般若の鶏、病院に現る
般若の鶏が病院に現れた。
ーーーーーー私だ。

コンタクトを外しただけで、私は威嚇と首振りを同時に始める。
コンタクトをつけていないと、人が残像になる。
見えないわけじゃない。見えるけど、輪郭が曖昧で、世界が低画質になる。
声だけは鮮明なのに、顔がぼんやりしている。ホラーとしては満点だ。
問題はここからだ。
見えないから、見ようとする。
私は怒っていない。ピントを合わせたいだけだ。
なのに眉間にシワが寄る。外から見ると、どうやら般若らしい。
さらに私はストレートネックだ。

追い打ちで、老眼も入ってきた。
目で合わせられないから、身体で合わせにいく。
結果、私は鶏みたいにコケコケ前後に動く。
優雅さゼロ。生存に全振り。
人間の尊厳はピントと引き換えに消える。
旦那は優しい。
私が残像を追いかけて般若になった瞬間、スッとメガネを渡してくる。
ついでに般若の眉間をなでなでしてくれる。救護班が常駐している家、助かる。
子どもはずっとデフォだから気にしていない。

私が般若でも鶏でも、「ママ今日も通常運転」くらいの顔をしている。強い。
問題は鏡の中だ。
鏡の私は、橋本環奈
現実の私は般若の鶏なのに、
鏡だけが「大丈夫、アイドル、女優でいける」と。
多少鏡の汚れが目立つがこれは誤差の範囲。

要素はそろっている100パーセント一致だ。
そして今日、病院で風呂に入るとき「三十分でお願いしますね」と言われた。私はいつもの反射で「あん?」となり、時計を見た。
ただ時間を確認したかっただけだ。たぶん看護師さんは怖かったと思う。
「あー眼鏡ないもんね」というフォローが浴室内で切なく響く

最悪の取り立てである。
私はガンをつけてない。
世界にピントを合わせてるだけだ。
その間に、診察券を落とすだけだ

パパに眼鏡渡されても人間に戻れなかった錬金生成失敗画像。
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