不思議な話 その2
母の友達には霊感のある人たちがいて、母はその人たちから霊感があると言われていた。
その中の一人で、小澤さんという小田原に住んでいる人の家を母と一緒に訪ねたことがある。
小澤さんを頼って大勢人が助けてもらいに来るという話だった。
お金をもらうと霊感がなくなってしまうので、無料で見てあげているということだった。
母と訪ねたときに聞いた話だが、小澤さんの家に肺の病気で苦しんでいる人がやってきたので、その人の背中をさすりながら祓詞を唱えていたら、ゴンゴンと激しい咳が出て、1時間ほど咳をし続けてしまった。
その人の代わりに小澤さんが咳と一緒に悪い物を全部吐き出してしまったので、その人はすっかり楽になって病気が治ったそうだ。
小澤さんの仲間で、私が生まれた品川の家の近くに住んでいる宮田さんという人がいた。
母によれば、宮田さんが一番霊感が強いということだった。
母が病気になってから、母に頼まれて私が代わりに宮田さんの家に挨拶に行った。
そのとき宮田さんに、「お母さんに霊感があるんだから、あなたにもあるわよ」と言われたが、私は今まで何か見えたり、感じたりしたことはない。
見えるようになりたいとも思わない。
それより、変なことが起きないで欲しいと思う。
ときどき変なことが起きるので困っている。
今まで使っていて、目の前に置いたものが消えてなくなってしまったときは、あちこち探しまくって気が変になりそうだった。
美容室に行ったら、いつもの美容師さんに、頭の後ろにハゲができていると言われた。多分ストレスだったのだろう。
なくなったものはペーパーナイフで、50年ほど前に渋谷の東急プラザにあった東南アジアの民芸品の店で買ったものだ。
安物だが使い勝手が良く、ないと不便なのでコクヨのペーパーナイフを買ったが、なくなったペーパーナイフより使いにくかった。
なくなったペーパーナイフは刃の薄さといい、微妙なカーブといい、とても使い易かった。
そのペーパーナイフは、椅子に座って要らない書類を切った後、ちょっと席を立って戻って来たらなくなっていた。
使っている最中なのだからしまうはずはないのだが、無意識に引き出しにしまったのかと思って、デスクの引き出しや脇机の引き出しを調べてみたが、どこにもなかった。
消えてから半年近く経ったある日、掃除機を掛けていたら、デスクの左側にある窓の下に落ちているのを見つけた。
そこは毎週掃除機を掛けているし、毎朝椅子に座るとき目に入る場所で、ペーパーナイフなんか落ちていなかったのに。
変ではあったが、ペーパーナイフが見つかったのは嬉しかった。
不要になったコクヨのペーパーナイフはメルカリで売ってしまった。
もうひとつ。
去年、「自由が丘散歩(アンヌの気まま通信より)」で紹介した猫耳と、この間「ジムとランチ」で書いたバードコールと、下の弟がくれた猫のおもちゃが、箱ごとなくなっていた。
バードコールのことを書くので写真を撮ろうと、しまっておいたいつも座る椅子の背後のキャビネットを開けてみたが、入れておいた箱が見当たらなかった。
キャビネットの中には本や資料やスケッチブックなどを入れてあるが、右端に置いておいた黒い小さな箱がどこにもない。
去年、猫耳の写真を撮ってから、どこか別の場所にしまったのかと思って、自分がしまいそうな所をあちこち探してみたが、どこにもなかった。
物がなくなるのはこれで5回目だ。
過去4回のうち3回はなくなったものが出てきたが、1回は出てこなかった。
出てきたものは、そんなところにあるのは絶対におかしいと思える場所で見つかった。
出てこなかったものは契約をするのに必要な書類で、それがないために契約できなかった。
ただ、今思うと契約できなくて幸いだった。
あれがなくなったお陰で契約できなかったのだから、なくなって良かった。
今回なくなった猫のおもちゃは、バードコールよりひと回りほど大きい、濃いピンクのケースの中に小さな猫が入っていて、ケースに付いた把手を引っ張ると猫が動き、把手が元の位置に戻るまで猫が動き続けるというものだった。
弟がどこか旅行に行ったときにこれを見つけて、猫好きの私に買って来てくれたのだった。
猫耳もバードコールも猫のおもちゃも捨てるはずはないので、家の中のどこかにあるはずだと思い、押し入れの中や、アクセサリーが入れてある衣装ケースの中まで調べたが、どこにもなかった。
そのうち、ペーパーナイフのように思いがけないところから出てくるのを期待している。
とにかく、世の中には不思議なことがあるものだ。
