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バナナのころ

バナナのおかげで命を繋いでいた頃があった。
そういう時期が、3回あった。

深く傷ついていたり
強い緊張を余儀なくされていたりして、
生きる気力がない。
なにも食べなくならない。
つらくて起きあがれない。

そうやって
横になっているだけで何日も何日も過ぎていった時。

もちろん家族のごはんを作るのもできなくなっていて。
家族と食べるのもできなかった頃。

お手洗いに起きたとき
お勝手にバナナがあると助かった。
食べたい訳じゃなくても
さすがに何か食べないといけないと、警鐘を感じて食べた。

調理しなくても食べられるバナナ。
包丁もいらない。
手も汚れない。
安くて日持ちもするバナナよ。

そういう時期は
一日の食事はバナナ1本か2本だけだった。
そんなんじゃ死んじゃうよって言われたけれど、
バナナのおかげで生きてたよ。

バナナってなんて素晴らしい。
尊い。

わたしが改めてそう思ったのは、
病院でその話をしたときに
「えー!私もそう!
バナナだけ食べて生きてたときあった!」
そう言ったバナナ仲間に出会ってから。

そして
やー、バナナってすごいね!
って讃えあったのだけど。

ていうことは…
バナナのおかげで人生の危機を
生き延びられたという友は
他にもたくさんいるのだろう。

地球は、宇宙は、
この世界は すごいな。
神様に感謝する人のきもちってこんなかな。
意味がないと思うものに
未だ出会ったことがないです。

バナナはきっとそんなこと知らないだろうけれど、
あなたは素晴らしいんだよ。

バナナ以外にもあるよ。

窓の開かない閉鎖病棟でも
ほんの1cmくらいは大抵開けられたんだけど、
そこに顔をうずめて鼻先に風を感じると
すこし生きた心地がしたんだ。

保護室という独房のような部屋にいたときには
一日に3回くらいしか人と会えなかったんだけど
たまにいい看護婦さんが担当になった日には
ずいぶん高いところにある窓を少し開けてもらえた。
そのとき、たまたま
遠くで白い鳥が羽ばたいて。
ああ、動いている生きものを
わたしはとても久しぶりに見て、
涙がこぼれた。
それが白い鳥だったのも大きかったと思う。
(ごめんね、カラスが悪いって言いたいんじゃないよ)

もしも
窓がどこにもない部屋だったら。
もしも
窓が1mmも開かなかったら。

日当たりや換気が
いかに大事かを
ずっと昔に記したナイチンゲール。
彼女の偉大さのほんの一分を
身をもって感じることができたと思う。
衛生上の問題だけじゃない。

光は
風は
鳥は
人を生かしてくれる。

バナナも。


命を殺す働きもあれば
支える仕組みも備わっているこの世界。

うまく廻っていきますように。
ぎりぎりでもいいから
誰かの痛みにおいつきますように。

今日も わたしを 誰かを
生かしてくれている
風に
光に
鳥に
バナナに
感謝します。



森宮雨






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