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絵と物語|百人一首28番|百人一首で百人百色

小倉百人一首の句をモチーフに
物語と絵をつくる『百人一首で百人百色』

絵 :カンナ|をかし探究隊隊長 さま
物語:アンカシモリ

コラボレーション、ぜひお楽しみください


小倉百人一首 二十八番 

山里(やまざと)は 冬ぞ寂しさ まさりける
人目も草も かれぬと思へば

山里は
冬にとりわけ
寂しさがつのる
人も尋ねて来ないし
草も枯れてしまうから


源宗于朝臣

『記録的な大雪、二十三年ぶりに観測史上最大を更新
S島◯市では、◯日、午前一時までの十二時間降雪量が三十八センチを記録。二十三年ぶりに観測史上最大を更新しました』

 朝、目を覚まして加納あきが最初に感じたことは『外が明るい』ということだった。状況を察し、ベッドから起きカーテンを開けると真っ白である。外がやけに明るかったのは雪で覆われていたせいだった。小さな庭は完全に雪に埋もれ、木のある箇所はこんもりと山になっている。もともと冬になればこのS島にも雪は降るのだが、この積雪量は異常だった。さぶ、と言いながらあきはヒーターの電源を入れる。勤務先のS島支社のみんなは大丈夫だろうか。特に本社から来た二人は、と思いながら。

 朝、社宅のドアを開けて鳥羽隆也たかなりは絶句した。本社からの転勤前、S島は雪は降るが積もらないと聞いていたのに。車のタイヤは雪に埋もれ、車体には三十センチほど雪が積もっている。車道は除雪されているが寄せられた雪が駐車場を塞ぎ車道に出ることができない。「すごいな、ははは」。人間、想定外を上回ると思考は麻痺してしまうらしい。なぜかへらへらしてしまう。こんな大雪で仕事になるとも思えないが、一応支社長として早く出勤しなくては。鳥羽は自分に喝を入れた。

 朝、ニュースを見た辰巳輝千きせんは「なんだそれ」とつぶやいた。二十三年ぶりの大雪? 窓の外を見ると、一晩ですっかり雪に覆い尽くされている。会社は休みかと思っていたのに『出勤は各自無理のないように』としつつ、支社長は歩いて出勤するとのメッセージがあった。「鳥羽さんが出るなら休めないじゃん」。社内で一番会社に近い辰巳は不満そうにぼやいたものの、なぜか浮き立った気持ちにもなっていた。何着て行けばいいんだ、とクローゼットを開けとりあえず一番暖かそうな服を探した。

 昼、十二時を大分過ぎている時計を眺めながら、こじかカフェのオーナー金子が言った。「さすがにこの雪じゃ人来ないな」
 つられて時計を見たアルバイトの本間美波が、わ、けっこういい時間、と驚く。冬場で客の少ない時期とはいえ、通常なら二〜三組はランチ客がいてもおかしくない時間だった。
「私、こんな大雪、S島で見たことないですよ」美波が曇った窓から雪のちらつく外を眺めていると、一台の車が駐車場に入って来るのが見えた。
「金子さん、車一台入りました!」
「おお! お客様か」
 カラン、とドアが開き、寒い寒いと言いながら客が店に入ってくる。
「いらっしゃいませ……あれ? あき?」
「みっち! 来たよ〜。あ、三人なんですけど」
「大雪の中ありがとう。お好きなお席へどうぞ」
 美波はカウンターに戻り、友達がランチに来てくれました、と金子に声をかけてからメニューと水を用意して客席に向かう。友人の加納あきと、それぞれ二十代と三十代くらいの男性。同じ会社の人だな、と美波は当たりをつけた。

「結局、僕達以外、誰も出社して来ませんでしたね」
 お店もガラガラだし、と小声で付け加えて辰巳が言った。
「会社に向かっても何時に着くか分からないって言われちゃなぁ」と鳥羽が笑う。
「会社から徒歩圏内なのって支社長と辰巳さんだけだし、うちは大通り一本で会社まで来れちゃいますからね。でもほんと、こんな大雪はイレギュラーですから。物心ついてから初めてですよ、ここまで降るのは」あきは窓の方を眺めて言う。
「こっち来る前S島は雪積もらないって聞いてたのに、騙された、って思いましたよ、ねぇ鳥羽さん」辰巳が鳥羽に同意を求めると、そうだな、と鳥羽も頷きながら言った。
「でも、ここまで来ると圧巻というか、逆に笑えるよな」
 確かにネタにはなりますね、と辰巳も大きく頷いた。

 ランチを終え食後の飲み物が運ばれると、甘いもの苦手じゃなかったらどうぞ、と、美波がデザートを配りはじめた。
「えっ、頼んでないけど」驚いたようにあきが言うと、お店からのサービス、と美波がにっこりする。ありがとうございます、いただきます、と奥にいるオーナーに向かって三人は口々にお礼を言った。
「うわこれ美味い、雪大変だけどいいこともありますね」早速ケーキを頬張った辰巳が言う。そうだな、と鳥羽は苦笑し、あきも笑う。こんな風に三人でランチに出るのも珍しいことだった。

 暖かい店内はエアコンの他に石油ストーブが置かれ、ストーブの上のやかんからしゅんしゅんと湯気が上る。曇った窓のガラス越しの外は、気持ち空が明るくなったように見えた。
「雪、止みましたね」
 あきの声に、皆一斉に窓の外を見た。



(あとがき)

百人一首をモチーフに、物語と絵を募集する企画『百人一首で百人百色』

物語だけで参加をしてもいいのかな、と、思い切って手を挙げて連作という形で発表させていただきました
また、挿絵という形で絵を制作いただけるという幸運にも恵まれました

イラストにアルファベットを組み合わせたデザインが特徴的な カンナ|をかし探究隊隊長 さまの作品は、文章というモノクロの世界に、カラフルな色彩という彩りと、軽やかさや楽しさを加えてくれました

自分だったら考えつかないような場面の切り取り、キャラクターのかわいさ、想像の世界が広がります
本当にありがとうございました

カンナさんのカラフルでポップな世界はギャラリーにまとめられていますので、他の作品たちもぜひ鑑賞してみてください


そもそも、企画との出会いがなければ、こんな体験もありませんでした
企画を管理し、まとめ上げることは本当に大変だったと思います
お疲れ様でした、そしてありがとうございました

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