見出し画像

10年ハネトをやった私が、「ねぶた祭DAO」の記事を見て正直に考えてみた

こんにちは、こんばんは、あおちゃんです。

実は私、青森ねぶた祭が大好きで、かつて10年連続でハネト(跳人)として祭りに参加してきました。そんな思い入れのある祭りに、最新のデジタル技術を組み合わせて地域を元気にしようという「ねぶた祭DAO」という取り組みが始まったと知り、いてもたってもいられず取り上げることにしました。

期待して中身を見たのですが、正直なところ「あれ?」という違和感が残りました。今回はその違和感の正体を、ねぶた祭りを愛するイチ都民としての目線で4つのポイントに分けてお話しします。

1. 狙いは正しい。でも中身は「特産品の抽選会」だった

この取り組みは、ざっくり言うと「お祭りに参加した人をアプリで記録して、抽選で地元の特産品を贈る」という仕組みです。DAOやブロックチェーンといった難しそうな横文字が並んでいますが、参加者から見える中身は、要するに「アプリで受付して、当たった人に特産品を送る抽選会」です。

狙い自体は真っ当です。全国のお祭りは人口減少や高齢化で担い手不足に苦しんでいて、一度来てくれた人と地域をつなぎ続けたい、という思いはよくわかります。問題は、その立派な狙いに対して、使っている技術が本当に必要なのか、という一点に尽きます。

2. その最新技術、普通のアプリで十分では?

ここが一番言いたいところです。「参加を記録して、当たった人に特産品を送る」——これ、わざわざ特別な技術を持ち出さなくても、みなさんがスマホで使っているポイントアプリやスタンプカードと同じ仕組みで十分できてしまいます。

目玉である「ブロックチェーン」という技術には、たった一つ、明確な強みがあります。「運営側でも記録をあとから勝手に書き換えられない」こと。たとえるなら、鉛筆ではなく消せないボールペンで書く台帳です。でも、お祭りの参加記録を消せなくして、誰が得をするのでしょう。特産品を配るだけなら、この強みはまったく出番がありません。実際、前回試した「写真を投稿していいねを競う」という機能は、今回あっさりやめています。目玉に見えた仕組みが本質でなかったことを、運営自身が示しているようにも見えるのです。

3. その強みが効くのは「何万人・何十年」の世界

では、その消せない台帳がいつ役に立つのか。答えは「利用者が何万人もいて、何十年も続いて、運営を簡単には信用できないほど大きくなったとき」です。そこまで育って初めて「勝手に書き換えられない」ことに価値が生まれます。

ところが、前回の実証に参加したのはたったの48人。しかも一般の参加者ではなく、ほぼ運営の関係者でした。何万人・何十年で効く技術を、48人の身内で試している。順番が完全に逆なのです。さらに言えば、こうした実証は数年で終わることが多い。もし参加者が積み上げた記録が、運営が手を引いた瞬間に消えてしまうなら、「毎年続けてくださいね」と呼びかける資格すらありません。ねぶた祭は、最新技術のお試し会場ではないはずです。

4. そもそも、ねぶた祭の本当の壁は「たどり着けない」こと

ここで一つ、大事な事実をお伝えします。ねぶた祭は、参加のハードルが高い祭りではありません。ハネトの衣装さえ着れば、団体に入っていなくても、その日その場から誰でも跳ねられます。跳ねること自体は、驚くほど開かれているのです。

本当の壁は、その手前にあります。「行きたくても、たどり着けない」のです。青森は遠く、移動費がかさむ。そして一番深刻なのが宿です。祭りの期間は青森市内のホテルがまず取れず、取れても料金は跳ね上がる。私自身、友人たちと行こうとしたとき、市内はどこも満室で、車で1〜2時間離れた場所しか空いていませんでした。そしてツアーは高い。。。「跳ねたい」という気持ちはあるのに、泊まる場所と移動の壁が、来たい人をふるい落としてしまう。そして特産品の抽選会も、消せないデジタルの台帳も、この宿の壁には1ミリも効かないのです。

5. 私の提案:空き家を、祭り期間の宿にする

では、どうするか。私が思うのは「空き家の活用」です。いま多くの自治体が空き家の増加に頭を抱えています。一方で、祭りの数日間は泊まる場所が決定的に足りない。余っている空き家と、足りない宿。この二つの困りごとを、ぶつけて相殺してしまえばいいのです。

新しくホテルを建てるのは、年に数日のピークのために割に合いません。でも、すでにある空き家を祭り期間だけ開くなら、大きな投資は要らず、空き家対策の出口にもなります。豪華なホテルにする必要はありません。普通に眠れて、シャワーを浴びられて、食事は近くのお店でとれる。それだけで、跳ねに来た人には十分ありがたい。跳ねたあとの汗だくの体で1時間も運転せずに済む——それがどれだけ体験を変えるか、跳ねた人間ならわかります。もっとも、私は青森に空き家問題があると聞いてはいるものの、実際にどこにどれだけ空き家があるのかまでは把握できていません。だからこれは机上の空論に終わるかもしれない——その点は、正直にお断りしておきます。

6. まとめ:技術より前に、「行政が稼ぐ壁」を破ってほしい

この空き家宿がうまくいけば、得た利益を空き家の整備に回し、翌年の受け入れを増やし、一部を祭りの運行団体や担い手の支援に還す——お金がぐるぐる回る仕組みになります。ここで立ちはだかるのが「行政は稼いではいけない」という思い込みです。でも、稼いで自分で回る形にしない限り、どんな取り組みも補助金が切れた瞬間に消えてしまう。今回のDAO実証が「やってみました」で終わりそうなのも、根っこは同じです。

もちろん役所が直接宿屋を営むと「民業圧迫だ」と反発が出ます。だから運営は地元の事業者や住民に任せ、行政は場を整える側に回る。空き家の持ち主をつなぎ、祭り期間だけの特例ルールを整え、安全を保証する。稼ぐのは民間、環境を作るのが行政。この形なら、利益はちゃんと地域に落ちます。日立のような大きな会社が本気で地域を思うなら、消せない台帳を作るより、こういう現実の壁を崩すことにこそ力を使ってほしいと思うのです。

派手な最新技術は、たしかに見栄えがします。でも私が願うのは、ただ一つ。あの熱気の中に、また気軽に跳ねに行けること。そのために本当に必要なのは、消せない台帳ではなく、もっと気軽に行けて、もっと気軽に宿泊でき、青森を満喫できる環境を作ることです。まずは足元の「本当の困りごと」から向き合う——それが、ねぶた祭を次の世代へつないでいく一番の近道だと、10年跳ねた私は思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。「なるほど」と思えたら、ぜひ「スキ」で教えていただけたら嬉しいです。

【参照記事】

いいなと思ったら応援しよう!