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キャロリンとケイコさんと井の頭公園に行った

 1998年は水曜担当のポールが辞めたのと、春以降月曜のクラスの顔ぶれが変わり、生徒たちの都合で水曜日に変更になったので、キャロリンにも月曜から水曜に変更して教えてもらった。
 この年は夏にスコットランドに帰るので休んでいたが、翌年も同様に夏は休んだので、代わりに日本に来ていたブレントに教えてもらった。

 キャロリンはずっと付き合っていた日本人男性がいて、2001年に結婚した。
 5月に彼女の生徒だったケイコさんと3人で井の頭公園に行った折、結婚式でのエピソードを話してくれた。

 井の頭公園には何度も行ったことがある。
 会社勤務の頃、ビジネススクールのパソコン部門が吉祥寺営業所に移転したので、1年間そこに通っていた。
 営業所長のKさんはアメリカ人の夫と二人暮らしだったが、猫が好きで何匹も飼っていた。
 ここで働いていたとき、春のお花見は井の頭公園に行った。
 近くの会社の人たちが早々とブルーシートで場所取りをしていたので、お昼にのこのこ出掛けて行った私たちは、そんな宴会の間を歩いて桜を見て回った。

 キャロリンとケイコさんと行ったときは、池のほとりだけでなく上の林の方にも行った。
 林の方へ行くのは初めてだったが、大きなけやきが何十本、何百本とあって、心地よい木陰を作っていた。
 ここは大島弓子の「綿の国星」にたびたび登場する公園の木立で、大島弓子はこの公園を見下ろすマンションに住んでいた。

 余談だが、「綿の国星」は20代の頃から大好きで、花とゆめコミックスで全巻揃えた。
 母に読ませたら、母もチビ猫のファンになったので、単行本を買ってプレゼントした。
 私はこの作品で大島弓子のファンになり、花とゆめコミックスの全作品を揃え、他にも初期の作品が文庫本で出ていたのを買ったり、朝日ソノラマの「大島弓子選集」が出るとすぐに買った。
 バターカップスの会報に私が大島弓子を好きだと書いたら、会員の恵美子さんが大島弓子のマンションの場所を書いた手書きの地図を送ってくれた。
 まだどこかにしまってあると思うが、大島弓子はその後このマンションから一軒家に引っ越した。

 さて、話の続きをすると、3人でけやきの木陰のベンチに腰をおろし、ランチを食べながらお喋りした。
 5月半ばの日差しは強かったが、高いところで枝を広げた木の葉がちょうど良い茂り具合で、ちらちらと木漏れ日が涼しく、だいぶ長いこと座って木々の香りを楽しんだ。

 キャロリンは結婚式をスコットランドと日本の両方で挙げたそうで、日本では打ち掛け姿での神前結婚だった。
 式の前に時間がなくて何の説明も受けられなかったため、彼の真似をすることにしたのだが、彼が緊張して三三九度の盃をぐいっと一息に飲んだので、キャロリンも真似してぐいっと飲み干し、2度目も二人でぐいっと飲んで、3度日にようやく気が付いたのだとか。
 後でビデオを見たら、彼のおじさんが後ろの方から、必死に「三回、三回」と声を掛けていたそうだ。
 キャロリンのジェスチャ一入りの説明があまりにもおかしいので、ケイコさんと二人でお腹をかかえて笑いこけた。
 この話を去年ケイコさんに会ったときにしたら、全然覚えていなかった。

 さんざんお喋りしたりした後は、林の中を歩いて疏水に出た。
 自然の流れをそのままに、周囲の雑木にもあまり手を加えず、下草を刈って歩きやすく整備してあった。
 水の上に枝をかざした木に、白い花がたくさん咲いていた。

 しばらく流れに沿って歩いてから、道を下って池のほとりへ。
 日曜日なので人出も多く、手製の絵はがきを並べて売っている人や、楽器を演奏している人たちもいた。
 よくしなる長いノコギリをバイオリンの弓で弾いている人がいたので、足を止めて耳を傾けた。
 ノコギリの音とは思えない、うっとりするような調べで、あの音色は今でも鮮明に覚えている。

 その後キャロリンは女の子を産んで、「ミア」という名前を付けた。
 日本語の「ラリルレロ」は英語のRかLかどちらかわからないので、「ラリルレロ」の入らない名前にしたいと言っていた。
 20代の頃に英会話を習ったリンダさんは、娘に「エレナ」という名前を付けたが、英語にすると Elena でLの発音なのに、日本語ではRに近い音になる。
 キャロリンが「ラリルレロ」を使いたがらないのはもっともだと思った。

 2003年のお正月に、キャロリンはご主人とミアちゃんを連れて玉川大師に初詣に来た。
 この時期お寺は大忙しで、私は毎年大晦日と三が日はお札運びなどの手伝いに行っていたが、ちょうど私がお札の受け付けをしているときだった。
 ミアちゃんはとても可愛い子だった。
 キャロリンと会ったのはこれが最後で、しばらく年賀状のやり取りをしていたが、いつの間にか途絶えてしまった。



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