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【第5回】起業家プロジェクト#05|「お金を貸してください」と言えるか

> 朝4時56分、LINEの通知が来た。

> 「おはようございます。本日やっていただきたいことをご説明します。」

> 送ったのは私だ。相手は、まだ眠っているかもしれない中高生3人。

> でも544分後に、M.くんからこう返ってきた。

> 「了解です!お金借りれるように頑張ろう!」

> この子の行動力は、本当に兄とは正反対だ。

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前回のあらすじ

前回(第4回)、事業計画書の9項目が全て埋まった。

アンケート16件の結果を受けて商品を確定させ、販売価格と目標数を決め、収支のシミュレーションもした。、1人あたり約₱9,900の利益という具体的な数字が、初めてスクリーンに映った。

そして最後に伝えた。「次は本番だ」と。

その本番が、2026年6月3日に来た。

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当日の朝から、修正が続いた

プレゼン当日の朝から、LINEで事業計画書の修正が走った。

たくさんからの指摘だった。

「タンブラーが商品ラインナップに入っているのに、収支計画に入っていない」

「利益配分が4名均等になっているが、マネージャーのタカさんは除いてメンバー3名で分けるはず」

細かいようで、これは致命的なミスだ。プレゼンで数字の矛盾が出ると、信頼を一瞬で失う。

すぐに修正した。だがその後も——「キーホルダーが商品ラインナップから消えている」「目標販売数が180点になっているが正しくは190点では」——という指摘が続き、プレゼン前に計5バージョンのPDFが生まれることになった。

バタバタしていた。でも振り返ると、これも大事な学びだった。

本番前に計画書を見直す習慣、数字の矛盾を必ず誰かがチェックする文化。今回はたくさんが拾ってくれたが、次は3人自身が気づけるようになってほしい。

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夜7時半、クロスロードの一室で

夜の7時半。プレゼン会場となったクロスロードの一室に、全員が集まった。

たくさんとみゆさんが、テーブルの向こう側に座っている。PCの画面を開いて、送付済みの事業計画書を映し出している。本物の出資者が、本物の目線でこちらを見ている。

3人は、その正面に立った。

I.くんの表情が、いつもと違った。普段はどこか余裕がある。俯瞳で物事を見る、あの落ち着いた㔜だ。でもこのとき、かすかに緊張が滲んでいた。唇をいち度結んで、小さく息を吐いた。

M.くんは逆に、前のめりだった。「やってやろう」という気配が体全体から出ていた。朝のLINEの「お金借りれるように頑張ろう!」、そのままの熱量がそこにあった。

Y.くんは、静かだった。口数が少ないのはいつも通りだが、このときの静けさは少し種類が違った。覚惟を決めたような、あの㔜。クロスロードに最も長くいて、一番この場所を知っている彼が、一番重く受け止めていたのかもしれない。

Y.くんが口を開いた。
「私たちは、LAKANG(ラカン)という事業を立ち上げました——」

声が、少し上ずっていた。

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計画書を「読んでいる感」との魂い

発表は事業計画書に沿って進んだ。事業概要・商品ラインナップ・ターゲット顧客・収支計画・資金計画・スケジュール・リスク対策。それぞれの担当が自分のパートに来るたびに、バトンを渡すように話す。

途中、担当の切り替わりタイミングでわずかに間が空いた。誰が話すのか、一瞬だけ3人がお互いの㔜を見た。その数秒が、ものすごく長く感じた。

I.くんが引き取った。資金計画のパートだ。事前に一番丁寧に準備していた箇所でもある。「借入希望額は₱37,510です。年兵2%を提案します。返済総額は₱37,885となります」——数字を読み上げる声は、しっかりしていた。だがやはり、どこかに「読んでいる感」があった。

それは仕方ない。初めてのプレゼンで、暗記で話せる人間はほとんどいない。大事なのはそこじゃなかった。

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沈黙が落ちた瞬間

プレゼンが終わった。

たくさんが、一拍置いてから口を開いた。

「まず——よくここまでまとめてきたと思います。」

3人の肩から、少しだけ力が抜けた。

「ただ、一つ聴かせてください。」

たくさんの目が、静かに3人を見た。
「私たちクロスロードが得られる利益は、何でしょう?」

沈黙が落ちた。

I.くんが、手元の計画書に目を落とした。M.くんが、口を開きかけて、止まった。Y.くんは、まっすぐ前を向いたまま、何も言えなかった。

3秒。5秒。10秒。

場所を貸す。ブランドを使わせる。顧客基盤を提供する。これだけのものをクロスロードが差し出しているのに——その対価が、計画書のどこにも書かれていなかった。

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「完璧だと思ってたんですけど」

フィードバックが続いた。

価格設定への指摘(エコバッグは高すぎ、手ぬぐいは安すぎる可能性)、借入額が過大すぎるという指摘(₱37,510を一括で借りる必要はない)、PDCAサイクルを9月から始める計画では遅すぎるという指摘——次々と出てくる穴に、3人はずっとメモを取り続けた。

最後にたくさんが言った。

「初回としては、すごくよくまとまってる。大人でもこれだけ作れたら1100点満点で60点。手加減なしでそういう評価だから、むしろ高い。」

プレゼン後に少し経ってから、M.くんが言った。

「完璧だと思ってたんですけど、ロイヤリティの部分とか、抜けてる部分がありました。」

悟しそうだったかと言うと、そうでもなかった。どちらかというと、素直に駆いていた。「こんなに抜けてたのか」という㔜だった。

I.くんは静かだった。メモを見ながら、一つひとつ頷いていた。

そして打ち合わせが終わった後、I.くんが言った。

「…想定外の質問が来たとき、正直すごく焦りました。でも、その場で考えて答えられた部分もあって。」

少し間を置いてから、続けた。

「計画を立てることと、実際にやることって、全然違うんですね。」

高校1年生が、この一言を言えることが、すごいと思った。

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借り方が変わった。むしろ、良くなった

フィードバックの中で、一つ大きな方針転換があった。

当初の計画では、仕入れ原価の総額₱37,510を一括で借りる予定だった。たくさんはそこに首を振った。

「一括でそんなに借りる必要はない。何が売れるかも、まだわからないのに。」

代わりに提案されたのは、初回は₱1万ペソだけ借りて、少ない量から始めるという方針だ。売れ筋が見えてきたら追加発注する。在庫リスクを最小限に抑えながら、PDCAを回しながら育てていく。

「売れてから追加を借りることも許可します。売上が好調であれば、こちらも貸す理由がない。」

この一言で、3人の表情がまた変わった。最初から全額背負わなくていい。試しながら進んでいい。借り方が変わったことで、スタートラインが怖くなくなった、そんな㔜だった。

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「成功する秘訣は、成功するまでやめないこと」

その日のフィードバックの最後に、たくさんが言った言葉だ。

プレゼンは60点だった。計画書にはまだ穴がある。ロイヤリティを盛り込んで、借入計画を見直して、業者への実地調査もしなければならない。やることはまだ山積みだ。

でも今日、この3人は初めて「本物のお金を持っている大人に、貸してくださいと言う」体験をした。

声が上ずって、沈黙に㔊えて、想定外の質問に詰まって、終わった後に「抜けてた」と気づいた。

これが、全部本物の経験だ。

教室で習う経営学では、この感触は手に入らない。

Y.くんはこう言っていた。「身内相手なのに、すごく緊張した。思ってたのと全然違った。」

そうだ。計画を「作る」ことと、「人前で話す」ことは、全く別の技術だ。そしてどちらも、やってみないと分からない。やってみて初めて、次に何が必要かが見えてくる。

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まだ終わっていない

プレゼンが終わっても、LAKANGはまだ始まったばかりだ。

事業計画書を修正して、業者を調べて、デザインを決めて、発注して、7月の販売開始に向けて、動き続けなければならない。

でも3人の目には、第1回の打ち合わせのときとは違う光がある。

「完璧だと思っていた計画に穴があった」という経験が、次の計画をもっと強くする。そういうふうに、人は育っていく。

LAKANG(ラカン)——大きな一歩は、まだ続いている。

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次回:業者調査へ。本物の原価が、初めて明らかになる日のこと。

📍 クロスロード語学学校(フィリピン・セブ島)にて
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