直木賞受賞作なのに★★☆☆☆だった話【鍵のない夢を見る/辻村深月】
はじめに
正直に書く。
辻村深月さんの「鍵のない夢を見る」を読み終えて、率直な感想は期待外れだった。
直木賞受賞作だ。辻村深月さんの作品だ。かがみの孤城にハマって以来、次々と読んできた。期待しないわけがない。
でも読み終えた後に残ったのは、なんとも言えない重苦しさと、少しの後悔だった。
これはそんな正直な読書記録だ。
どんな本か
5つの短編からなる短編集。
①仁志野町の泥棒
②石蕗南地区の放火
③美弥谷団地の逃亡者
④芹葉大学の夢と殺人
⑤君本家の誘拐
どの話も主人公は女性。そしてどの話にも、窃盗・放火・逃亡・殺人・誘拐といった犯罪が絡んでくる。
普通の町に生きる、普通の女性たちが、ふとした瞬間に転落していく物語だ。
読んでいる間、気分が重かった
どの章も、弱い立場に置かれた女性が描かれている。
追い詰められた女性。逃げ場のない女性。誰にも助けてもらえない女性。
読んでいる間、ずっと気分が暗かった。
「次の章は少し明るくなるかな」と期待しながらページをめくる。でも毎回、重い現実が待っている。
辻村深月さんの筆力は相変わらず高い。引き込まれる。でも読み終えた後に「良かった」とはなかなか言えない内容だった。
特に印象に残った2つの章
3章「美弥谷団地の逃亡者」
団地に住む女性の話だ。
読み進めながら「この女性はなぜ逃げているのか」と思っていた。途中まで、ただ不倫相手と逃げているだけの話だと思っていた。
まさか、自分の母親が殺されていたとは。
その事実が明かされた瞬間、背筋が寒くなった。
「気づかなかった」というより「気づかせてもらえなかった」という感覚。辻村さんの書き方がうまいからこそ、最後まで騙され続けた。
4章「芹葉大学の夢と殺人」
大学を舞台にした話だ。
読み終える前から、なんとなく結末が見えてきた。
「この女性、自分で飛び降りるんじゃないか」
その予感は当たった。
予想できてしまったことで、逆に読んでいる間ずっと胸が苦しかった。止めてあげられない。ただ見ているだけ。そんな気持ちで最後まで読んだ。
かがみの孤城と比べると
かがみの孤城から辻村深月さんを読み始めた私には、正直かなりのギャップだった。
かがみの孤城は、読み終えた後に「読んで良かった」と心から思えた。登場人物を応援したくなった。あのラストの感動は今でも忘れられない。
でも「鍵のない夢を見る」は違う。
登場人物を応援するというより、ただ見守るしかない。そして多くの場合、救われない。
どちらが良い悪いではない。でも個人的には、かがみの孤城の方が圧倒的に好きだ。
直木賞受賞作でも★★☆☆☆
直木賞を受賞している事実は揺るがない。
文学的な完成度は高いと思う。辻村深月さんの筆力は本物だ。どの章も、ぐいぐい引き込まれる力がある。
でも「面白かったか」「また読みたいか」と聞かれたら、正直そうは言えない。
読書の感想に正解はない。直木賞受賞作でも、自分に合わなければそれでいい。
私の評価は★★☆☆☆だ。
こんな人におすすめ
✅ ダークな話・重い話が好きな人
✅ 女性心理の深いところを読みたい人
✅ 社会の闇や閉塞感をリアルに感じたい人
✅ 辻村深月さんのダークサイドを読みたい人
❌ 読後感の良い本を求めている人
❌ 明るい気持ちになりたい人
❌ かがみの孤城の雰囲気を期待している人
おわりに
読んで後悔したか、と言われると、そうでもない。
「こういう世界もある」と知ることができた。辻村深月さんの別の顔を知ることができた。
ただ次に読む本は、もう少し明るい話にしようと思っている。
直木賞受賞作でも★★☆☆☆と言える正直さ。それが私の読書記録のスタンスだ。
営業職・40代
評価:★★☆☆☆ こんな人に:ダークな話が好きな人向け こんな人には向かない:読後感の良い本を求めている人
