海が見える家に住みたかっただけなのに出迎えてきたのがベルサイユだった。
そろそろ家を決めようとパパと話す。
私はその話が出るたびに、
キキの「海の見える街に住みたいな〜」発言を
脳内で常時再生していた。
そう。私はジブリが大好きだ。
久石譲の曲をメドレーで弾くらい好きだ。
海が見える家に住みたかった。
キキのような希望に夢膨らませる女の子
だから、
次に住むなら海沿い、と決めていた。(勝手に)
ただ、問題がある。
パパは利便性で選ぶタイプ。
私は世界観で選ぶタイプ。
曲げられない思いがある。
私はキキっぽく言う。
「海が見えるところに住みたいわ😘!」
……が、彼は知らない。
「知ってるよバルスでしょ」って..…
ねえ、YOUは日本人なのかい!?
こっちは黒いワンピースでふんわりと揺れる感じを必死に演出してんのにスルーだ。
く、くそ。
(こっちは今、ホウキ持ってキキしてるのに、
相手はSuicaのペンギンと定期料金を考えてるのか)
それでも何件か新築や中古を見回っているうちに――見つけた。
外観はどこにでもある家。
でも...…
海が見える!
「パパ、ここがいいわ♡」
としつこくキキ風を演じるがまだ伝わらない。
でも、パパも
「え、いいじゃん」みたいな顔。
よし勝った😏
――と思ったのは、トイレを開けるまでだった。
ドアを開けた瞬間、私は国境を渡っていた。

ここだけフランス。ここだけ王政。
ここだけベルサイユ宮殿。
いや、トイレよ?
用を足す場所よ?
なのに壁紙が「民衆よ…」って語りかけてくる。
用を足すたびにフランス革命がはじまるのか?
不動産の設備欄に書いとけ。
設備:ウォシュレット
備考:王政あり
「...…なるほど、(売れぬ理由)分かった」
でも、ここで引いたら私はただの内見客。
キキは知らない街に降りた。
なら私は――王政に降りるまで。
次はリビング

洋の生活圏に、突然の和。
同居じゃない。対立。
この家、情緒が関ヶ原。
ソファでダラけたい気持ちの横で、畳が「正座」って言ってくる。
くつろぎスペースのはずなのに、精神統一が始まりそうな段差。
小上がりっていうか、これはもう武士の軍議の間。
決めた…
「私、全部変えるから」
海が見える。駅へのアクセス良好。
Win-Win
私達夫婦はこの家を購入し、
ここから我が家の魔改造が始まった。


業者に頼めばいいけど、ここは格安大好き人間の私だ。
子どもたちとパパがどこかに行っているとき、一人黙々と毎日小工事した。
何よりこういう向き合う時はひとりが楽しい。
壁と交渉して、床と和解して、家の機嫌を取る生活。
リフォームじゃない日仏内装サミットだ。
そして――


和でも洋でもない。
私の脳内設計図の描いた海が見たくなる家。
窓を開ければ海が見える!
内装も「協定」に無事着地した。
私はただ、海が見える家に住みたかっただけなのに、
気づけば私は王政を終わらせ、内戦を止めていた。
家って、立地じゃない。戦場だ。
ここでやってみる✨
(もうひとり芝居はじめちゃうもんね!)
住まいを決めた理由?
まずは海。
それと。この家が私を試してきたから
なお魔改造は現在も継続中。
完成の概念は、この家にはまだ無い。
こっちは住んでるだけなのに、今日も家がアップデートを要求してくる。
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読んで下さりありがとうございます。応援費は私の音対策に必要なイヤーマフ購入費にあてさせてもらいます。無理のない範囲で応援して下されば幸いです。