見出し画像

母ちゃんいなくなっちゃったぜ・・・

「簿記の勉強しようかな・・・」
妻が年末に突然言い出した。

妻は商業高校に勤めていて1年生の担任だ。
妻は家庭科の教師なのだが、テスト前に勉強の苦手な生徒と放課後一緒に勉強したりしている。
1年生の勉強なら教科書見ればなんとか教えられるのだが、簿記とかの商業科目は全く分からない。
1年生と一緒に「簿記」を今から勉強すれば教えられるようになるかもと思ったらしい。

僕の妻は思い立ったらすぐ始める。
ダイニングテーブルの上に、いつの間にか簿記の教科書と問題集が置かれてる。
妻はやり始めるとそのことに没頭してしまう。

妻はギャンブルをしない。
「パチンコとか無理。生産性ないし時間使うし、どこが面白いんだろう」と言う。
実際そう思っているのだろうけれど、本当のところは違うと僕はにらんでいる。
妻はギャンブルに手を染めて、その面白さを知ってしまったらとことんまで突き詰めてしまい、真っ当な人生に戻ってこれない自分に無意識のうちに恐怖を感じているのだろう。
〚未知との遭遇〛のリチャード・ドレイファスみたいになる自分が怖いのだろう。

妻は自分のそんな性格を知っているから、これまでの人生、危険なことは理性でセーブして生きてきたという。

そして今、妻は「簿記」という健全なギャンブルに手を出してしまったのだ。
未知との遭遇をしてしまったのだ。

妻は年末から一日も休まず簿記の勉強をしている。
わが家のダイニングテーブルには簿記の教科書と参考書と鉛筆削りが常に置かれている。
鉛筆削りは簿記の勉強を始めてからAmazonで即購入。

年末、実家に帰っても簿記の勉強。
大晦日も紅白が終わってから簿記の勉強。
お正月もお餅を食べながら簿記の勉強。
夕食を作る前も簿記の勉強。
食後もデザートの代わりに簿記の勉強。

「あー、分かるけど言葉が覚えられない!」と妻が叫ぶ。
年とると記憶力が低下して、似たような専門用語は覚えにくいらしい。
ダイニングテーブルの上は常に消しカスだらけだ。「あー、簿記楽しいかも!パズルだ、パズル!時間割の作成と同じだ!」と嬉々として勉強している。

怖い。 
妻は簿記の世界に行ってしまった・・・。

今年、妻は生徒と一緒に簿記の検定を受けようかと本気で思っているらしい。
「でも、授業が始まったら勉強する時間ないしなぁ・・・」と妻は言っていたが、新学期が始まっても妻の簿記熱は冷めない。
いやさらに拍車がかかっている気がする。
妻は簿記の世界から帰ってこられるのだろうか・・・。不安だ。

息子よ、かあちゃんいなくなっちゃたぜ・・・


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集