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恥ずかしがり屋の十勝石



「北海道満喫した」

「もんきちさん、たくさん知ってた」

帰りの車で、子供達がそう言った。

その言葉を聞いて、私は少し驚いたのだ。

だって今日の一日、子供達は途中でバテていたからだ。

黒曜石探し。

川を歩いて、しゃがんで、探して、また歩く。

ゲームが大好きな子供達だ。

楽しめるだろうか。

少し心配していた。

でも、子供達は北海道を満喫したらしい。



そして、その理由は黒曜石ではなかった。
もんきちさんだった。

私たち家族は黒曜石を探すために北海道へ来た。

そして、憧れのもんきちさんに会いに来た。

川辺には無数の石が転がっていた。

正直に言うと、最初の私はどれが黒曜石なのか全く分からなかった。

星の数ほどある石。

ところが、もんきちさんは違う。

「あ、あったね」

そう言って、スッスッと当たり前のように黒曜石を見つけていく。

初対面で少し緊張していた私たち家族だったけれど、もんきちさんの声は不思議とやわらかかった。

羊の毛みたいにふんわりしていて、それでいて石を見つけるたびに少年みたいな声になる。

その声につられるように、私たちも夢中になって石を探し始めた。

子供達もそれぞれ気になる石を拾ってくる。

もちろん黒曜石じゃないこともある。

私はてっきり、

「それは違うね」

と言われるのだと思っていた。

でも違った。

「面白いのを見つけたね」

もんきちさんはそう言った。

そして、その石がどうやってできたのか、どんな特徴があるのかを丁寧に教えてくれた。

その時、私は少し恥ずかしくなった。

私は知っているつもりだった。

昔の私は宝石店のライトに照らされた石ばかり見ていたから。

でも、もんきちさんの話を聞いていると違うのだ。

石に履歴書がある。

火山の活動。

川に運ばれた時間。

北海道という土地そのものがそれを作り上げたという歴史があった。

私がひとくくりにしていた「石」たちには、それぞれの物語、分厚い履歴書があった。

しかも私なんかより、ずっと長い履歴書だ。

私なんてペラ紙一枚。

でも目の前の石たちは違う。

何万年もの履歴書を抱えて、ここにいるのだ。お久しぶりだね太陽!みたいな感じで。

私の世界は急に面白くなった。

まるで新しいレンズを手に入れた時みたいだ。

今まで見えていなかったものが見える。

世界の解像度が上がる。

そんな感覚だった。

黒曜石を探している途中、もんきちさんがふと言った。

「自然って面白いよね」

きっと、その言葉だけなら言う人はたくさんいる。

でも、もんきちさんが言うと違うのだ。

なぜなら、その場で一番自然を楽しんでいたのが、もんきちさん本人だったからだ。

石を見つけるたびに目を輝かせる。

子どもが持ってきた石にも本気で興味を持つ。

知らないことを教えるのではなく、一緒に面白がる。

私たち家族は、自然や石について勉強したわけじゃない、「自然の楽しみ方」を見せてもらったのだ。

だから子供達の言葉がうれしかった。

「北海道満喫した」

「もんきちさん、たくさん知ってた」

きっと履歴書の石の名前は忘れるだろうな。でも、それでいいのかもしれない。

あの日持ち帰ったのは知識じゃなくて、
好奇心の遊び方だから。


黒曜石を探している途中、土から少しだけ顔を出した石を見つけて、もんきちさんは言った。

「お、これは恥ずかしがり屋の十勝石だね」

私はその言葉が忘れられない。

石に性格を見つける人。

世界を面白がる人。


もんきちさんは会って早々、
私にもんきちさんが自分で磨いた黒曜石をプレゼントしてくれた。

光に当てると艶やかで、それだけでも十分美しかった。

なのにね、不思議。帰りに見た黒曜石はもっと美しく見えた。

うまく言葉にできない。

ただ「きれい」という感じじゃない。

少し妖艶で、少し神秘的で、何万年もの時間を閉じ込めた宝箱の美しさだった。

そして、あのゴツゴツした黒曜石を何十時間もかけて、まるく磨いて輝かせた、もんきちさんの手を思い浮かべた。

もんきちさんから貰った黒曜石は何も変わっていない。

変わったのは私の方。

今回の北海道で見つけた一番の宝物は、黒曜石ではなかったのかもしれない。


綺麗な言葉で伝えるのが難しい。
でも、これだけは伝えたいです。
ありがとうございました。


もんきちさんからの黒曜石



まだまだの黒曜石
これからも磨きます


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