孤独と焦燥、自暴と自棄/せりふ三題噺
クッソ……という声が漏れる。リュックに入れたノートパソコンがやけに重い。ウィン……と静かに自動ドアが開いて、俺は出版社を後にした。担当編集者に言われた言葉が頭を反芻する。
『世界観に統一感がほしいっすよね。』
それはつまり、こういうことだ。
宇宙を舞台にした世界観であるにも関わらず、そことなく現代を感じる描写、たとえば虫除けがスプレータイプだったり、あとはガソリン車が普通に道路を走っていたり、そういう部分に世界観の統一性がないと言われている。
実に的を射た指摘であると思った。特段なにも考えていなかったな、と己の検証不足を恥じ、同時に悔しくなった。自分よりいくらか若い青年にこんな当たり前のようなことを言わせてしまい申し訳ないという気持ちも湧いた。
情けなさと申し訳なさと恥ずかしさと色々な気持ちが混濁するなかで、帰宅しようと足を踏み出す。ここから自宅までは二駅ほど。時刻表を調べようと携帯を手に取って、やめた。歩いて帰ろう。なんせ売れない作家はお金がないのである。はぁ、と深いため息をついて俺は駅への道を引き返し、リュックの重みを感じながら歩き出すのであった。
自宅はワンルームのアパートである。手には近所のコンビニで買ったカップ麺と酒が2本。せっかく歩きで帰ったのにも関わらず、コンビニで酒を買ってしまった。だから金がないんだろうと言われればそれまでであるが、仕方がないだろう、と誰に言い訳するでもないがそんなことを思う。
プシュッ、と缶ビールを開ける。カップ麺にお湯を注いで待っている間にとりあえず一口目。美味いものは美味いがなんだかいつもより苦い気がした。
小説家を志したのは幾年も前。まだ学生だった。だが、あの頃は志しただけで小説家のなりかたも分からず適当に就職した。適当に決めた割には勤勉だったように思う。しっかりと10年は働いた。そしてその10年勤めた会社を昨年退職した。というのも、ネットに少しずつ上げていた小説が賞に引っかかったのだ。ネットの小さな賞であるが、それは俺を一念発起させるには充分な賞だった。そこからは特段語ることもない。ズズ……とカップ麺に残ったしょっぱいスープを飲み干そうとしてやめた。俺も健康にも気を使うような歳になったのだ。そのついでに買っていた缶を冷蔵庫にしまう。今日は一缶でいい。なんだか美味しく飲める気がしなかった。ごくごくと、焦るように残りのビールに喉を通過させ、天井を見た。
「あーーーーーーー………」
特段なんの意味もなさない音ばかりが口から溢れ出し、一人孤独なワンルームに響いていた。
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はらとけい様ありがとうございました🙇🙇
