた。
「え、雨が?」
わたしがいうと、メルルは、黒猫を上着で、つつむ。
「このあたりの天気は、変わりやすいから。さ、先生も、いそぎましょ」
わたしは、先生の手をひいて、小屋に、いそいだ。
だが、すぐに、雨が音をたてて、ふりはじめた。
ぬれた髪が、ほっぺたに、ついた。
「あ、見えてきた。なかに、入りましょう」
小屋につくと、わたしはドアをあけて、メルルと先生を、なかにいれた。
「わあ、びしょびしょ」
わたしは、ドアを閉めると、タオルをだして、先生にわたした。
「あれ、先生?」
先生の長い髪が、ほとんど、ぬれてなかった。
「……?」
メルルが、心配そうに、黒猫を見ている。
黒猫は、小さなからだを大きくふって、雨を、ふりおとしている。
「メルル、そのペンダントを、つかえば?」
「あ、そうね」
わたしの言葉に、メルルが、にこり。
すると、メルルは、ペンダントを手にのせて、黒猫に、ちかづけた。
「それは……?」
先生が、メルルを見る。
メルルのペンダントから、白い光が、はなたれた。
やわらかな光が、黒猫を、つつんでいく。
「そう、その光なのね……」
先生が、嬉しそうに、つぶやいた。
「え、先生、知ってるんですか……?」
わたしは、先生を見た。
やがて、黒猫のからだが、つややかな黒い色に、もどった。
「ほら、もう、だいじょうぶよ」
メルルがいうと、黒猫は、「ニャオ」と楽しそうに、ないた。
「みて。雨、やんだよ」
わたしが、そう言って空を見ると、雲がなくなり、星が、顔を見せはじめていた。
「じゃ、はじめましょうか」
わたしたちは、たがいの顔を見て、うなずくと、テラスにでた。
メルルが、テーブルクロスをひいて、楽しそう。
「アロマも、いい香りだよ。ラベンダーね」
わたしは、そういって、アロマキャンドルに、マッチで火をともした。
ラベンダーの香りと、幻想的な、あわい光が、テラスをつつんだ。
「ね、いい雰囲気だね……、あれ?」
わたしは、夜の空に流れる、星のあつまりを見た。
「あれは、射手座?」
空の星たちが、よんでいるように、わたしには見えた。
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[Pitch / For Producers & Publishers]Title: The Witch's Herbs Aren't So Sweet (魔女のハーブは、あんまり甘くない)Genre: Cozy Fantasy / Slice of Life / WitchcraftLogline: A heartwarming, dialogue-driven fantasy drama about "Soarer," and "Merle," a mysterious herbalist witch. Together, they heal the weary hearts of visitors through bittersweet herbal teas and daily magic.
<1−2に、つづく>
