0.02%の光。─未完成のまま、生きていく私へ─
ー「ちゃんとしてるね」と言われ続けて、
ちゃんとしてるだけの人間になっていた。
ー何者でもない私だからこそ何者かになれる。
ー選んだ道を正解にしていく。
プロローグ
夜中の2時。
どうしても書きたい。
残したい。
忘れたくない。
こんな衝動は、初めてだ。
あの選択は、間違いじゃない。
今でもそう思う。
これは決意表明じゃない。
ただの、
ある女の子の未完成記録。
でもきっと、
あの夜が、私の始まりになる。
あの夜、初めて、
私の意思で、私の道を
選んだ。
第1章:私は、嫌われるのが怖かった
私は、「いい子でいるのが上手な人間」だった。
5人家族の次女。
もの頃ついた頃からバランスを取る役割だった気がする。
これは家族内以外でもそうだった。
誰かがやりたくないことは、自分がやった。
その方が、うまくいくと思っていたから。
それは行動だけではなく
言葉遣いもだった。
その場の空気を読んで、
その場にいる誰1人傷つけない言葉を選んで、
誰も傷つかないように振る舞う。
言葉は、一度飲み込むのが当たり前。
それが私の普通。
頭の中で何度も繰り返して、
誰も傷つかないと確信してから、
やっと外に出す。
その場に合う自分を、
選び続けていた。
だからどこにいってもある程度は
その輪に馴染むことができる。
でも、だから、
その代わりによく黙る。
会話のテンポがみんなとズレる。
そんなこと、
私がいちばん分かってる。
でも嫌われたくなかったから。
嫌われたら、
私がここにいていい理由が
なくなる気がしていたから。
これは優しさでもなんでもなく、
生存戦略だったのかもしれない。
私はずっと、
私がその場所に『いていい理由』を探していた。
第2章:勝たないと、ここにいてはいけないと思った
中学で始めたある部活。
私は弱かった。
運動神経もいい訳じゃない。
才能もない。
雰囲気もない。
そんな私を的に、ボールがとんでくる。
笑われる。
はぶかれる。
ひとりを感じる。
怖かった。
逃げたかった。
でもそれ以上に、悔しかった。
出来ないからいじめられること。
なにもやり切ってない今の私を、私の全てだと思われていること。
このままだと自分が自分を嫌いになる。
そんなままで終わりたくない。
だから決めた。
必ず結果で見返してやる。
そこから誰よりも練習した。
太陽に照らされて黒焦げになりながら、
自分を追い込んで、追い込んで、追い込んだ。
ある日肉離れをして部活ができなくなった。
でも毎日、
朝練も放課後も練習場に行き続けた。
その時は
少しでも体を怠けさせたくないとか、
怪我をしたからって休みたくないとか、
そんな理由を口にしていた思う。
でも今思えば、
休んでしまうことで、
部活の中での「私の居場所」が無くなるのが
怖かったから。
もともとそんなものなんて、
なかったのに。
人より1本でも多く練習したい。
早く結果を出したい。
勝てば、
私がここにいていいと思える気がしたから。
負けるなら、
いなくなってもいい。
そんなふうに思っていた。
それくらいでしか、
自分の価値の測り方を知らなかったから。
第3章:ちゃんとしていれば、大丈夫だと思っていた
周りから見れば、
順風満帆に見えてたと思う。
習い事では全国大会準優勝。
部活では、初心者から地区大会優勝、地方大会出場。
高校や大学の受験では推薦で多くの機会をもらい、県立高校から国立大学へ進学した。
一人暮らしの生活も、
大学での成績や課外活動やボランティア
初めてのアルバイトや長期インターン、
出来る限りのことは全てこなしてきた。
そしてやってきたことは、
ちゃんとそれぞれ実を結んできた。
でもそれは、
「正解の道を選んできた」からじゃない。
その場その場で、
結果を出すしかなかったから。
やったことを、
正解だと思えるように
動いてきただけだった。
だから周りからの
「すごいね」「ちゃんとしてるね」は
どこか遠くに聞こえていた。
やりたいからじゃない。
やるべきだから、やっていた。
簡単ではなかった。
辛かった、苦しかった、辞めたかった。
この時間は必ず終わりが来るから、
そう思って乗り越えてきた。
全国で準優勝した。
でも、嬉しさなんかより先に頭に浮かぶのは
「私は優勝できないんだ…」だった。
私が完璧じゃないことなんてわかってる。
どこにでもいる未完成な女の子。
でももしかしたら、私にも…
私にも、
そこにいていい価値があるのかもしれない。
だから、
まだ足りない、まだ足りない、まだ足りない。
今辞めたら、
私はいてもいなくてもいい存在になってしまう。
そう思うと止まるのが怖かった。
止まったら、私が崩れる気がしていたから。
私が壊れる気がしていたから。
だから、やめられなかった。
でもそのたびに、
心は少しずつ削れていた。
気づけば
常に真っ暗な箱の中に
閉じ込められているような気持ちだった。
第4章:我慢すれば、嫌われないと思っていた
私が我慢すればいいと思っていた。
嫌われなければ、
ここにいられると思っていた。
でも気づいてた。
嫌われない代わりに、
私がいなくなっていることに。
それでも気づかないふりをしていた。
気づいたら、
戻れなくなる気がしていたから。
そんな中、
私と巡り会ってくれた、
保護猫という小さくて大きな存在。
何もしなくていい。
結果も出さなくていい。
ただ、大切に、大切に。
そこにいるだけで
優しくて、愛おしくて、暖かい。
その存在は、
私がずっと欲しかった、
「私にしかできない居場所」をあたえてくれた。
物分かりがよくて、いい子で、育てやすい。
なぜか自分と重なるような気がした。
だから何度も伝えた。
わがままでいいんだよ。
暴れていいんだよ。
悪さしてもいいんだよ。
私がほしかった言葉を、
精一杯伝えた。
第5章:私は、自分のことを何も知らなかった
授業も課外活動も
アルバイトもインターンも生活も。
全部最低限のことを
平均以上を目指して、
私なりに「ちゃんと」こなしてきた。
今思えば
なにが平均かなんてわからない。
でも、ちゃんとやったと言えるくらいには
やってきたから
どこかには受かるだろう。
そう思いながらはじめた就職活動。
大学2年生の2月。
私は就活のために自己分析を始めた。
周りでは早いと言われる時期。
私はほかの人よりも時間がかかるし、
やらないと不安になる。
だから早くスタートラインに立った。
自己分析をしながらも、
今まで通り、毎日をこなした。
なのに、
大学3年生の11月までことごとく落ち続けた。
お見送りのメールが届く度、
私を否定されている気持ちになった。
悔しかった。
なんで落とされるのか分からなかった。
すぐ辞めないし、必ず精一杯頑張るのに。
でも気づけば、
お見送りメールを開くことが
苦しくない時期さえあった。
その理由は、
私の心が知っていたからだ。
私は私のことを、
ちゃんと分かろうとしてないから。
受け入れたくない私自身から、
逃げているから。
何がしたいのか。
何を大切にしているのか。
何になりたいのか。
どれも、
言葉にしようとすると、
息が詰まった。
本当は、
分からなかったんじゃない。
分かろうとしてこなかっただけ。
分かりたくなかっただけ。
向き合いたくない過去。
言葉にしたくない想い。
弱い自分と向き合う怖さ。
見ないようにしてきたものが、
全部そこにあったから。
ちゃんとしていれば、
そんな私に触れずに済んできたから。
結果を出していれば、
深く考えなくても許されてきたから。
逃げてこれたから。
でも、就職活動は違った。
「あなたは何がしたいの?」
その問いから、逃げられなかった。
うまく話そうとした。
正解っぽい言葉を並べた。
評価される答えを探した。
綺麗な言葉を話し続けた。
でも、
たくさんの学生と向き合っている大人には、
何も伝わらなかった。
言葉だけが浮いていた。
中身がなかった。
私が私から逃げている限り、
誰かに選ばれることはない。
それでも私は、怖くて、
自分と向き合うことができなかった。
だからずっと、選ばれる側にいた。
第6章:人との関わり
私は、長い期間を
同じ人と関わり続けることに怖さを感じていた。
私を知られるのが怖いから。
ふとした瞬間にでた私の素を見て
嫌われるかもしれないから。
弱くてだめな私を見られたら
きっとがっかりされるから。
私のことをちゃんと知った上で、
飽きられるのが怖かったから。
最初はよくても、
どうせ人は最後は離れていくと思っていたから。
だから、逃げてきた。
心に踏み込まれる前に距離を取った。
好きになりきる前に離れた。
深く知る前に終わらせた。
だから人とは、
その場では楽しい。
でも、深い関係にはならない。
そんな
「ちょうどいい距離」
を保つのが上手くなっていた。
でもそれは、
ただ、
人と向き合うこと
から逃げていただけだった。
はじめから嫌われることよりも、
「本当の私を知ったあとに離れられること」
の方が、ずっと怖かったから。
だから私は私を知られる前に
終わらせていた。
自分で終わらせれば、
傷つく理由を私の中だけ処理できるから。
でも、
それは強さなんかじゃなかった。
ただ、
失う前に自分から手放していただけだった。
本当はずっと、
誰かにちゃんと知ってほしかった。
嬉しかったことも。
悔しかったことも。
言葉にできない弱さも。
いいところも。
ダメなところも。
全部ひっくるめて、
「私は私でいい」
そう言ってほしかった。
でもそんなこと、
誰かに求めてはいけないと思っていた。
だから私は、
私から人との距離を取っていた。
誰にも期待しないように。
傷つかないように。
そうやって、
私は私を守っていた。
第7章:0.02%の光
そんなある日の夜。
今でも思い出すと、
少しだけ呼吸が浅くなる。
ただの一夜なのに、
今では少し現実感がない。
まるで
別の世界に入り込んでいたような感覚さえある。
それでも、
細部だけは異様なほど鮮明に残っている。
空気の重さ。
声の響き方。
表情の揺れ方。
その場の沈黙。
そして、自分の感情の温度。
全部、
まだ身体のどこかに残っている。
その夜、
私はある人の隣にいた。
物理的にはすぐそばだった。
手を伸ばせば届く距離にいる。
それなのに、
どうしようもなく遠かった。
距離ではなくて、
生き方の話だった。
その人は、
私がずっと探していた
「理想の人間」に思えた。
ちゃんと生きている人。
苦しさを知っている人。
それでも前に進む人。
誰かとちゃんと向き合う人。
自分の人生を、自分で選んでいる人。
私はずっと、
そういう人になりたかった。
でも同時に、
どこかでそんな人は存在しないと思っていた。
そう思うことで、
自分を守っていたのかもしれない。
いなければ、憧れなくていい。
憧れなければ、苦しくならない。
でもその夜、
それは崩れた。
その人は、
確かに存在していた。
しかもまったく別の世界にいる人ではなかった。
私がこれまで歩いてきた延長線上に、
その人はいた。
21年という人生。
結果でしか自分を認められなかった時間。
どんな成績をおさめても、
まだ足りないと思った感覚。
止まることが怖くて、
走り続けていた日々。
就職活動で落ち続けて、
自分と向き合うことから逃げていた時間。
その全部の先に、
その人はいた。
だから、
目を、身体を、頭を、心を、
背けられなかった。
その人の話を聞きながら、
私はずっと自分の中で反発していた。
そんな生き方は綺麗事だと思った。
特別な人にしかできないと思った。
才能があるからだと思った。
でも同時に気づいていた。
本当に否定したかったのは、
その人ではなかった。
その人のような生き方を、
どこかで望んでしまっている自分だった。
私はその人に、
羨ましさと悔しさを同時に感じていた。
その人が、
自分の人生を楽しそうに話していたから。
選択を信じているように見えたから。
生きることそのものに、迷いだけではない何かを感じたから。
そのとき、
はっきり理解した。
私は私の人生を、
好きだと思ったことがないことを。
これまでの私は、
何かを達成しても満足しなかった。
結果を出しても、次の不足が気になった。
褒められても、すぐに次を探した。
終わった瞬間に、もう足りないものを見ていた。
ずっと「良くなるため」に生きていた。
でもその裏で、
自分の人生を味わった感覚はなかった。
私はずっと、
安心のために生きていた。
失敗しないために。
嫌われないために。
間違えないために。
ここにいていい理由を失わないために。
その結果、
人生はいつも「評価の対象」だった。
楽しむものではなく、
正しさを証明するものになっていた。
その人は、
私を評価しなかった。
何を成し遂げたかも。
どこの大学かも。
どんな結果を出してきたかも。
それだけを見ているだけではなかった。
条件として見ていなかった。
ただ、
私を見てくれていた。
それだけだった。
でも、
それだけで十分だった。
十分すぎるくらいだった。
その瞬間、
止まっていた感情が動き出した。
私はずっと、
認められるために生きていた。
結果を出すために。
価値を証明するために。
ここにいていい理由を作るために。
でもその時、
初めて思った。
ああ。
私は生きるために頑張っていたのに、
人生を生きてはいなかったのかもしれない。
21年間。
私はずっと、
安全な方を選び続けてきた。
その夜、
その前提が崩れた。
その人は言った。
「人生は、死ぬまですべて過程であって、
正解や成功のためにあるのではなく、その過程にある出会いや変化そのものを楽しむことだ。」と。
その言葉の意味が
すぐに理解できたわけではない。
ただ、
私の中で何かが静かに崩れる感覚があった。
私は気づいてしまった。
生き方そのものに、
大きな差があることを。
能力や環境だけではなく、
世界の見え方そのものに違いがあることを。
そしてそれが、
どうしようもなく悔しく感じた。
生まれて初めての種類の悔しさだった。
試合の負けでもない。
受験の結果でもない。
誰かとの比較でもない。
もっと根の深い場所での敗北だった。
それでも、
目を逸らせたくなかった。
むしろ、
もっと知りたいと思ってしまった。
その人が見ている世界を。
その人が信じている前提を。
その人が当たり前に生きている感覚を。
そのとき、その人は言った。
「不安なのは、挑戦している証拠だから」
その言葉が、今も強く残っている。
私はずっと、不安を消すために生きていた。
不安は失敗のサインだと思っていた。
でもその夜、
初めて違う見方が生まれた。
不安は、
挑戦の中にいる証拠かもしれない
ということだった。
その瞬間、
自分の状態が少し違って見えた。
怖い。
不安。
揺れている。
それは止まっている証拠ではなく、
進んでいる途中かもしれない、と。
その夜、
私は見てしまった。
0.02%の光を。
それは確かなものではなかった。
保証もなく、
形も曖昧だった。
それでも、
なぜか美しかった。
99.98%の安心の中で生きてきた私にとって、
それは異物だった。
でも同時に、
初めて「別の世界の可能性」
として見えたものだった。
怖かった。
それなのに、
少しだけ未来が動いた気がした。
そしてそのとき初めて思った。
私はこの人生を、
自分で選びたい、と。
第8章:それでも、選びたかった
あの日以降
世界が変わったわけではない。
生活は続くし、
日常は何も変わらない。
でも、
自分の見え方だけが変わった。
未来は「備えるもの」ではなく、
「まだ分からないもの」として存在し始めた。
私はずっと、未来を信じていなかった。
期待することは危険だと思っていた。
失う可能性の方が
現実的だったから。
だから、
期待しないことで
私を守ってきた。
何者にもなれなくてもいいように。
でも、その守り方の中で、
ひとつ失っていたものがあった。
それは、
人生そのものを感じる感覚だった。
あの夜以来、
それが少しだけ戻ってきた。
不安がある。
怖さもある。
それでも、
少しだけ楽しみが混ざる。
その感覚が、
自分でも一番信じられなかった。
今も私は何者でもない。
未完成で、
なんの確信もない。
それでも、
進んでいる。
そしてその事実だけが、
大きな救いになっている。
あの夜に見た「0.02%の光」が、
何だったのかは、
未だに確信にはたどり着けない。
ただ、
それを見てしまった私は
元にはもう戻れない。
だから私は今日も選び続ける。
正しさではなく、
自分の感覚で。
怖さごと、
未完成なままで、
強く生きていくために。
最終章:それでも、手を伸ばした
私はまだ、
怖い。
たぶんこの先もずっと、
怖いままだと思う。
失うことも。
期待することも。
誰かを信じることも。
自分を信じることも。
全部怖い。
あの夜までの私は、
怖くない場所を探していた。
傷つかない選択。
間違えない道。
安全な正解。
そういうものだけを選べば、
生きてはいけると思っていた。
でも今は違う。
怖さを消そうとは思わなくなった。
怖いということは、
何かを大事にしているということだから。
不安になるということは、
まだ諦めていないということだから。
その感情を、
消したくないと思うようになった。
そして、まだ死にたくないと
思うようになった。
私は矛盾だらけだ。
近づきたいのに離れたくなる。
信じたいのに疑う。
進みたいのに止まりたくなる。
それでも、
それが今の私だ。
前までの私は思っていた。
整ってから進むべきだと。
でも違った。
進むから揺れる。
進むから迷う。
進むから不安になる。
私はまだ何者でもない。
でも、
それでも進んでいる。
あの夜、
0.02%の光を見た。
保証もなく、
形もなく、
それでも確かにそこにあったもの。
私はそれを、見てしまった。
だからもう、戻れない。
私はまた手を伸ばすと思う。
届くかどうかは分からない。
それでも、
伸ばす。
その繰り返しなんだと思う。
光を見て、
怖くなって、
迷って、
それでもまた進む。
だから私は、
未完成のまま生きていく。
私が選んだ道を、
正解にするために。
あとがき
プロローグにも書いたように。
これはただの決意表明ではない。
どこにでもいる、
ある女の子の未完成の記録。
でもきっと、
あの夜が、
私の始まりになる。
99.98%のまま、生きるのか。
0.02%に、手を伸ばすのか。
私は、0.02%を選んだ。
未完成な私のまま、
この人生を進んでいく。
先が見えないこの世界で、
私は、私だけの正解をつくっていく。
何者でもない私が
何者かになれる日を求めて。
でもきっとこれは
私だけの話ではないのかもしれない。
もしも、これを読んでいるあなたが
今どこかで立ち止まっているのなら。
なにか違和感を持ちながら生きているのなら。
0.02%の方へ、
少しだけ手を伸ばしてみてほしい。
選ぶのは、
いつだって自分しかいない。
どんな選択であっても、
正解にしていけるのは、
自分自身。
あなたの道に
必ず、あなたにしかない
「光」が灯し続けていますように。
