【第3回】起業家プロジェクト#03|中高生が「事業計画書」を書く夜
> 「これ、今日中に全部埋まりますか?」
> M.くんが、Googleドキュメントの画面を見ながらそう言った。
> 正直に答えた。「全部は無理。でも、今日やれるところまでやる。」
前回のあらすじ
前回(第2回)、会社名が決まった。
長いブレインストーミングの末にたどり着いた「LAKANG(ラカン)」——ビサヤ語で「大きな一歩・最初のステップを踏み出す」を意味するこの言葉は、子どもたちの物語にも、クロスロードに来る生徒さんの物語にも重なってくる。
そしてアンケートも完成した。12品目の商品候補から「何が欲しいか」をお客さんに聞くためのGoogleフォームを作り、LINEグループへの配布準備まで整えた。
第2回を終えたとき、次にやることはシンプルに見えた。アンケートを配って、結果を待って、商品を絞る。
だが、そう甘くはなかった。
お金を借りるには、「事業計画書」がいる。
---
「計画書がないと、お金は借りられない」
第3回の打ち合わせを始めてすぐ、現実の壁が見えてきた。
LAKANGが仕入れのお金を借りる相手はクロスロードだ。でもお金を貸す側には、当然ながら「何のために・いくら借りて・どう返すのか」を確認する義務がある。
事業計画書なしに、借入はできない。
そして問題があった。6月1日に全員で集まって計画書を「ドッキング(統合)」させる予定なのに、その時点でまだ1行も書かれていなかったのだ。
さらにタイムプレッシャーが重なっていた。
- M.くん・Y.くん・I.くんの3人は6月13日〜20日、シンガポールへ旅行で不在
- I.くん・M.くん兄弟は7月3日〜13日、日本に一時帰国のため不在
- 7月中旬から日本の夏休みが始まり、クロスロードは一気に繁忙期に突入する
逆算すると、6月12日までに商品の発注を完了させるしかない。計画書→借入申請→商品決定→発注、というドミノを倒し切るために残された時間は、わずか2週間だった。
---
AIで「事業計画書」の全体像を掴む
まず、事業計画書というものがどんな構成になっているかを、AIに聞いた。
中高生のメンバーに「事業計画書を書いて」と言っても、何をどこに書けばいいかわからない。だからまず「地図」を見せることにした。
AIが示したフォーマットはこうだった。
1. 事業概要
2. 事業の背景・目的
3. 商品・サービスの内容
4. ターゲット顧客
5. 販売計画
6. 収支計画
7. 資金計画
8. スケジュール
9. リスクと対策
9項目。一見多い。でも見ていくと、今すぐ書けるものとアンケート結果が出ないと書けないものに自然と分かれることがわかってきた。
- 今すぐ書ける:事業概要・背景・ターゲット・資金計画の大枠・スケジュール
- アンケート後でないと書けない:商品の詳細・価格・収支の数字・借入の確定額
「全部埋まってから提出」を待っていたら間に合わない。だから「書けるところから書いて、数字は後から入れる」戦略で進めることにした。
---
誰が何を書くか——役割分担の話
ここからが、この第3回打ち合わせの核心だった。
9項目を誰がどう分担するか。大人がまとめて書いてしまえば早い。でも、それじゃ意味がない。これは彼らの事業計画書でないといけない。
考えながら、こんな分担になった。
| 担当 | 項目 | 選んだ理由 |
| --- | --- | --- |
| タカさん(私) | 2. 事業の背景・目的 | プロジェクトの設計者として、なぜこれをやるかを書く |
| M.くん(中1) | 3. 商品・サービスの内容 | 商品への関心が高く、候補の魅力を言葉にするのが得意 |
| Y.くん(中1) | 4. ターゲット顧客 | 数字より「人への想像力」を使う項目で取り組みやすい |
| I.くん(高1) | 7. 資金計画・8. スケジュール | 3人の中で最年長。数字と全体把握が必要な一番難しいパートを任せた |
I.くんに資金計画を任せると決めたとき、少し迷った。中学生2人には「誰に・何を売るか」という顧客寄りの項目を、I.くんには「いくら借りて・いつ返すか」という数字寄りの項目を。難しい方を、一番上の人間が引き受ける。それが筋だと思った。
I.くんは黙って聞いていた。「わかりました」と、一言だけ言った。その一言だけで、頼もしかった。
---
「答えじゃなく、問いを渡す」という選択
担当が決まった後、私はある選択を迫られた。
「数字や言葉をはめれば完成する穴埋めフォーマットを渡すか、それとも自分で考えさせるか」
フォーマットを渡した方が早いし、きれいな計画書が仕上がる。でもそれは、思考する機会を奪うことでもある。「ビジネスとはどういうものか」を体で理解してほしいなら、問いを渡さないといけない。
だから私はこう伝えた。
「まず自分で書いてみて。わからなくなったら聞きに来ればいい。正解じゃなくていい。『自分はこう思う』を書いてきて。」
穴埋めフォーマットは、最後の手段として用意だけしておいた。使わなくて済むことを、少し祈りながら。
---
6月1日、15時に集合
第3回打ち合わせはこう締めくくった。
翌日(6月1日)の15時から17時、全員集合。各自が書いてきた担当パートを持ち寄って、1つの事業計画書に仕上げる。
その後、クロスロードに提出して借入申請。6月12日までに発注完了。夏に販売開始。
ドミノの1枚目は、もう倒れ始めている。
Y.くんは「ターゲット顧客」をどう書いてくるだろう。M.くんは「商品の魅力」をどんな言葉にするだろう。そしてI.くんは「いくら借りる必要があるか」という計算を、どう組み立ててくるだろう。
答え合わせは、明日だ。
---
*次回:事業計画書が完成した。アンケート結果が出た。販売する商品が決まった日のこと。
📍 クロスロード語学学校(フィリピン・セブ島)にて
---
#クロスロード #セブ島 #起業家プロジェクト #子ども起業 #実践型教育 #ビジネス教育 #スタートアップ #起業 #フィリピン留学 #お金教育
