離島医療会議 in JPCA京都 ― よく晴れた京都で、3日間、島の医療を語り合った
5月の終わり、京都はよく晴れていました。
国立京都国際会館で開かれていた日本プライマリ・ケア連合学会の学術大会。その会場のブースで、「離島医療会議」のトークセッションを行いました。ブースの出展は会期の3日間、セッションは土曜日朝11時から夕方17時半まで、5本を通して行いました。
プライマリ・ケアの学会は、企業だけでなく、病院も自治体もブースを出す、にぎやかな場所です。そのなかで私たちが届けたかったのは、全国の島々で医療に関わる人たちの、現場の声でした。実際、島で診療する先生や、自治体の方、看護師さん、医学生まで、いろんな方が足を止めて、登壇者の話に耳を傾けていってくれました。気づけば一日が終わっていました。
この記事では、その5本のセッションでどんな話が出たのかを、まとめて振り返ります。
「離島医療会議」とは
離島医療会議は、離島の医療の「いま」と「これから」を、立場をこえて話し合う場です。
医療者だけでなく、自治体や国の行政に携わる人も、企業も、島で暮らす住民の方も、同じ場で話します。2022年にスタートして、3回目までは隠岐諸島で、4回目の今年1月は三重県の鳥羽市で開催しました。
学会の中にブースとして出ていくのは、今回が初めてでした。全国から集まる医療者に、島の現場のことを少しでも持ち帰ってもらえたら。そんな気持ちで臨みました。
セッション1|離島医療のリアル ~隠岐島前地域の現場より~
1本目は、隠岐島前(どうぜん)とZoomでつなぎ、氏原英敏先生と木田川幸紀先生に話してもらいました。3つの小さな島が集まった島前地域の現場と、京都の会場を、生中継でつなぎます。
ここで何度も出てきたのが、「覚悟をもって、長くその島にいてくれる医師を、どうやって見つけるか」という問いでした。この問いには、このあとのセッションでも先生方が何度も立ち戻ることになります。

セッション2|離島の暮らし
2本目は、NPの本田和也さんと、唐橋真理子さん(小豆島山上整形外科医院看護師)、熊谷ほのかさん(海士診療所看護師)、石川さやか(海士町住民)が、島で「暮らすこと」と「医療」のつながりを、それぞれの目線から話してくれました。
なるほどと思ったのは、島では医療者が「どこにいても医療従事者として見られる」という話です。買い物の途中でも顔を覚えられている。その代わり、退院したあとの患者さんが、暮らしのなかで少しずつ元気になっていく様子まで見える。それは島ならではだなと感じました。一方で、救急が島の中で完結しない不安や、移住してきた人と地元の人のあいだの距離をどう縮めるか、といった生活に近い話も出ました。

セッション3|離島医療会議 in 鳥羽を振り返る
3本目は、今年1月の鳥羽でのセッションを、登壇した先生方と振り返りました。進行役はアンターの中山さん。鳥羽の神島(かみしま)へ定期船で通い、離島でのオンライン診療などに取り組む小泉圭吾先生、そして原田昌範先生に話を聞き、この回は礼文島の升田晃生先生も飛び入りで加わってくれました。
小泉先生が「スーパースターを見つけてしまった」と盛り上がったのが升田先生です。日本でいちばん北にある離島・礼文島で、いざ緊急というときには外科の手術まで自分で手がけ、抗がん剤治療も看取りも島の中でやりきっている。原田先生がスライドを使いながら話されたオンライン診療は「引き算」じゃなくて「足し算」で使う——対面を減らす代わりではなく、手が届かないところを補うために足していく——という話とあわせて、会場が引き込まれていきました。

セッション4|離島医療の魅力
4本目は、升田晃生先生、川浪淳一先生、宮地紘樹先生が登壇しました。礼文島や海士町など、実際に島で診療している先生方が、離島医療の魅力を話してくれました。
限られた人と物のなかで、どう判断して、どう工夫するか。地域との近い距離が、診療にどう効いてくるか。きついイメージで語られがちな離島の医療だけれど、その奥にある面白さや豊かさのほうに、話は向かっていきました。

セッション5|仕組みで支える離島医療
最後の5本目は、離島の医療を「ひとりの頑張り」ではなく「仕組み」で支えようとしている先生方の回でした。岩野歩先生、塚本織恵先生、小森將史先生、金子惇先生がお話されました。
ひとりの医師に頼りきらない体制をどうつくるか。県をまたいで医師を送り出すことの難しさ。それから「僻地度指標」という、僻地の度合いを0から100の段階で測って政策に反映させようという試み。続けていくための具体的な話が、いくつも出ました。行政の立場で入ってくれた塚本先生の、「離島が"怖くない"、ちゃんと続けられる、と見えてくれば、希望のある会議になる」という言葉が、この日の最後にすっと残りました。

おわりに
5本のセッションを通して、立場も、住んでいる島も、抱えている事情もまるで違う人たちが、同じ場で本音と思いを出し合っていました。
離島も、離島の医療も、この離島医療会議も、関わる人が増えるほど、少しずつ仕組みになっていくんだと思います。だから支えられるものがあるし、続いていくものがある。今年もまた開催する予定です。この記事で島の医療を少しでも気にかけてくれた方と、どこかでまた会えたらうれしいです。

登壇者(敬称略)
※所属・肩書きは登壇時点(2026年5月)のものです。
セッション1|離島医療のリアル ~隠岐島前地域の現場より~ 氏原英敏(島根県立中央病院)/木田川幸紀(隠岐島前病院/海士診療所・Zoom登壇)
セッション2|離島の暮らし 本田和也(純真学園大学/日本NP学会 副理事長)/唐橋真理子(小豆島山上整形外科医院看護師)/熊谷ほのか(海士診療所看護師)/石川さやか(海士町住民)
セッション3|離島医療会議 in 鳥羽を振り返る 原田昌範(山口県立総合医療センター へき地医療支援センター長)/小泉圭吾(鳥羽市立神島診療所)/升田晃生(礼文町国民健康保険船泊診療所 所長・消化器外科専門医)/中山俊(アンター株式会社 代表取締役・医師)
セッション4|離島医療の魅力 升田晃生(礼文町国民健康保険船泊診療所 所長・消化器外科専門医)/川浪淳一(海士診療所)/宮地紘樹(掛川東病院 院長)
セッション5|仕組みで支える離島医療 岩野歩(コールメディカルクリニック福岡 院長)/塚本織恵(島根県 健康福祉部医療政策課・医療調整監)/小森將史(医師)/金子惇(横浜市立大学大学院 データサイエンス研究科 准教授)/中山俊(アンター株式会社 代表取締役)

