番外編|光の玉、使用目的:撮影(のはず)
撮影用に用意された、光の玉。
本来は、ケースの雰囲気を整えるための小道具だった。
……はずだった。
「これ、触っていいの?」
最初に手を伸ばしたのはサンディアだった。
指先でつついた瞬間、光の玉はぴょんと跳ねる。
「え、動いた!?」
「待って、それ撮影用だよね?」
次の瞬間、ガナンが無言でキャッチ。
しかし、玉はすり抜ける。
「……軽いな」
「いや、そういう問題じゃなくない?」
その横で、ミナンはじっと観察していた。
「これ、感情に反応してる気がする」
――その一言で、場の空気が変わる。
「じゃあ笑ったらどうなるの?」
とベディアが言った瞬間、
光の玉はふわっと二つに分かれた。
「増えた!?」
「ちょ、待って、これ完全に遊び道具になってない?」
ランディアが止めに入ろうとした、その時。
増えた光の玉のひとつが、
くるん、と弧を描いて宙を舞う。
次の瞬間――
ガンッ。
三脚に当たった。
「……あ」
全員の視線が、
スローモーションのようにカメラを追う。
ぐら……ぐら……
「待って待って待って待って!」
「それ撮影用カメラ!!」
ドサッ。
床に倒れたカメラと、
まだ元気にふわふわ飛び回る光の玉。
静寂。
奥から、低い声がした。
「……お前たち、何をしている」
トルヴァンだった。
腕を組み、倒れたカメラと光の玉を交互に見る。
光の玉は、空気を読まず、
トルヴァンの角の上にちょこんと着地した。
「……」
誰も、何も言わない。
トルヴァンは、深く息を吸ってから言った。
「……撮影は、中止だ」
その宣言と同時に、
光の玉は一斉に逃げるように宙へ散った。
オルナダは遠くからそれを見て、
「だから距離が大事なんだ」と一言。
フィナエルは口元を押さえて笑い、
マルヴォンは無言で、
そっとカメラを元の位置に戻した。
――結局、その日の撮影は一枚も撮れなかった。
けれど、
みんなの記憶には、
いちばん明るい光景が残った。
光の玉の本当の役目は、
たぶん最初から
笑わせることだったのかもしれない。
───
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